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第1章

第二十三話 「ナポリタンを食べたのは誰だ!」

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私達は、食卓のいすにすわった。
いやぁ、これはかなり、ヤバイ雰囲気だよぉ。
まるで、殺人事件が起こったみたいな雰囲気です。

「まず、この事件の経緯を話すわ。真莉亜が作ったナポリタンを、真莉亜がトイレに行っている間、誰かが食べた。真莉亜、これでまちがいないわね?」  

はい。まちがいないです。

「それでは、事情聴取を始めるわ。まず、ジュンブライト、あなたはあの時、なにしてたの?」

「俺?俺はぁ、筋トレをしていたぜ。筋トレをしている途中、真莉亜の声が聞こえたから、すぐやめて、駆けつけたぜ。」

「じー。」

「な、なんだよ、ギロ。」

「先輩が一番あやしい。」

「はぁ!?なんでだよ!」

すると、ギロさんがジュンブライトを指さした。

「だって、先輩の好物はナポリタンだし、絶っっっっ対、食べてるって!」

「じゃあ、お前が俺が食べた理由を教えろよ!」

「あぁ!話すさ!」

ギロさんの推理によると……。
筋トレにあきたジュンブライトは、お腹が空いていた。
グ~。

「あー、腹減ったぁ~。」

調理室の冷蔵庫を開くと、なにも食べるものがなし。

「はぁ!?なんだよ!俺をバカにしてんのかぁ!?あー、腹減ったぁ~。」

と、調理室を出て行くと……。

「くんくん、くんくん。ん!?このにおいは!」

においをたよっていくと……。

「うわあ~!ナポリタンだぁ~!誰もいないよな?右よーし、左よーし!それでは、いっただっきま~す!」

どんどん、ナポリタンを食べてゆくと……。

「フフフフフーン。フフフフフーン。」

「!?やべ!誰か来る!」

ジュンブライトは急いで食べて、その場を去った。

「……というわけです。」

「なるほどぉ。」

「ギロの推理が正しければ、ジュンブライトが犯人にまちがいないわね。」

「しかし、証拠は?ジュンブライトお兄様が食べたなら、証拠が必要でしょう。例えば、服にケチャップがついているとか、さっきのギロお兄様のように、口にケチャップがついているとか。」

確かに。

「う~ん……ないっ!」

「あだー!」

私達はお笑い劇のようにコケた。

「ったくぅ、じゃあ、俺が犯人だって言い張る必要、なかったんじゃねぇかよぉ。」

「ごめんなさい。ただ、思いこんだだけでして。」

「思いこんだだけかよっ!じゃあ、そーゆーお前は、どーなんだよ!」

ジュンブライトは、ギロさんの方を、びしっと指さした。

「お、俺ぇ?」

「あぁ!お前、あん時、なにしてたんだよぉ!」

「お、俺は……仕事をして、それから、リッちゃんがつくったオムライスを食べました。」

「ふーん。けどお前、オムライスを食べたと言って、まちがえて真莉亜のナポリタンを食べただろ!」

「え~!?ちがいますぅ!誤解ですぅ!」

「うそつけ!オムライスとナポリタンに共通するものを言え!真莉亜!」

え……。
二つとも、ケチャップを使うけど?

「確かに。ギロが犯人だってことは、100パー言えるわ。」

「ちょっ……リッちゃ~ん!」

「俺の推理によると……。」

ジュンブライトの推理によると、ギロさんはお腹を空かせていた。
グ~。

「はぁ~、腹減ったぁ~。なにかないかなぁ~?」

調理室の冷蔵庫を開けると、そこにはなにもなかった。

「ちぇ、こんな時になにもないなんて、ついてないぜ。ん?んん!?」

その時、ちょうど食卓にあったナポリタンが、オムライスに見えた。

「オ、オムライスだぁ~!きっと、リッちゃんがつくってくれたにちがいない!いっただっきま~す!」

「……ん?なんか、オムライスがちゅるちゅるのような……うわぁぁぁぁぁ!これはオムライスじゃなーい!ナポリタンだぁ~!ま、いっか。」

ギロさんはそのまま、食べ続けた。
そして……。

「ぶはーっ!おいしかった!」

あっという間にナポリタンを食べてしまった。

「さーて、仕事に戻るか。」

ギロさんは口をふくのを忘れて、その場を去った。

「……というわけだ。」

ほうほう。
ジュンブライトの推理が正しければ、ギロさんが犯人だってことがわかる。

「み、みなさん!じ、実は、本当のことを告げないといけませんっ!」

本当のこと?

