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第十二話 「魔法のラブレター」

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「ネル。」
 
「ジュンブライト様♡」
 
「俺が愛する女は、お前しかいねぇ!」
 
「はぁ~。そんなこと言われたら、照れますよぉ♡」
 
「結婚してくれ。結婚したあと、子供をつくろう!」
 
「はいっ!あたしは死ぬまで、ジュンブライト様ついて行きまーす♡」
 
「ネル・・・・・・。」
 
「ジュンブライト様・・・・・・。」
 
「ん―。」
 
コーケコッコー!
 
「うわぁ!ったく、にわとりどもあたしのしあわせな時間を、じゃまするんじゃねぇ!全員きって、からあげにするぞ!」
 
コッコケーッコッコ!
 
「さ、東京に行くとするか。」
 
ーある山道ー
 
「あれー?まーた、迷っちまった。一体、いつになれば、東京に着くんだよぉ!」
 
バタン。
 
(ジュンブライト様、早く会いたい・・・・・・あなたがいない一日なんてすごせません・・・・・・。)
 
「そこの姉ちゃん、恋になやんでいるのか?」
 
「・・・・・・誰だ。」
 
「わしは、恋の神様じゃ。」
 
「うそつけ。」
 
「ほんとーだってば!ほら、屋台を見てごらん!」
 
「屋台を・・・・・・?う、うわぁ!なんじゃこりゃ!恋愛グッズが、いっぱいじゃねぇか!疑って、ごめんなさい。」
 
「いいよ。姉ちゃん、恋のなやみとは、どういうものじゃ?」
 
「実は、好きな人がいて、その好きな人には、彼女がいて、未来の子供もいるんだ。」
 
「ほほう。これはまさしく、不倫じゃな。」
 
「不倫じゃないわボケ―ッ!てか、不倫って意味、まちがってね?」
 
「で、どうしたいんじゃ?」
 
「その好きな人に、告白して、つきあいたいんだ!」
 
「やっぱ、不倫じゃな。」
 
「ボコすぞ、てめぇ。」
 
「ひぃぃぃぃぃ!わかったから、これをオススメしよう!」
 
「・・・・・・なんだこれ。」
 
「これは、魔法のラブレターじゃ。」
 
「魔法のラブレター?」
 
「そうじゃ。このラブレターを相手に渡すと、あら不思議。相手が自分のことを好きになるんじゃ。はい、これ。」
 
「ん・・・・・・?ん!?」
 
「・・・・・・どうじゃ。」
 
「じーさん!お前のこと、好きになった!つきあってくれ!」
 
「いいぞ。では・・・・・・。」
 
ビリビリビリビリ。
 
「う、うわぁぁぁぁぁ!なにしてくれてんだ、ボケ―ッ!」
 
「手本を見せただけじゃ。」
 
「どこが手本だ。」
 
「ラブレターを破ると、相手は自分のことを好きじゃなくなってしまう。元に戻ってしまうのじゃ。まさに、ラブレターが、やぶれたー、じゃな。」
 
「オヤジギャグ、言うな。これ、気にいった。何円するんだ?」
 
「一万円。」
 
「この、ごくふつーのレターセットで!?とぼけるなっ!500円にしてくれ!」
 
「じゃあ、一億円。」
 
「どんどん高くなってるじゃねぇか!」
 
 

 
 
