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第1章

第五十七話 「ロゼッタさんの過去」

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「……今日は、命日だね、お母さん。」


                            ☆


「う、う~!」

うふふ。
道華、今日もいい天気だね。

「あい、あい!」

うふふふふ。

「こんにちは、チビ女王。」

ロ、ロゼッタさん!
ていうか、チビとは失礼ですっ!

「うふふふふ。言ってみただけよ。」

言ってみただけでも悪いですっ!

「うふふ。」

ところで、なにしに来たんですか?

「ん?用事が終わったから、来ただけよ。じゃ。」

あ、ロゼッタさん!紅茶を一緒に飲みませんか?

「いいわ。近くの喫茶店で、もう飲んだから。」

あーあ。行っちゃった。

「う、う~!」

ところで、今日のロゼッタさん、様子がおかしかったなぁ~。
よし、ネルさんちに寄って行こう!


                              ☆


私は、道華を連れて、ネルさんちにやって来た。

「ほう。ロゼッタがいつもより調子がよかったんだな。」

えぇ。
ネルさんなら、知ってますよね?親友だから。

「知ってるもなにも。あいつと手を組んだ頃、やつの口から言ったから。」

ロゼッタさんの口から?一体、なにを。

「……自分の過去……さ。」

!?
ロゼッタさんの過去を知りたいです!教えてください!
私が、ネルさんに向かって、お辞儀をすると、ネルさんは、「はぁ。」とため息をついた。

「わかったよ。教えてやる。本当は、やつに言うなよって言われてるけど。ロゼッタは、家がすっごい貧しくて、おいしい食べ物とか、手に入らなかった。」

えっ!?そうなんですか!?

「あぁ。やつが生まれてすぐ、父ちゃんが病気で亡くなってな。母ちゃんと二人で過ごすことになったのさ。」


                                ☆


                      ー19年前ー


「いらっしゃ~い。今日は大安売りだよぉ!さぁ、さぁ、いらっしゃ~い!」

よし、今だ!
私は、じゃがいもをぱっと取って、逃げた。

「あぁ!またあのガキ!まてぇ~!」

はぁ、はぁ、はぁ。八百屋のおじさんが、追いかけて来るよぉ!

「まてぇ~!」

ひぃぃぃぃ!もう、体力が持たない……。

「ったくぅ、どこ行きやがった!あの紅い髪のガキ!」

ふぅ。
ゴミ箱の中に隠れてよかった。
さーてと、家に帰って、お母さんと一緒に食べるぞぉ!


                                ☆


私の家は、ビンボーだから、ボロボロの家。
ガラッ。

「お母さ~ん、じゃがいも、取って来たよぉ~。」

「ありがとう、ロゼッタ。いつも助かるわ。」

えへへへへ。

「じゃあ、お食事にしましょう。」

うん!
私達は、じゃがいもを洗って、テーブルに行った。
いっただっきま~す!
ぱくっ。
ん~、おいひ~!
やっぱりじゃがいもは、サイコー!
ん?お母さん、どーしたの?食べないの?

「……これ、ロゼッタにあげるわ。」

えぇ!?

けど、お母さんの分が、なくなっちゃう……。

「大丈夫よ。あなたが頑張って、取りに行ってくれたから。そのお礼よ。」

うわぁ~。お母さん、ありがとー!

「うふふふふ。さぁ、早く食べなさい。大きくならないわよ。」

はーい!
ん~、やっぱりじゃがいもはうま~い!

「うふふふふ。」

ズキン!

「ゔ……。」

お母さん、大丈夫?

「え……えぇ。大丈夫よ。気にしないで、食べなさい。」

うん……。
お母さん、最近、頭が痛くなったり、咳がひどくなったりするんだ。

「ごめんね、ロゼッタ。あなたを学校に行かせてあげなくて。もし、お金があったら、行かせてあげたのに。」

お母さんが、私の頭を優しくなでた。
ううん、いいの!お母さん!
私、お母さんといる時が、一番楽しい!

「ロゼッタ……うふふ、あなたらしいわね。」

お母さんが、優しくほほえんだ。


                                  ☆


私達は、お花畑で、お花を摘んでいた。

「お母さーん、こんなにいっぱい摘んだよぉ~。」

「うふふふふ。きれいな花ね。家に帰って、かざりましょう……。」

すると、お母さんが、ばたりと倒れた。

「お母さん!」

私はお母さんのところに駆けつけた。
大丈夫!?

「えぇ。大丈夫よ、ロゼッタ。」

おうちに行って、休んどく?

「えぇ。そうするわ。」

私は、お母さんを家まで抱えた。


                              ☆
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