「じ、実は俺、仕事をしてはいなかったのです!」

「え~!?」

「じゃあ、なにしてたのよぉ!」

「じ、実は、YouTubeを見ていましたぁ。」

「あだー!」

もうこれで、コケるの何回目だろ。

「YouTubeでなに見てたんだよぉ!」

「オ、オムライス戦士オムライスマンっていうアニメです。俺、それにハマッてるんです。」

お、オムライス戦士オムライスマンって、ギロさんが好きそーなタイトルのアニメだこと。

「じゃあ、ギロは犯人じゃないってことね。」

「うん。」

ギロさんはうなずいた。

「続いて、マドレーヌ。あなた、あの時、なにしてたの?」

「私?私はおりこうさんに、学校の宿題をしてましたぁ。」

「そうだよ、リリア!マドレーヌはちゃーんと、おりこうさんに、宿題をしてたよ!だから、この子はなにも、悪くないっ。」

「なんでそこで、おじさんが出てくんだよぉ。」

リリアさんはあきれて、「はぁ。」とため息をついた。

「じゃあ、ルアン様は?あの時、なにしてたの?」

「私は城の庭で、ゴルフをやってたよ。」

「あー!」

ん?どうしたの?ジュンブライト。

「おじさんがやったのか!庭に穴をつくって!」

「はい。私です。どうもすみませんでした。」

それってどういうこと?ジュンブライト。

「最近、お城の庭に穴が掘ってあったんだよぉ。まさか、おじさんがやっていたとはねぇ。」

「はい、今度から気を付けます。」

ルアン様、とても反省しています。

「その話はおいて。ルクト、あなたはなにしてたの?」

「わたくしは、お花に水をやっていましたぁ。けど、途中で真莉亜様の声が聞こえて、大あわてで、お城へ向かいました。」

「そーゆーお前は、なにをしてたんだよ、リリア。」

「私?」

「ああ。」

「私はね、オムライスをつくってたわ。つくって、ギロの部屋に置いて行ったわ。」

う~ん、なかなか犯人が見つからないよぉ。

「まぁ、そうあせるんじゃありませんよ、真莉亜様。」

そうですよねぇ。
きっと、犯人はこの中にいるはず!
見た目は高校生、頭脳は大人!
その名は、名探偵真莉亜!

「……おい、どーしたんだよ、急に。」

あ、なんか、急に調子に乗っちゃった♡てへ♡

「そんなことより、犯人をこの中から探すぞ。」

「それは、どーやって?」

「……さぁ~。わかんないっ。」

「あだー!」

てへぺろ、気持ち悪いです。

「ん?そういえば、大王様は?」

確かに。
さっきから、全然姿が見当たらない。

「大王様なら、ぐっすり寝ておりますよ。」

「ちっ、あのクソ親父、こんな昼間でも、よく寝るよなぁ。」

うん。

「どぅわぁれが、クソ親父だって?」

その声は……。

「ヒアン様!」

「あ、いやぁ、なんでもないよぉ~。アハハハハ!」

もう、ジュンブライトったら、苦笑いしてるし。

「そう。ならいい。」

ヒアン様はにっこりと笑った。
私、ヒアン様の笑顔が、とっても好きなんだよなぁ~。

「ところで、なにがあった。そんなにみんな集まって。」

「あ、実は……。」

「真莉亜のナポリタンが、誰かに食べられたんだよ。」

「!?」

あれっ?ヒアン様の表情が、マズイ表情になってる。
どうしたのかなぁ~?

「で、みんなに事情聴取をしてるんだ。親父、なにか知っているか?」

「あ……あ……。」

ん?なんか様子がおかしいぞ?

「ん?どうした、親父。そんなにあわあわして。」

「あ……あ……。」  

「『あ』じゃわかりませんよ?」

一体、どうしたんだろ。

「あ……あのナポリタンは、真莉亜さんのだったんですかぁ~!?」

「えーっ!?」

私達は声をそろえて驚いた。

「ってことは……。」

「親父、親父が真莉亜のナポリタンを食べたのかよ!」

ヒアン様はそれから、顔を下に向けた。

「……あぁ。すまん。」

犯人がヒアン様だったなんて、衝撃ですっ。

「親父!」

ジュンブライトは、ヒアン様の胸ぐらをひっぱった。

「わ!」

「てめぇ、よくもうちの嫁のナポリタンを食べたなぁ!絶っっっっっっっ対、ゆるさねぇ!」

「こ、これにはわけが……。」

「言い訳はよせ。さあ、さっさとナポリタンを吐き出せぇ!」

「うわっ!やめてくれ!」

ジュンブライト!やめてあげなよ!

「……ちっ、わかったよ。」

ジュンブライトは、ヒアン様の胸ぐらをひっぱるのをやめた。

「じ、実はぁ、これにはわけがあってぇ。」

早く言ってくださいっ。

「ま、真莉亜、こわい。」

ヒアン様は、ゴホン!とせきばらいをして、それから、口を動かした。

「実は、2時間前……。」

2時間前、ヒアン様はお腹を空かせていた。
グ~。

「はぁ、腹減ったぁ~。なにか食べる物、ないかなぁ~?」

冷蔵庫を開けると、そこにはなにもなかった。

「ちっ、なにもないじゃないか!私を死なせる気か!」

と、機嫌悪く、歩いていると……。

「ん?食卓になにかあるぞ?」

食卓に行ってみると……。

「おお!ナポリタンじゃないか!誰か、私のために、用意してくれたのかな?それでは、いっただっきま~す!」

ヒアン様は、どんどん、ナポリタンを食べ続けた。

「ふぅ~、ごちそう様でしたっ。いやぁおいしかったなぁ。こんなにおいしいナポリタンは食ったことがない!ふあ~、なんだかねむくなってきた。よし、寝るとしよう。」

ヒアン様は食卓を去った。

「……というわけだ。」

というわけで。
すると、ヒアン様は、私に向かって、土下座をした。

「真莉亜さん、すまない!こんなことをしてしまって……勝手に食べた私が悪かった……罪は償うから、どうか、この私をゆるしてくれ……!たのむ!」

ヒアン様……。

「顔を上げてください。」

ヒアン様は、ゆっくりと、顔を上げた。

「ゆるしますよ。その償う気持ちが、私に伝わってきましたから。」

私はほほえみながら、言った。

「あ……ありがとう、真莉亜さ~ん!」

ヒアン様は泣きながら、私に思いっきりだきついた。
ぐ、ぐるじ~い。

「おい親父!真莉亜が苦しそうじゃねぇか!」

「あ、ごめん。」

けど、よかった。
事件が解決して。
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