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○僕とお家訪問

◆74

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「本当に。大、遅刻です」
「うえぇ……。すみませんっ! あの、でもですね……」

 大声に対してマティアスのお声、冷え冷え?ですね。

「あの状態のマティアス様に口答えするとか、ある意味勇者ね」
『空気読めなさすぎ……』

 エリーナとぴょん太が、小声でお話ししながら仲良くぷるぷるしてます。
ボクも一緒にぷるぷるしてもいいでしょうか?

「ほぅ? 言い訳、ですか?」
「ひぇっ!?」
『ひょっ!』
「いや、えっと、あの……。
 あっ! ユールリウス坊っちゃまに伝言を預かっておりましてっ!」

 う?
僕に伝言、ですか?
大声の人にウルウルお目々で見つめられてますけど……。

「だれでしゅか?」
「え……?」

 僕、まだお名前聞いてません。
知らない人とお話しはしてはいけませんからね。
ちゃんとお約束は守ってますよ!

「えっ? えっ……?
 もしかして俺の事覚えてないのですか!?
 一緒にお散歩したじゃないですかっ!」
「おしゃんぽ……?」
「ほらほらっ! お空をばびゅーん! ですよ!」

 お空をばびゅーん……?
お空?
ふぉっ!?

「カチョでしゅか!?」
「そうです、そうですよー!」

 確かにお空を飛びましたね!
あの日はなんか色々あった気がして忘れてました……。
ごめんなさいです。

『ユーリ様。お空をばびゅーんって何ですか?』

 ぴょん太がカショウをムーッ!と見ながら聞いてきました。
ムーッ!てしててもぴょん太はかわいいですね。でも、お空をばびゅーんは秘密なのですよ。
だから僕のお口はむすむすさんになります。

「ぴょん太、僕のお口さんはむしゅむしゅさんになりまちた」
『えっ?』
「坊っちゃま、ご歓談中申し訳ございませんが、そろそろお時間が……」

 マティアスがごめんねって感じで言ってきました。
そうですね、ありさんの都合もありますよね。
お話をやめてそろそろありさんのお家に行かなくてはいけません。

「カショウ。伝言を坊っちゃまに伝えなさい」

 そうですそうです。伝言ありましたね。

「あっ、はいっ!
 ルークディアス様とアルティシア様から『怪我ひとつする事なく帰ってきて』との事です」
「あいっ! 分かりまちた!」

 にい様ねえ様、ありがとうございます!
ありさんのお家に行くだけなので、危険はないですが、気をつけて行ってきますね!

「マチアシュ。にいしゃまとねえしゃまに怪我なく帰りましゅと伝えてくだしゃい」
「かしこまりました」

 うむうむ。
これで問題なくありさんのお家に行けますね!

「カショウ。帰ってきましたら話がありますので、忘れずに」
「は、はいぃ……」

 う?
さっきまで元気だったカショウが一気にシュン……ってなりましたよ?

「カチョ?」
「坊っちゃま、ありさんのご自宅はお分かりですか?」

 カショウの事は気になりましたが、マティアスに言われた事で気持ちを切り替えます。
これ以上ありさんをお待たせするわけにはいけませんからね。

「僕、知らないでしゅけど、大丈夫でしゅよ!」
『ユーリ様?』

 ぴょん太が心配そうに僕を見ますが、心配しなくても大丈夫ですよ!
ちゃんとありさんとはお話ししてますからね。

「ありさーん! ユーリでしゅー! 準備出来まちたー! 案内おねがいちまーしゅ!」

 僕の大きな声がお庭に響き渡ります。
なんか「え?」って言う声が幾つか聞こえた気がしましたが、気のせいですね、きっと。うむうむ。

「えっと、あのー坊っちゃま? まさかの案内待ち、ですか?」

 さっきまでシュン……ってなってたカショウが恐る恐る聞いてきます。
そうですよ?ありさんのお家を知りませんからね。案内がないと行けません。

「案内、来ますか……?」
「来まちゅ。お約束してましゅよ」
『こら新人っ! ユーリ様の言葉を疑うとは何様だっ!』
「そうよそうよ! 何様よっ!」
「ぴょん太とエリーナは静かにまちゅでしゅよ」

 めっ!て僕が言うと、何故かヒョッ!となった二人は静かに待つ姿勢になりました。
だって煩かったら、ありさんが来にくいかもしれませんからね。
それに恥ずかしがり屋さんなので、人前に出るのはあまり得意じゃないそうです。

 そうして暫く待っていると、遠くでガサガサと何かを揺らしている音がしてきました。

「何の音でしょう?」
「カショウ」
「勿論、分かってます」

 カショウは僕を持ち上げると、抱っこをしました。
う?何故抱っこが必要なのでしょう?
 ガサガサ音は段々と近づいて来ているのか、大きくなってきてます。
そうして待っていると、木々の間から黒い何かがにゅっ!と現れました。

「カショウッ!」
「はいっ!」

 叫ぶマティアスに瞬時に返事をするとカショウは走り出しました。
──僕のお家に向かって。
そして続いてぴょん太とエリーナが追ってきます。
 なにか、なにかおかしいです。

「まちゅでしゅっ! 止まるでしゅっ! 案内でしゅ!
 ありさんの案内でしゅ!」

 僕は、自分が出せる一番大きな声でみんなに聞こえるように叫びました。
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