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第四十八話 「ウルフ一郎さん、人間になる」

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「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクッソォ~!!」
 
なんで、俺様がキレているのか、知りたいか?
俺様、見ちゃいけないものを見てしまった。
それは・・・・・・あいつと真莉亜ちゃんが、寝室で熱~いキスをしているところ!
あん時、寝室のドアを開かなきゃよかったぜぇ~!
ちっくしょ~!あいつと真莉亜ちゃんがラブラブしているところを見ると、胸がムカムカするぜぇ~!
真莉亜ちゃんは、俺様のものだってのに!
けど、なんで真莉亜ちゃんは、あのクソ天パヤローのことを、好きになったんだ?
それが超~気になるぅ。
あっ、あいつがかっこいいからか?
ふん、そんな簡単な理由で好きになったとか、ありえねぇし。
けど、俺様は今、片想い中だ・・・・・・。
俺様は噴水のところへ行き、サングラスを外して、噴水の水面を見た。
水面には、自分の顔が写っている。
理由はただ一つ。俺様がオオカミだから。
俺様がオオカミじゃなかったら・・・・・・なかったら・・・・・・!
真莉亜ちゃんが、俺様を好きになってたかもしれない!
俺様、オオカミ、卒業します。
卒業して、かっこいい人間になりますっ!
早く人間になりた―い!
 
「アオ―ン!」
 
俺様は空に向かって、遠吠えをした。
 
「おやおや。そこのお兄さん、なに大きな声で吠えてるんだい?」
 
ん?今、おばあさんの声が聞こえたよな?
後ろを振り向くと、黒いロープを着ていて、腰が曲がってて、顔がしわだらけで、白髪のおばあさんが立っていた。
誰だ、このばあさん。見かけねぇ顔だなぁ。
 
「あんたの望み、、叶えてあげるよ。」
 
の、望みって・・・・・・。
 
「あんた、人間になりたいんだろ?」
 
そ、そうだけど・・・・・・。ばあさん、聞いてたのか!?
 
「あたり前だろ。人間になりたい理由も、丸聞こえだよ。」
 
このばあさん、人の心読めるのか!?
ていうか、「早く人間になりた―い!」って言ってたのも聞こえていたとは・・・・・・恥ずかしい。
 
「さて、どういう人間になりたいのかい?」
 
そう聞かれると、俺様はポケットの中から、天パヤローの写真を撮り出し、ばあさんに写真を見せた。
 
「こいつよりかっこいいイケメンになりたい!」
 
「ふ―ん。無理だね。」
 
無理じゃね―し!てか、勝手に決めつけるなっ!
 
「それなら、ちょうどぴったりな道具がある。」
 
ばあさんはそう言って、ロープの中からなにかを取り出し、そして、黒くてわからないものを、俺様の両手にポンッと置いた。
なんだこれ?『人間クリーム』だとぉ?
 
「それを体中に塗ると、あら不思議。たちまち人間になってしまう!」
 
おぉ!まるで、ドラえもんみてぇな道具じゃねぇか!
 
「ただし、一つ言っておく。」
 
なんだ?
 
「このクリームを塗った一日後の満月に、元に戻ってしまう。」
 
えぇ!?明日の満月にぃ!?
そりゃあ、なんと言っても、早すぎるだろ!
 
「じゃあ、このクリーム、使わないか?」
 
ばあさんがクリームを取り上げた。
あぁ、使います!使いますったら、使いますぅ!
俺様は、ぱっとクリームを取った。
 
「では、次分が鳴りたい人間を想像しながら、体中に塗るんだよ。」
 
わ、わかった。
俺様は、ぎゅっと目をつぶりながら、体中にクリームを塗り始めた。
あいつよりかっこいい人間!あいつよりかっこいい人間!あいつよりかっこいい人間!
俺様がクリームを塗り終えた、その時!
ピカ―ッ!
うわ!体が光り出した!
 
