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○ 僕と家族
◆ 20 幕間4
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「マティアスッ!」
旦那様が叫ばれる気持ちもよくわかる。
私も声を大にして叫びたい。が、今は執事としての職務を全うするべきだ。
一礼をすると、素早く厨房へと向かう。
それにしても、ユールリウス坊っちゃまのなんてお可愛らしい事。
皆様と食べない事実に気がつくと、しょぼんとされて可愛らしい眉毛まで下がってしまう。
一日中見ていても、ストレスは全く感じない、どころか逆にストレスを解消してくれるのは間違いないですね。
執事の職を辞して、ユールリウス坊っちゃまの侍従になりたいぐらいです。
本当にあのお可愛らしさは誰に似たのやら。
「ゴドフリー。プティングの追加です」
厨房に着いた私は、早速料理長のゴドフリーへと指示を出します。
ユールリウス坊っちゃまを待たせるわけはいきませんからね。
「あー? 坊っちゃまのおかわりってわけじゃなさそうだな」
気怠げな感じで言うゴドフリーが、この公爵家の料理長だとはいまだに信じられません。
しかし、ゴドフリーが作り出す料理は、どれも、全て、信じられない程に、美味しいのです。
信じられないほどにっ!!
「お可愛い坊っちゃまがそんな我儘を言うものですか。坊っちゃま以外の方々の分です」
「あー。だと思ったよ」
ニシシッと音が聞こえそうな笑い顔をすると、後ろを向いて「おい」と一言。
ですからゴドフリー。ここは公爵家で……。と、続きそうになる言葉を飲み込みます。
ゴドフリーなんか、いつでも叱れますからね。
今はぷるぷると震えているであろうユールリウス坊っちゃまの為に、一刻も早くプティングを持っていかなければならないのです。
「ほーい。おまっとうさん」
「ゴドフリー!」
ああ、なんて言葉遣い……。
こんな言葉遣いがユールリウス坊っちゃまに聞かれた日には……。
想像するだけで、血の気が引く思いがします。
「なんだよ。そんなにカリカリするなよ。なぁ、……ハニィー」
「っな!」
そっと寄ってきたゴドフリーは、私の耳許で囁く様に言います。
近くに誰も居なかったから、よかったものを……。
その、私の腰を撫で摩る不埒な手は何ですかっ!
わたしは直ぐにその不埒な手を掴むと、放します。
本当はつまみ上げて叩き落としたい心境ですが、料理人の手を痛めつけるわけにはいきませんからね。
「ゴドフリー。私は常々貴方に申しておりますよね? 公私は分けるように、と」
「あー。すまんすまん。つい、な。ここ三日まともに逢えてなかったせいで禁断症状が、さ」
「それは……。私が不甲斐ないせいですね。すみません」
ユールリウス坊っちゃまがお倒れになられてから、特に忙しかった為に家には帰っておりませんでしたので、ゴドフリーが拗ねてしまうのも仕方がないのかもしれません。
ですが──。
「だからと言って、やって良い事と悪い事は分かりますよね?」
「おーこわっ!」
ゴドフリーは大袈裟に私から離れます。
これも彼の中でのコミュニケーションの一種なのでしょう。
私は溜息をひとつ吐くと、プティングを取る為に作業台へと向かいます。
すれ違い様に「今夜はお仕置きですね?」と、流し目をつけゴドフリー囁いて。
「だっ! あー……」
何か喚いているゴドフリーを無視して、素早くプティングをシャリオに載せるとクロッシュを被せます。
さあ、ユールリウス坊っちゃまが私を待ってます!
素早く丁寧に、颯爽と行きますよ!
私の気持ちはもうユールリウス坊っちゃまへと向かってます。
だから、私が去った後の厨房で「あー。本当敵わないよなぁ……。俺ばかりがマティアスを好きすぎてツライ……」なんてゴドフリーが呟いていたなんて知りませんよ?
まあ、ただ「私の方が好きだと思いますけどね?」とその後に私が呟いたのは、偶然だったと思いますけどね?
旦那様が叫ばれる気持ちもよくわかる。
私も声を大にして叫びたい。が、今は執事としての職務を全うするべきだ。
一礼をすると、素早く厨房へと向かう。
それにしても、ユールリウス坊っちゃまのなんてお可愛らしい事。
皆様と食べない事実に気がつくと、しょぼんとされて可愛らしい眉毛まで下がってしまう。
一日中見ていても、ストレスは全く感じない、どころか逆にストレスを解消してくれるのは間違いないですね。
執事の職を辞して、ユールリウス坊っちゃまの侍従になりたいぐらいです。
本当にあのお可愛らしさは誰に似たのやら。
「ゴドフリー。プティングの追加です」
厨房に着いた私は、早速料理長のゴドフリーへと指示を出します。
ユールリウス坊っちゃまを待たせるわけはいきませんからね。
「あー? 坊っちゃまのおかわりってわけじゃなさそうだな」
気怠げな感じで言うゴドフリーが、この公爵家の料理長だとはいまだに信じられません。
しかし、ゴドフリーが作り出す料理は、どれも、全て、信じられない程に、美味しいのです。
信じられないほどにっ!!
「お可愛い坊っちゃまがそんな我儘を言うものですか。坊っちゃま以外の方々の分です」
「あー。だと思ったよ」
ニシシッと音が聞こえそうな笑い顔をすると、後ろを向いて「おい」と一言。
ですからゴドフリー。ここは公爵家で……。と、続きそうになる言葉を飲み込みます。
ゴドフリーなんか、いつでも叱れますからね。
今はぷるぷると震えているであろうユールリウス坊っちゃまの為に、一刻も早くプティングを持っていかなければならないのです。
「ほーい。おまっとうさん」
「ゴドフリー!」
ああ、なんて言葉遣い……。
こんな言葉遣いがユールリウス坊っちゃまに聞かれた日には……。
想像するだけで、血の気が引く思いがします。
「なんだよ。そんなにカリカリするなよ。なぁ、……ハニィー」
「っな!」
そっと寄ってきたゴドフリーは、私の耳許で囁く様に言います。
近くに誰も居なかったから、よかったものを……。
その、私の腰を撫で摩る不埒な手は何ですかっ!
わたしは直ぐにその不埒な手を掴むと、放します。
本当はつまみ上げて叩き落としたい心境ですが、料理人の手を痛めつけるわけにはいきませんからね。
「ゴドフリー。私は常々貴方に申しておりますよね? 公私は分けるように、と」
「あー。すまんすまん。つい、な。ここ三日まともに逢えてなかったせいで禁断症状が、さ」
「それは……。私が不甲斐ないせいですね。すみません」
ユールリウス坊っちゃまがお倒れになられてから、特に忙しかった為に家には帰っておりませんでしたので、ゴドフリーが拗ねてしまうのも仕方がないのかもしれません。
ですが──。
「だからと言って、やって良い事と悪い事は分かりますよね?」
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素早く丁寧に、颯爽と行きますよ!
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だから、私が去った後の厨房で「あー。本当敵わないよなぁ……。俺ばかりがマティアスを好きすぎてツライ……」なんてゴドフリーが呟いていたなんて知りませんよ?
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