ー1週間後ー
 
私は、ジュンブライトと、寝室でだきあっていた。
 
「真莉亜。」
 
なに?ジュンブライト。
 
「愛してるぜ。」
 
私も。愛してるよ、ジュンブライト。
 
「真莉亜。なんでお前はそんなに、かわいいんだ?」
 
ジュンブライトが、私の黄色い髪の毛をさわりながら、言った。
 
「女の子だからよ。」
 
「お前とつきあって、よかったなぁ。」
 
うん。
 
「かわいい女は、お前しかいねぇ。真莉亜。」
 
チュ・・・・・・。
ジュンブライトが、私の髪の毛に、キスをした。
 
「もう、ジュンブライトったらぁ。なんでそんなに、キスするの?」
 
「真莉亜を愛しているから。」
 
ジュンブライト・・・・・・。
 
「真莉亜・・・・・・・。」
 
私達が、キスをしようとしたその時、ガラッと、ふすまが開いた。
そこには、ルクトさん立っていた。
私達は、だきあうのをやめた。
 
「王子。ネル様から手紙が来ましたよ。」
 
「ネルから手紙?」
 
ピンク色の便せんを渡されると、ジュンブライトは便せんを開けた。
この手紙、ぐっしゃぐしゃになってるね。
 
「きっと、一週間前に書いて、ポストに着くまで、一週間、かかったんだろ。」
 
ジュンブライトは、ぐしゃぐしゃになっている手紙を広げた。
 
「・・・・・・!?」
 
ジュンブライト、その手紙、なんて書いてあるの?
私が聞くと、ジュンブライトは、すくっと立ち上がった。
ちょっと!なにか言ってよ!
すると、ジュンブライトが、私の方を、振り向いた。
か、顔、変わってるけど・・・・・・。
 
「もう、お前には興味ねぇ。」
 
!?
も、もう一回、言って!
 
「もう、お前には興味ねぇ。」
 
ちょっとまって!私、なにもひどいこと、言ってないし・・・・・・。
 
「俺は、ネルを愛する男になる。短い間だったが、ありがとう。」
 
な、なに言ってるの・・・・・・そんなの、ひどすぎるよ!だいたい、なんでネルさんが出てくるのよ・・・・・・。
 
「おじゃましまーす。」
 
ネルさんの声に反応したのか、ジュンブライトは、手紙を捨てて、ネルさんのところにかけつけた。
 
「ネル!」
 
「ジュンブライト様・・・・・・。」
 
な、なんなの?この雰囲気。
ジュンブライトは、うれしそうに、ネルさんにだきついた。
 
「会いたかった・・・・・・お前に会いたかった・・・・・・。」
 
ネルさんはぼうせんとして、ジュンブライトをだきしめた。
 
「あ・・・・・・あぁ・・・・・・。」
 
ポタポタポタポタ。
ネ、ネルさんが、泣いてる・・・・・・!
 
「こ・・・・・・これは、夢じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
 
???
 
「どうしたんだい。そんなに大きな声を出して・・・・・・。」
 
テレサさんが、だきあっている二人を見て、驚いた。
 
「ジュンブライト!あんた、なんでネルにだきついてるんだい!」
 
「うるせぇ、ババア。俺はな、ネルだけを愛しているんだ。ほかの女には興味がない。」
 
「今、ババアって、言ったね!?」
 
ほかの女には、興味がない・・・・・・。
その瞬間、私の目から涙があふれてきた。
 
「うわ~ん!」
 
私は、顔を両手でおおって、腰をぬかして、泣きだした。
 
「お母さん、大丈夫!?」
 
「真莉亜お姉様!」
 
「真莉亜お姉ちゃん!」
 
道華とマドレーヌちゃんとソラちゃんが、私のところへかけよった。
 
「ネル・・・・・・。」
 
ジュンブライトが、ネルさんの肩をがっしりつかんで、ゆっくり目を閉じた。
ま、ま、ま、まさか!
 
(この状態は、もしかして、キス!?)
 
ジュンブライトの顔が、どんどんネルさんの顔に、近づいてくる。
 
(なんで、なんで、なんで!ジュンブライト様の唇は、こんなにぷるんとしてるんだ!?てか、キスって、どんな味がするんだ?いちごみたいな味か?ミルクみたいな味か?それとも、生温かいのか!?ええい!そんなことは、どーでもいいっ!)
 
「ん―。」
 
ふ、ふ、ふ、二人が、キスしようとしてる!
そ、そんなの、絶っっっっっ対、見たくない!
その時、黒い影が、ジュンブライトの背後にシュッと、現れた。
 
「なにやってるの!」
 
黒い影が、ジュンブライトの頭をグーでなぐった。
ジュンブライトの頭には、たんこぶがついている。
 
「リ・・・・・・リリア!」
 
「ん?」
 
リリアさんが、泣いている私に気づいて、しゃがんだ。
 
「どうしたの?」
 
「う・・・・・・。」
 
「ふっ・・・・・・ふははははは!ざまあみろ、春間真莉亜!ジュンブライト様は、あたしのものになった!これが、これが、これが!恋の神様からもらった、恋の力だ!」
 
う・・・・・・。
 
「ジュ・・・・・・ジュンブライト、私のこと、愛してる?」
 
私が泣きながら質問すると、ジュンブライトは、私の顔を、ぎろりとした目でにらんだ。
 
「おめぇみてぇな女は、きらいだ。さ、ネル、行こう。」
 
「はい♡ジュンブライト様♡」
 
二人は仲良く手をつないで、部屋を出て行った。
 
 

