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第1章

第四十二話 「さようなら、ヒアン様」

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ところで親父さん、なんで行きたいところが、墓場なんだい?誰か、ねむっているのか?」

「あぁ。とても、大切な人がね。」

「?」

「いやぁ、墓場に行くのは、約34年振りだなぁ。」

「さ、34年振り!?34年間、墓場に行ってなかったのか!」

「あぁ。その人が死んだあと、もう、つらくなってな。行かなくなったんだよ。」

「そりゃそーだろ。」

「あ、もうすぐ着くよ。」

「へいへい。」

(一体、誰がねむってるんだろ。)

「ここだ。」

(ん?L、e、o、n……レオン?一体、誰だこりゃあ。)

「私の妻、レオン。ヴァンパイア界の女王で、ジュンブライトの母親。彼女は小さいころから、体が弱くてねぇ。ジュンブライトが産まれたあと、すぐ死んじゃった。」

(お、なんか、そう言ってたな。)

「レオーン、久しぶりだな。元気だったか?君が大好きだった、雲間草。ここに供えとくねぇ。」

「こ、こんにちはっ。ウルフ一郎、38歳、既婚者ですっ。あ、あなたの息子さんの、お、お友達ですっ。」

(まぁ、本当は恋のライバルだけどな。)

「レオン、すっごく喜んでるよ。「よかった。息子に頼もしい友達がいて。」って。」

「た、頼もしいって……まあな。」

「ウルフ一郎くん。」

「ん?なんだい?」

「もし、私が死んだら、息子にこう言っといてくれ。」

その時、二人の会話を遮るかのように、風がピューと強く吹いた。


                              ☆

「……あなた、あなた。」

「ん……その声は、まさか!」

「レオン!」

「うふふ。久しぶりね。」

「あぁ。会いたかったよ、ずっと。」

「私も。会いたかったわ、あなた。」

「お前、ずいぶん老けてしまったな。」

「あなたこそ、おじいさんらしくなったんじゃないの。さあ、行きましょう。これからは、ずっと、二人きりでいられるのよ。」

「あぁ。」

「フフフフフ、フハハハハ!」

気候が暖かくなる春の日。
ヒアン様は、深いねむりにつきました。
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