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第1章

第四十話 「ネルさんのおじいさんの霊、現る」

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あれから2ヵ月後。
あたし達は、ウルフ一郎のお父さんのお墓参りに行った。

「父ちゃーん、ガオンがお花を選んでくれたよぉ。」

「う、う~!」

「ほらガオン、おじいちゃんにどうぞーは?」

「あい、あい!」

うふふ、上手に置けたねぇ。

「さぁ、お参りするぞぉ~。」

ウルフ一郎が、線香に火を付けて、あたし達は、手を合わせた。

「……よし、次、行くか。」

うん。


                                ☆


次は、あたしのおじいちゃんのお墓。

「おじいちゃーん、来たよぉ~。」

「う、う~!」

「ガオンも、連れて来たよぉ~。」

「さぁガオン、ひいじいちゃんに、お花を渡して。」

「あい、あい!」

ガオンはお墓の上に、お花を置いた。

「上手に置けたねぇ~。」

「ひいじいちゃん、喜んでっぞぉ~。」

「あう、あう!」


                             ☆


あたし達は、喫茶店で、ゆっくりしていた。

「ところで、お前のじいちゃんは、どんな人だったんだ?」

「ん?優しい人で、あたしに剣術を教えてくれた人。近くに道場を開いて、あたしにとって、あこがれの人だったんだ。ま、あたしとリリアには、メロメロだったけどな。」

「ふーん。」

「ただ、あたしとリリアのことになると、カッとなるんだよぉ。」

「へぇー。それはこわいなぁ。」

「だろ?いじめっ子をぶっ飛ばしたり、なぐったりしたのさ。」

「こ、こわっ。」

「あたしが中一の時、亡くなったんだ。あん時、むっちゃくちゃ、泣いたなぁ。」

「そっかぁ……もしかして、幽霊になって、お前のところに来てるかもしれないぞ?」

「えーっ?そんなこわーいこと、言わないでよぉ。あたし、そーゆーの、苦手だから。」

「アハハ。そうだったなぁ。さ、もう行こっか。」

うん。
あたし達は、スッと立ち上がった。


                            ☆


「へ、へ、へっくしょん!はぁ、寒い寒い。」

風邪でもひいてんのか?

「ちげーよ。さっきから、寒気がするんだよ。」

大丈夫か?

「あぁ。ちょっくら、寝てくる。」

あぁ。そうしろ。
バタン。


                                 ☆


スー、スー。
ん~、よく寝たぁ。
さーて、そろそろ起きようか。
ん!?なんだ、動けねぇ!
ええい、もう一回!
起きようとしても、全然、動かない。
くっそぉ~!なんでだ!
ん?この状態、どっかで聞いたことあるぞ。
確かぁ、昨日観た、『怪奇現象SP』で……。

「……い。」

ひぃ!なんか、声が聞こえた!?

「……おい。」

ギャァァァァァァ!
か、か、金縛りだぁ~!

「おい!」

た、助けてくれ~!
俺様、死にたくない……。
俺様、気絶しました。

「君がウルフ一郎くんか。」

ウルフ一郎、気絶中です。

「ちょっと、驚かしすぎたかな。ま、いーや。」

黒い影が、スーッと深呼吸して、それから、口を動かした。

「くおうら、起きんかーい!」

わわわ!
ったくぅ、なんだよ……。
うわぁぁぁぁぁぁ!ゆ、幽霊~!

「わ!ちょっと、起きて!」

ん……なんだよぉ、じいさん。
髪が白くて長くて、白いひげが生えていて、しわが生えていて、おまけに、紺色の着物を着ている、おじいさん。
ガチャッ。

「ウルフ一郎、どうしたんだ?」

あ、いやっ、なんでもないっ。
ネルには見えねぇのかよ!ま、幽霊だけど。

「そう。よかった。」

ネルはそう言って、ドアを閉めた。

「じいさん、一体誰なんだ?なんで俺様の名前を知ってる。」

「こいつのおじいさんなんだからよ。」

じいさんが、一枚の写真を見せた。
ん?んん!?こ、こいつ、ネルじゃねぇか!
ま、まさか……。

「そう。わしはクダン。ネルとリリアのおじいちゃんじゃ。」

え~!?
こ、この人が、ネルのじいちゃん!?
ほ、ほんとに、現れた……。
しかも、下半身スケスケだし。

「な、なんでおめぇ、来たんだよ!」

「孫がちょっと心配でのう、天国から駆けつけてきたのじゃ。」

て、天国って、来世に来てもいいんだぁ。

「はぁ。ネルが生まれて、もうすぐ24年経つ。生きとったころ、楽しかったことが、山程あった。けど、ネルが思春期に入って、しゃべらんくなって、わしはそのまま、ポックリと逝ってしまったのじゃ。」

な、なんてかわいそうなじいさんなんだ!
すると、じいさんは、ドアをガチャッと開けて、ドアの隙間から、のぞきこんだ。
そこには、ガオンのお世話をしている、ネルの姿が見えた。

「あの、かわいいかわいいわしの孫が、まさか母親になるなんて、思ってもいなかった♡おまけに、かわいいかわいい曾孫が生まれて♡」

「う、う~!」

「おっぱい飲みたいのかぁ?よし、ちょっと待っててねぇ。」

「あわわわわわわ!」

ちょっと、見ない方がいい!ぶんなぐられるぞ!

「あ……あぁ。」

ガチャン。
ふぅ。もう少しで、ぶんなぐられるところだったぜぇ。

「い、今の孫は、そんなにこわいのか?」

あぁ!

「俺様がおっぱいのことを言うと殴るし、たたかれるし、蹴飛ばされるし、もう、女ゴリラだぜぇ。」

「くおうらぁ!」

ひぃ!

「ちょっと、ここにすわれ!」

あ、はい。
俺様は、じいさんに向かって、正座をした。

「てめぇ、うちの孫の悪口を言うなんて、100年、いや、1000年早いぞ!」

い、いや、あなたが聞いたんじゃないですか……。

「言い訳言うなっ!」

ひぃぃぃぃ!こ、こわ~い。

「いいか!二度とわしの前で、孫の悪口を言うな!もし言ったら、これだぞ?」

う、うわぁ~。右手をグーにして、ニヤニヤしているよぉ。
わ、わかりました。
も、もう言いません。

「うん、それでよしっ。」

ふぅ、笑顔に戻ってよかった。

「ウルフ一郎、ご飯だぞぉ~。」

あ、は~い。

「さて、わしも出るか。」


                                  ☆
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