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第三十二話 「マドレーヌちゃんの名前の由来」

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満月荘に入ると、マドレーヌちゃんが立っていた。
どうしたの?
 
「真莉亜お姉様。私の名前の由来、知ってます?」
 
名前の由来?
 
「リリア達に聞いても、わからないって。」
 
そりゃそうでしょ。
 
「ああん?なんか言ったか?」
 
ひぃぃぃぃぃぃ!すみませ―ん。
 
「さっきからず―っと、言ってるんだぜ。」
 
ウルフ一郎さんが、あきれてる。
 
「マドレーヌちゃんの名前の由来ねぇ。」
 
テレサさんが、う~んと、うなっている。
 
「知ってるんですか!?」
 
マドレーヌちゃんは、むらさきの目を、ピカピカ光らせた。
テレサさんはにこっと優しくほほえんで、うんっと、うなずいた。
 
「知ってるよ。あの人が、マドレーヌちゃんの名付け親だよ。」
 
テレサさんが指さしたのは・・・・・・。
 
「ジュンブライトお兄様!?」
 
「あぁ?呼んだか?」
 
「ステキです~♡」
 
「ジュンブライト様が、マドレーヌの名付け親だなんて!」
 
「私、尊敬するぅ~♡」
 
「なんのことだか、さっぱり・・・・・・。」
 
「聞きたいな。マドレーヌちゃんの名前の話。」
 
「私も。」
 
ジュンブライトは、あぐらをかいた。
 
「仕方ねぇなぁ。話してやる。実は俺んち、マドレーヌで初めての女の子だったんだ。」
 
えぇ!?
 
「マドレーヌおばちゃんで、初めての女の子だったのl!?」
 
「そうです。」
 
ルクトさん、いきなり前に出ないでください。
 
「王子のご先祖様の家族は全員、男の方でした。」
 
そうなんだぁ。
 
「名前を考えるの、3カ月かかっちまったんだぜ!」
 
3カ月も!?
 
「あぁ。あの時は、大変だったなぁ。」
 
ジュンブライトが、窓の外を見つめた。
 
 

 
 
-8年前ー
 
あっつ!
なんだよこの暑さ!ハンパねぇ!
 
「う、う!」
 
あ。赤ちゃんがいるのを、忘れてた。
サプリングをつけているのって、恥ずかしいなぁ。
 
「あら。王子の子供かい?」
 
ちげーよ。俺のいとこだっ。
 
「あ―。6月に生まれた、王女様ねぇ。お父さんにだっこしてもらって、よかったねぇ。」
 
俺のいとこだって、言うとるやろ―がっ!
ったく、このばーさん、どんだけボケてんだよ。
ん?今、どこに向かっているのかって?ライト・ホームさ。
こーゆー時、あいつらがいねぇと、解決できねぇ。
ガラッ。
 
「ジュンブライトくん、元気にしてた?」
 
声をかけてくれたのは、ソアンのお母さん。
 
「かっわい~赤ん坊だねぇ。ジュンブライトくんの子供かい?」
 
いとこです。
俺はまだ24で、彼女もいない、独身の、ヴァンパイア界一さびしい男です。
 
「・・・・・・。」
 
「ソアン達は、茶の間にいるよ。」
 
おばさん、教えてくれて、サンキュー。
俺は、茶の間に入った。
そこには、アクア、ソアン、リナン、ジャン、テレサ、アルマがいた。
 
「ジュンく~ん♡元気ぃ~?」
 
だきつくなっ!
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
あ―あ。泣き出したんじゃねぇか。
よーちよーち。泣きやめ―。
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
よし、こーなったら・・・・・・。
 