「う・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁ!」
 
 

 
「ありがとな、真莉亜。買い出し、手伝ってくれて。」
 
うん。困った時は、お互い様だよ。
 
「道華もありがとな、手伝ってくれて。」
 
「うん!」
 
道華が笑顔でうなずいた、その時。
 
「あれ?」
 
うわぁ!
道華ぁ、いきなり止まらないでよぉ。
 
「あの男の人、見て。」
 
道華が指をさした方を見ると、電信柱によりかかっている、八重歯の男の人がいた。
背は174cmで、中途半端にボタンが開いている、黒い学生服を着ていて、茶髪で、黒いサングラスをかけていて、ポケットに手をつっこんでいる。
 
「こいつ、どっかで見た気がするけど・・・・・・。」
 
まっさかぁ。
いい?道華。知らない人には指をささないの。
 
「はーい。」
 
「さぁ、行こうか。」
 
「うん。」
 
私達が歩き始めて、男の人の前を通り過ぎた、その時。
 
「おい。まてよ。」
 
男の人が、私達を呼び止めた。
 
「なんだよ、お前。」
 
「俺様が、誰だかわかるか?」
 
はぁ?
 
「なに言ってんの、こいつ。」
 
「さぁ、早く帰ろう。じいや達がまっている。」
 
「うん。」
 
「くおうら!まて!」
 
もう、なんんですかあなたは。
 
「この目をみりゃあ、わかるだろ?」
 
男の人が、サングラスを上に上げた。
その夜行性の黄色い目、どっかで見たことある・・・・・・。
あ!
 
「ウルフ一郎さん!?」
 
「やっと、気付いてくれたんだねぇ~♡俺様、うれし~い♡」
 
やっぱり・・・・・・。そのキャラの変わり具合は、ウルフ一郎さんだ。
 
「君のために、人間になったんだよ~ん♡」
 
私のためにぃ?
 
「どう?俺様ぁ。かっこいい~?」
 
「ふ―ん。ブサイクだ。」
 
「ぬわんだとぉ?」
 
ウルフ一郎さんは、ジュンブライトのところに、ずんずんとやって来た。
 
「てめぇ、相変わらず、俺様をなめてんなぁ!」
 
「か、顔が近い・・・・・・。」
 
「ところでウルフ一郎さん、どうやって人間になったんですか?」
 
私がそう聞くと、ウルフ一郎さんは、「フッフッフッフッフ。」と、笑い出した。
 
「いい質問だなぁ、真莉亜ちゃん。それは・・・・・・これだぁ!」
 
ウルフ一郎さんは、ポケットの中から、黒いものを取り出した。
 
「テッテテーン。人間クリーム~。」
 
「今、アンクさんのまね、したな。」
 
「いや、アンクさんのまねというより、ドラえもんのまねだけど。」
 
「このクリームを塗ると、どんな動物でも、人間になれるのだ!」
 
へぇ―。
 
「それ、俺にちょうだい!」
 
ジュンブライトが手を出した。
 
「やだよ。」
 
「なんでさ。」
 
「たとえ、お前がこのクリームを塗ると、耳だけ変わるからさ。ガハハハハハ!」
 
アハハハハ!確かにぃ!
 
「くおうら、笑うなぁ!」
 
ジュンブライトの顔が、りんごみたいに赤くなっている。
よっぽど、くやしいんだね。そんなことを言われると。
 
「あ。そういう話をしている場合じゃねぇ!おい、ヴァンパイア界の王子!」
 
ウルフ一郎さんが、びしっとジュンブライトの方を指さした。
 
「な、なんだよぉ。」
 
「貴様と決着つけてぇんだ!」
 
決着ぅ~!?
それって、まさか・・・・・・。
 
「そう!男と男の勝負だ!」
 
勝負ぅ~!?
ジュンブライト、引き受けるのかなぁ?
ちょっと、そこらへんが、心配・・・・・・。
 
「どっちが真莉亜ちゃんにふさわしい男になるか、白黒ハッキリさせてやる!」
 
私をかけた勝負ですとぉ~!?
 