 
 
私は、ジュンブライトにフラれて、とても悲しくなって、泣いていた。
 
「う、う、うわ~ん!ジュンブライトに、フラれたよぉ~!人生で初めて男にフラれたよぉ~!」
 
「お母さん!鼻水ふいて!」
 
あ・・・・・・ありがとう。
ズルズルズルズル!
はぁ~、スッキリしたぁ~。
あの、輝いていた熱~い恋を、思い出すなぁ~。
 
 
-真莉亜の回想ー
 
「アハハハハ!」
 
「うふふふふ。」
 
「まてよ、真莉亜!」
 
「つかまえてごらんなさーい。」
 
「だーれだ。」
 
「ジュンブライト。」
 
「ピンポ~ン!せいか~い!」
 
「ジュンブライト、大好きだよぉ。」
 
「俺も。大好きだぜ、真莉亜。」
 
ー真莉亜の回想 終わりー
 
うわぁぁぁぁぁぁん!なんで思い出すたび、涙が出てくるのぉ~!?
 
「真莉亜、落ち着いて・・・・・・。」
 
落ち着いてなんかいられますかぁぁぁぁぁぁ!
 
「相当、悲しんでるね。」
 
「うん。」
 
うわぁぁぁぁぁん!ジュンブライトぉぉぉぉぉぉ!
 
「どうしよう・・・・・・お父さんがお母さんのこときらいになったら、二人の未来が・・・・・・。」
 
「大丈夫よ、道華。バカ女とジュンブライト様の未来なんて、とっくに消えたから。」
 
「アキ!なんなの?その言い方!」
 
うわぁぁぁぁぁん!
 
「また泣き出したよ、テレサ。」
 
「それにしても、不思議だねぇ。ジュンブライトが簡単に、真莉亜をきらうなんて。」
 
「なにかあったの?」
 
ジュンブライトが、ネルさんからの手紙を読んだら、急に・・・・・・急に・・・・・・!
 
「あー、わかったから、泣かないで。」
 
「お手紙って、このことですか?」
 
あー!ルクトさん!そのピンク色で、ぐしゃぐしゃになっている便せんは・・・・・・。
 
「寝室にありました。」
 
それにしても、手紙の内容、教くれなかったなぁ、ジュンブライト。
 
「見せてくださいっ!」
 
ピンク色の便せんを、ごういんにマドレーヌちゃんが取り上げて、手紙を広げると、目を見開いた。
 
「これは・・・・・・!」
 
どうかしたの?マドレーヌちゃん。
 
「真莉亜お姉様は、見ない方がいいですよ!あと、クリスお姉様も、アキも、ソラも!」
 
なんで?
 
「そ、それは・・・・・・。」
 
「あたしに見せて!」
 
アキちゃんが、手紙を取り上げると、首をかしげた。
 
「漢字、読めなーい。」
 
アキちゃんは、紅葉に手紙を渡すと、紅葉は、手紙を読み始めた。
それには、とんでもないことが書かれていた。
 
〈拝啓 ジュンブライト様 お元気ですか?
実は、あなたにどうしても伝えなければならないことがあります。
驚かないでください。
あなたに出会ってから、あたしの人生は大きく変わりました!
そう、あたしはあなたのことが、好きになりました!よろしかったら、つきあってください!
あの、春間真莉亜のことを忘れて、あたしとつきあってください! ネルより〉
 
・・・・・・これは!
 
「ラブレターね。」
 
「もう!あの子ったら、バカなことをして!」
 
リリアさんが、ぷんぷん怒っている。
 
「けれど、ラブレターくらいで、急に好きになるんでしょうか。」
 
そうですね。これはごくふつーのラブレター。なにか秘密があるはず。
 
「ルクト。ネルがこんなもの、おいていったよ。」
 
道華、それは?
 
「玄関にあった。」
 
道華が、ルクトさんになにかわからないものを渡した。
ルクトさんは、目を大きく開いた。
 
「これ、どー見ても、ごくふつーのレターセットですねぇ。」
 
ん!?ルクトさん!手紙にある文字を見て!
 
