ぼくらの放課後魔獣戦線【自主怪獣×学園オカルトファンタジー】

彩条あきら

文字の大きさ
1 / 19

第1話:転校生は魔獣ハンター!-月光怪鳥ルナキラス登場-(前編)

しおりを挟む
 命星めいせい小学校五年生、冬木ふゆきはじめの身に起こったことを語ろうとするならば、いささか順序を追って話さなければならない。

 生涯で一度しか味わえないその日々に、彼がどれほど恐ろしく、また不可思議な事件に遭遇したのかということを。
 すべての始まりは九月、二学期に入ってすぐの出来事だった。彼とその友人がいるクラスに、突然ひとりの転校生がやって来たのだ。

「……上城かみじょうひかるです。これからお世話になります」

 転校生というのは女の子、しかも美少女だった。同い年の子たちから見ても瑞々しくツヤのある肌に、クッキリとした眉目、後頭部で揺れるポニーテールと、膝よりも短いハーフパンツ、更には全体としては小柄なのにすらりと伸びた健康的な素足。

 少女はしかし、抑揚のない声で挨拶したことで分かるように、決定的に不愛想だった。
 ニコリともせずに形式上だけ頭を下げると、殆んど特に質問を受け付けるような姿勢もなく、ひとつだけ空いていた窓際の席めがけて真っ直ぐに向かっていき、誰に断るでもなくさっさとそこに座り込んでしまった。

 教室中が流石に少々ザワついていたが、冬木はじめにとっての問題はより一層深刻だった。何しろ上城ひかるが座ったのは他でもない、はじめのすぐ左隣にある席だった。平たく言えばいきなり転校生とペアになってしまったのである。
 はじめは少しの間戸惑っていたが、お隣さんには違いないのだからと、その大きなメガネを押し上げ、意を決して話しかけてみることにした。

「あの、冬木はじめです。よろしく……」
 上城ひかるは一瞬だけこっちを見たが、たちまち不機嫌そうな鋭い目つきになり挨拶を返すどころか秒でそっぽを向いてしまい、そのまま永久に黙り込んでしまった。

 はじめはちょっと泣きたい気分になったが、次第にそうも言っていられなくなった。授業が始まってすぐ、今日来たばかりの転校生は教科書を持ってないのではと気付いたのだ。
 横目でそっと少女の様子をうかがうと、転校からわずか数分足らずで上城ひかるは机の上に突っ伏し、暖かなお日様の光を浴びて堂々と寝こけていた。

 一番近くの自分の耳にだけ届いてくる、すぴすぴという終始穏やかな寝息。それを聞いているうち、はじめはやがて何もかもがどうでも良くなってしまった。彼はそれきり、少女に干渉しようなどと思うのはやめることにした。
 が、こんなのはまだまだ序の口に過ぎなかったのである。

 早くも一時間目が終わり、隣の席に目をやると何故か上城ひかるの姿がそこにない。思わず辺りを見回すが彼女を発見することは出来ず、奇妙な転校生と取り敢えずお近づきになろうと集まって来たクラスメイトたちにその行方を尋ねられても、はじめ自身が一層混乱するばかりだった。

 そうこうしている間にチャイムが鳴り、二時間目が始まると、本当にいつ戻って来たのやら上城ひかるはキチンと席についていて、そしてあっという間に再度のぐっすりお昼寝タイムに突入してしまう。

 今度ばかりははじめも気になって、授業の終わりが近づく頃から上城ひかるの方をなるべく注視していることにした。ところがチャイムと同時に起立、礼を済ませてみるとやっぱり彼女の姿が消え失せている。ほんの一瞬でも目を離そうものなら、上城ひかるは光の速さで行方不明となってしまい、授業の度に戻って来ては眠り、そしてまた消えるのを繰り返す。もはや何のために学校へ来ているのかさっぱり分からない。
 そうした状況が、転校初日から数えてなんともう三日間も続いていた。

「はじめ、上城さんのことをどう思う?」

 三日目の昼休み。教室の掃除をしていると、はじめは出し抜けに話しかけられる。背が高く横幅も広いが、キラキラした目つきが無邪気で穏やかな印象を与える友人、宮内究太郎みやうちきゅうたろうだ。
 はじめは悪い予感を覚えた。究太郎がこういう言い方をしてくる時には、大抵ロクでもない話題が多いのだ。

「隣の席にいて、何か怪しいところとか無かった?」
「怪しいって……そりゃ正直、不思議な子だなぁとは思ってるけど」
「ひょっとしたら、レプティリアンなのかもしれない」
「はァ!?」

 思わず声の裏返ったはじめに、同じく教室を掃除していたクラスのみんなの目線が集中する。はじめは恥ずかしくなって、咄嗟に声を小さくして訊き返した。

「もっかい言って。聞き間違いだよね?」
「レプティリアン、つまりあの子は宇宙から来た爬虫人類なんだよ。人間に紛れて密かに地球侵略のタイミングを狙ってる可能性がある」
「究太郎さ、それ本人の目の前で絶対に言うなよ?」

 はじめはなるべく強めにクギを刺す。転校してきたばかりの女の子が実は宇宙のトカゲ星人なんだ! ……などと言いふらしたら、殆んどイジメの類である。万が一に本人に泣かれでもしたら、むしろこっちが一か月はクラスの女子から陰口のターゲットにされ兼ねない。

「レプティリアンはコミュニケーションが下手なんだって」
 究太郎は尚も食い下がってくる。
「あんな美人なのにさ、周りをにらんでばっかりで誰とも喋らないなんて、不自然じゃないかな? きっと何か秘密があるんだよ」
「分かるけど、だとしてもレプティリアンはやめとけって」

 それに、とはじめは心の中で反論した。
 起きている間はともかく、寝ている時の姿は普通に可愛かったと思う。その子の正体が実はトカゲ姿の侵略宇宙人だなんて、ちょっと信じたくなかったのだ。

 けれどはじめは、この時まだ気が付いていなかった。究太郎の戯言が、当たらずとも遠からずだったことを。上城ひかるが如何なる秘密を抱えて転校してきたのかを。

 そしてはじめは、後に知ることとなった。
 子どもは狙われている。世界にうごめく無数の怪物たちから、今この瞬間も……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...