「だからお前、人間になったのかぁ。」
 
「あったり前だぁ!もし俺様が勝ったら、真莉亜ちゃんは、俺様のものだぁ!」
 
うわぁ。ウルフ一郎さん、燃えてるよぉ。
 
「ジュンブライト!この勝負、引き受けないよね!?」
 
すると、ジュンブライトが、ニッと笑った。
 
「引き受けねぇわけにはいかねぇだろ。」
 
え―っ!?
 
「オオカミヤロー!もしお前が負けたら、俺と真莉亜の交際を続行する!」
 
ジュンブライト・・・・・・。
 
「よろしい。」
 
ウルフ一郎さんがうなずくと、ウルフ一郎さんは道華の前で、しゃがみこんで、顔を上げた。
 
「道華。もし、俺様が勝ったら、俺様のこと、「お父さん。」って、呼んでくれ。」
 
「やだ。」
 
「きっぱり断った―っ!ちっくしょ~!お前を必ず、「お父さん。」って、呼ばせてやるぅ!」
 
 

 
私とジュンブライトはそのことを、テレサさんに話した。
 
「なるほどぉ。ウルフ一郎がねぇ。」
 
「人間になったとは、とても驚きましたぁ。」
 
でしょでしょ~?
 
「それに、あいつが勝ったら、あたしを「お父さん。」って、呼ばせる気なんだよぉ。」
 
「それは、ムチャクチャだねぇ。」
 
「で、ウルフ一郎は?」
 
「今、自分の姿にみとれて、自撮りしている。」
 
うわぁ~。
 
「で、勝負はどうするの?」
 
それがぁ・・・・・・明日の土曜日にするそうです。
 
「明日ぁ!?」
 
「そんな急に!」
 
「なんで明日なんだい。」
 
さぁ。
で、場所は菜の花広場らしいです。
 
「へぇ―。」
 
「で、ジュンブライトは?」
 
「王子は今、お風呂に入っております。」
 
「ふーん。明日、何時に来ればいいの?」
 
一時半らしいです・・・・・・って。
 
「ウルフ一郎さん、あなたが勝負を申しこんだから、日にちと場所と時間は、じぶんっで言ってくださいよぉ。」
 
カシャ、カシャ、カシャッ。
 
「真莉亜ちゃん、ごめん。俺様、自撮りでいそがしいんだ。ん~!自分って、こんなにかっこいんだと、初めて知ったぜ!」
 
だめだ、こりゃ。
すると、マドレーヌちゃんが、ウルフ一郎さんのところへやって来た。
 
「ウルフ一郎お兄様、かっこいいですぅ!」
 
マドレーヌちゃんが、笑顔でそう言うと、ウルフ一郎さんの顔が、真っ赤になった。
 
「ありがとう!マドレーヌ、お前、正直者だなぁ。」
 
ウルフ一郎さんは、マドレーヌちゃんの頭をなでた。
 
「えへへへへ。」
 
「お―い、ギロ、ウルフいちろ~う。お風呂、空いたぞぉ~。」
 
ジュンブライトが、お風呂から上がって来た。
 
「ウルフ一郎、入ろうか。」
 
「あ、まって、ギロ。俺様のケータイ、持っててくれないか?」
 
ウルフ一郎さんが、自分のスマホを、ギロさんに渡した。
 
「はぁ!?なんでだよ!」
 
「自撮りするたび、自分のヌードを撮りたくなってきてねぇ。ギロ、撮ってくれねぇか?」
 
「はいはい。撮ればいーんだろ?お前スッポンポンを。」
 
「やったぁ~!ありがとう、ギロ!よ―し、たくさん撮って、ヌード写真集を作るぞぉ!題名はな、『ありのままの姿を見せびらかすオオカミ』!ガハハハハハ!ギロ、これでいいと思うか?」
 
「はいはい。いいと思いますよ。」
 
「やったぁ~!」
 
二人はそう言いながら、お風呂場へと入った。
この人、人間になって、調子乗ってる・・・・・・。
 
 
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