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第1章

第六十四話 「ネルさんとウルフ一郎さん、マイホーム探しへ!」

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ー今から、9ヵ月前の頃……ー

「ウルフいちろ~う、愛してるぞ~。」

「俺様も、愛してるぞ、ネルた~ん。」

ウルフ一郎が、あたしのお腹をさわった。

「それと、この子も。」

うふふふ。
ピシャン!

「こら、あんた達!起きんかい!」

テ、テレサ!?じゃなくて、お義母さん!

「いつまでラブラブぶってんだい!まさか、また一晩を共にして……。」  

「してないよ!してないってばぁ!」

「うん、よろしい。今度、また一晩を共にしたら、ゆるさないからな。」

「はーい。」

うふっ。

「アハッ。」


                                ☆


あたし達は、食卓で、朝ご飯を食べていた。
今日の朝ご飯は、わかめととうふのおみそしると、れんこんのきんぴらと、白ご飯と、漬物と、玉子焼き。
あたし達は、結婚してから、ウルフ一郎の実家に住ませてもらってる。
なんで家を買わないかというと……。
お金ないし、実家に住ましてもらってる前までは、アパートに住んでいたけど、そこの管理人が、あたしの悪口を言ってて、怒りをおさえきれなくなったウルフ一郎は、管理人をぶんなぐって、追い出されたのさ。

「ったくぅ、あんた達、いつになったら、家を手に入れるんだい。」

「知らねぇよ。母ちゃん、俺様達が戻って来て、すっごく喜んでたんじゃないの。」

「二人増えると、家の中が狭くなったんだよ!大迷惑なんだよ、こっちは!」

お義母さん、大の毒舌です。

「まあまあ。母ちゃん、本当はうれしかったんじゃないの?」

「うるさい!このあたしに、うれしいなどあるか!」

お義母さん、あたしに負けないくらい、ツンデレです。

「それに、子供のことも、考えないと、いけないだろ?」

あ……。
あたし達の、子供のことも、考えないと……か。
確かに。お義母さんの言う通りだ。
あたし達は、自分達のことしか、考えなかった。
そして、今お腹に宿ってる命のことを、放っておいていた。
この子と一緒に住むためには、自分達の家を探さないと!

「ねぇ、ウルフ一郎!一緒に家を探そう!三人で暮らすために、家を探そう!」

「ネル……。」

ウルフ一郎が、おはしと茶わんを、テーブルに置いた。

「そうだな。ネルの言う通りだ。家を探そう。」

うん!そうこなくっちゃ!

「ちょっとまったぁ!」

なんだよ。

「俺様は反対だぁ!なぜなら、ネル様と、また二人っきりになるから!」

はぁ……こいつといると、ややこしくなる。

「いいじゃないか、ウルフ三郎。兄貴とネルは、夫婦なんだから。」

「うるさ~い!とにかく!俺様は反対だ!わかったか!」

ウルフ三郎はそう言って、怒りながら、その場を去った。

「……ったくぅ、どんだけネルさんが好きなのかぁ。」

「ほっとけ。あいつのことは気にすんな。」


                                ☆


次の日。
あたし達は、ヴァンパイア界にある、不動産に行った。

「ほうほう。新しい住まいをお探しですかぁ。」

「あぁ。2ヵ月後、子供が産まれるんだよ。だから、家族でしあわせに暮らせる、家が欲しいんだよ。」

「ちっ、あの桜吹雪のネルが、妊娠してたのかよ。男作って、イチャイチャしやがって!だから、あんまり活躍しなかったんだな。」

「!」

ボカ、ボカ、ボカ、ボカ!

「次、行こう!」

え~?もう少し、探そうよぉ~。

「だめだ!あそこの不動産は、評判が悪いからなぁ!」

そんなぁ~。


                             ☆


続いて、あたし達は別の不動産に行って、あたしの故郷、貴族の街にある、家を紹介してもらった。
うわぁ~。
中は広くて、床は大理石でできて、ピカピカに輝いていて、キッチンがあって、食器棚があって、白いフワフワのソファーがあって、とても大きなベランダがあって、その下には、プールがあって、ベランダから見る景色は、とてもきれい!

「ここは築9年の家です。前、ここに住んでた方は、有名な投資家だったんですよ。」

「へぇー。」

「ねぇ、ウルフ一郎!あたし、この家欲しい!なぁ、買って買ってぇ~。」

あたしは、ウルフ一郎の腕を組みながら、おねだりした。

「奥さん、すっかりこの家を気に入って。」

「あぁ。こいつ、お嬢様だからなぁ。どら、そしたら買うか。何円だ。」

「百万八千九百円です。」

すると、ウルフ一郎は、ポカーンと口を開けて。

「ひゃっ……百万!?」

どーした、ウルフ一郎。

「……あきらめよう。」

え~!?なんで!

「だって、高いんだもん!次はフツーの一軒家で!」

そ、そんなぁ~。
 

                                  ☆
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