「なにやってんだよ!」
 
「こーすると、こいつ、泣きやむんだよ。」
 
俺は鼻の中に、わりばしを2本入れながら、言った。
 
「イヤーン♡イケメン顔が、もったいなーい!」
 
「おふぃおふぁんの顔、ふぇんふぇすふぇ。」
 
「う!」
 
「本当に泣きやんだ―っ。」
 
「つーか、なんだよ、この赤ちゃん。」
 
「あんたの子供かい?」
 
ちがう。俺のいとこだ。
 
「えぇ!?親子に見えるけど・・・・・・。」
 
「リナン。6月に生まれた、王女様だよ。」
 
「この子が!?」
 
「かっわい~♡」
 
アクアとリナンが、俺のところにやって来て、赤ちゃんをさわった。
 
「う!」
 
「話ってのは、なんなんだ。」
 
あ、それなんだけど・・・・・・。
 
「赤ちゃんの名前を、考えてくれ。」
 
「え~!?」
 
みんなの声が、おみやげ売り場まで響いた。
 
「まだ決めてないのかよ!」
 
あぁ。初めての女の子だからな。
 
「そっか。ジュンくんち、女の子が一人も生まれてこなかったね。」
 
「あう!」
 
赤ちゃんが、リナンのところに行こうとしている。
 
「おいでおいで~。」
 
リナンが手を出すと、赤ちゃんは、リナンにだっこしてもらった。
 
「いい子ねぇ~。見て、アクアちゃん、テレサちゃん。」
 
リナンがテレサとアクアに、赤ちゃんを見せた。
 
「かわいいねぇ。」
 
「私もだっこしたーい!」
 
なにか、いい名前、あるか?
 
「私ぃ、思いついた~♡」
 
お、アクア。言え。
 
「キュートちゃ―ん♡」
 
その瞬間、俺達はお笑い劇のように、コケた。
 
「ふざけた名前はやめろっ!」
 
「だってぇ、かわいいからぁ♡」
 
赤ちゃんは、誰でもかわいいわ。
 
「もっとこう、王女様らしいの、ないか?」
 
「エリザベスはどうかしら。」
 
エリザベス!いいなぁ。
俺は赤ちゃんを、だっこした。
 
「おーい、エリザベスぅ~。お兄ちゃんでちゅよぉ~。」
 
「う!」
 
顔をそむけた―!
 
「気に入らねぇみてぇだなぁ。」
 
アルマ!
 
「これはどうだ。アリー。」
 
アリー・・・・・・。
 
「いいねぇ!」
 
「だろ?」
 
アルマは二カッと笑うと、赤ちゃんをだっこした。
 
「アリー。今日からお前は、アリーだぞぉ。」
 
「う、ゔぅ。」
 
泣きそうになってる・・・・・・。
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
「なんで俺の時だけ、泣くのぉ~!?」
 
お前の顔が、こわいからだよ。
 
「てめぇ、いつか覚えてろ!」
 
「あんた達、名前をつける時、こう思わないかい。」
 
テレサ。
 
「こういう子にしたいとか、こんな風に育って欲しいとか。」
 
あ―。それがあったかぁ。
俺は、礼儀正しい子に、育って欲しいなぁ。
 
「人と話す時、敬語で話してほしいなぁ。」
 
「よし、マヨネーズにしよう!」
 
「意味わからない名前、出すなよっ!」
 
 

 
結局、いい名前など、なかった。
 
「う、う!」
 
「洗礼式に、間に合うのか?」
 
「ジュンブライト達が一生懸命、名前を考えてくれてるんだ。期待しよう。」
 
親父はなにがいいんだよ。
 
「私は、フローラル。」
 
・・・・・・。
 
「不満があるのかっ!」
 
親父が怒り出した。
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
あーあ。親父のせいで、泣き出したんじゃねぇか。
 
「大王様、落ち着いてください。」
 
「・・・・・・すまん。」
 
おばさんは、どんな名前がいいんだよ。
 
「私?私はなんでもいいわ。」
 
「ルアン・・・・・・。」
 
おじさんは、赤ちゃんをだっこしているおばさんを、見つめた。
 
「あう!」
 
「ゆっくり、のんびり、まったりと、考えましょう。」
 
おばさん、どんだけマイペースなんだよ。
 
「ただいまぁ。」
 
リリアが帰って来た!
 
「お帰り。」
 
「赤ちゃんの名前、クラスのみんなで考えてもらったの。」
 
リリアが、通学バックから、白い紙を出した。
 
「ほうほう。みなさん、いっぱい書いてますねぇ。」
 
じいやが、白い紙を次々見ていく。
 
「あ。一個だけ、ふざけているのがあるから。」
 
「え?」
 
『藤井美貴』
 
こいつ、完全的にふざけておる。
 
「さ―てと、赤ちゃ―ん。リリアが来まちたよぉ。」
 
リリアが赤ちゃんをだっこした。
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
「え―っ!?」
 
「まだあなたに、なれてないのね。」
 
「そんな・・・・・・。」
 
ま、いつかなれる日が来るさ。
 
「そうね。ジュンブライト、勉強、教えてくれる?」
 
もっちろん!
俺とリリアは、リリアの部屋に向かった。
 
 
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