「え?・・・・・・えぇ~!?」
 
ルクトさんは、声を上げた。
 
「どうしたの?」
 
「こ、こ、こ、これは、普通のレターセットじゃありませんっ!」
 
「どういうこと?」
 
「みなさん!表紙にある文字を見てください!」
 
みんなが表紙を見ると、「えぇ~!?」と、声を上げた。
そこに書いてあったのは・・・・・・。
 
『魔法のラブレター 好きな人に渡すと、あら不思議。相手が自分を好きになる♡』
 
それを聞いたクリスさんと、アキちゃんと、ソラちゃんは、瞳の中にあるハートを輝かせた。
 
「これは、見逃せないわ!」
 
「書こーっと!」
 
「んっと、なんて書こっかなぁ?私の花婿になってくださいっと。」
 
三人は、ラブレターを書き始めてる。
 
「こらー!なーに書いてんだい!少しは空気を読め―っ!」
 
テレサさんにしかられて、三人はラブレターを書くのをやめた。
 
「ジュンブライトお兄様を元に戻すのは、どーすればいいんでしょうか?」
 
消しゴムで消せば、いいんじゃない?
 
「そんな簡単なことじゃないと思うわ。」
 
「燃やせば、いいんじゃないですか?」
 
「だめよ。満月荘全体が、燃えてしまうわ。」
 
「なーに、こわいこと言ってんだい、あんたはーっ!」
 
「ごみ箱に捨てれば、いいんじゃない?」
 
「だから、そう簡単にいかないと思うって。」
 
「紙飛行機にして、地球の果てまで飛ばしたほうが、いいんじゃない?」
 
道華、それはあんたがやりたいだけなんでしょ?
 
「紙飛行機くらいで、解決すると思うかい?」
 
「うんっ!」
 
道華が真剣な顔で、うなずいた。
 
「バカなこと、考えたわねぇ。」
 
「賛成!」
 
「私も!」
 
「じゃあ、つくろっ。」
 
「うん!」
 
つくるなっ。
 
「一体、どーすれば、ジュンブライトお兄様は、元に戻るんでしょうか。」
 
「う~ん。」
 
私とマドレーヌちゃんが、考えこんでいた、その時。
 
「ラブレターが、やぶれたー。」
 
「キャハハハハ!」
 
「おもしろ~い!」
 
ちょっと!道華!なーにオヤジギャグなんか、言ってるのよ!
 
「そうですよ。今は、元に戻す方法を、考えて・・・・・・ん!?」
 
マドレーヌちゃん、なにか思いついたの?
 
「道華、さっきのオヤジギャグを、言ってください。」
 
「ラブレターが、やぶれたー。」
 
マドレーヌちゃん!こんな状況で、オヤジギャグなんか、言わせないでくれる?
 
「真莉亜お姉様!ラブレターが、やぶれたーって、言って下さい!」
 
え?
 
「ちょっと!マドレーヌ!ふざけないでくれる?」
 
「ふざけてません!いいことを、思いついたんですっ!」
 
いいこと?
 
「もしかして、ジュンブライトを元に戻す方法を!?」
 
「はいっ!」
 
マドレーヌちゃんは、満面な笑みで、うなずいた。
 
「みなさん、目を閉じてラブレターが、やぶれたーって、言ってください!」
 
「え・・・・・・?」
 
「いいから早く!」
 
マドレーヌちゃんの言う通りに、私達はゆっくり目を閉じて、口を動かした。
 
「ラブレターが、やぶれたー。ラブレターが、やぶれたー。ラブレターが、やぶれたー。ラブレターが、やぶれた・・・・・・。」
 
「あ!」
 
紅葉が、声を上げた。
 
「ラブレターが、やぶれたーって、ラブレターがやぶれたって意味でしょ?」
 
ってことは・・・・・・。
 
「ラブレターをやぶけば・・・・・・。」
 
「ジュンブライト様は、元に戻るってこと!?」
 
「そうよっ。」
 
紅葉は、私達に向かって、ウインクをすると、マドレーヌちゃんの方を振り向いた。
 
「マドレーヌちゃん、いいこと考えたわねぇ。ジュンブライトの代わりに言うけど、さっすが、ジュンブライトのいとこねっ。」
 
紅葉は、マドレーヌちゃんの頭を、優しくなでた。
 
「それじゃあ、作戦を考えましょーう!」
 
「オー!」
 
 
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