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40話
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「私とルーファン様は」
オリバーと視線を合わすのが怖い。
今から告げる言葉で私は終止符を打つ。
オリバーに対する恋心を。
オリバー……。
初めて紗雪の意識が目覚めた5歳の頃から私はオリバーに恋をしていた。
今になってそうと思える。
優しい優しいオリバー。
走馬灯の様に駆け巡る幼い頃の記憶。
アルフォンソもオリバーもエレーヌを誰よりも大切にしていて。
彼らの妹である事が嬉しくて。
幸せで……。
だけど何時からだろう。
オリバーに対して兄以上の感情に目覚めたのは。
オリバーが声変わりをした頃からだろうか?
成長を遂げる段階で少年から青年へと変化していく姿を垣間見てからだろうか?
それとも。
オリバーの瞳に映る己がエレーヌでは無く紗雪で有れば良いのにと思い始めた感情が引き金であったのだろうか?
答えを見出そうとしても出る訳が無い。
だって好きになる瞬間なんて気付く事なんて無いのだから。
自然と心が奪われていた。
柔らかく真綿に包む様な優しい思いに。
ふっと微笑む顔が、少し俯きながら私の話に聞き入る姿が。
一つ一つの動作が私の心にすんなりと入り込んだ。
(貴方が、好き……)
自然と涙が零れていく。
ぽつんぽつんと落ちていく。
「貴方に心ときめいて」の世界でありながら、でも全く一緒だとは言い難い。
本来のエレーヌは唯のモブキャラ。
そして久保紗雪も唯のモブな人生。
そんな私が脚光を浴びてヒロインの立場に据えられているけど。
心の何処かで望んでいたのかも知れないけど、でも、本当の私が望むのは好きな人と結ばれる事。
互いを慈しみの愛を語り誰よりも大切な存在だと思われて。
その相手が、私にとって誰かと言えば……。
「エレーヌ」
「駄目……」
「エレーヌ……」
それ以上、私の、ううん、エレーヌの名を呼ばないで。
押し留めている感情が出てしまう。
私を紗雪だと呼んで。
一柳さんと同じ声を持ちながら、でも、一柳さんとは違う。
貴方に、オリバー。
貴方に名を呼ばれたい。
紗雪、と。
「駄目だ、エレーヌ。
お前を誰にも渡さない」
悲痛な声で耳元で囁き私を抱き締めている。
強く、強く……。
「オリバー、兄様……」
「大切なお前を、誰にも渡したく、無い……」
震える手が彷徨う。
抱き締めるオリバーの背に手を回そうとしている己を律している。
オリバーの感情は何を訴えているの?
妹を、溺愛している妹を離したくは無いから?
それとも、エレーヌを一人の女性をしての事、なの?
「兄様……」
「……」
「にい、さま……」
言葉が出ない。
一体、何が起こっているの?
唇が熱い。
柔らかい感触。
え……。
どうして……。
「う、ん」
息が出来ない。
こんな事って。
どうしてなの?
何故、オリバーが私にキスしているの。
押し付ける唇の熱さに私の動揺が大きくなっていく。
呆然とした私の緩んだ唇からオリバーの舌が入り。
「はあ、ん」
互いの舌が絡む音がやけにリアルに聞こえる。
こんな事あっては駄目なのに。
オリバーと私は、兄妹なのに。
だけど私は心の中で喜んでいる。
オリバーに求められている事に。
「エレーヌ……」
時間が止まればいい。
今、この時を永遠に止める事が出来ればいいのに。
「オリバー……」
呟いていた、オリバーの名を。
エレーヌとしてでは無く、紗雪として。
どんな目で私はオリバーを見ているのだろう。
そしてオリバーはどんな目で私を見つめているの。
涙で視界が歪んでオリバーの表情が分からない。
だけどこれだけは言える。
もう、エレーヌとしてオリバーの側には居られない。
私は、ううん、オリバーとエレーヌは超えてはならない境界線を超えてしまった……。
オリバーと視線を合わすのが怖い。
今から告げる言葉で私は終止符を打つ。
オリバーに対する恋心を。
オリバー……。
初めて紗雪の意識が目覚めた5歳の頃から私はオリバーに恋をしていた。
今になってそうと思える。
優しい優しいオリバー。
走馬灯の様に駆け巡る幼い頃の記憶。
アルフォンソもオリバーもエレーヌを誰よりも大切にしていて。
彼らの妹である事が嬉しくて。
幸せで……。
だけど何時からだろう。
オリバーに対して兄以上の感情に目覚めたのは。
オリバーが声変わりをした頃からだろうか?
成長を遂げる段階で少年から青年へと変化していく姿を垣間見てからだろうか?
それとも。
オリバーの瞳に映る己がエレーヌでは無く紗雪で有れば良いのにと思い始めた感情が引き金であったのだろうか?
答えを見出そうとしても出る訳が無い。
だって好きになる瞬間なんて気付く事なんて無いのだから。
自然と心が奪われていた。
柔らかく真綿に包む様な優しい思いに。
ふっと微笑む顔が、少し俯きながら私の話に聞き入る姿が。
一つ一つの動作が私の心にすんなりと入り込んだ。
(貴方が、好き……)
自然と涙が零れていく。
ぽつんぽつんと落ちていく。
「貴方に心ときめいて」の世界でありながら、でも全く一緒だとは言い難い。
本来のエレーヌは唯のモブキャラ。
そして久保紗雪も唯のモブな人生。
そんな私が脚光を浴びてヒロインの立場に据えられているけど。
心の何処かで望んでいたのかも知れないけど、でも、本当の私が望むのは好きな人と結ばれる事。
互いを慈しみの愛を語り誰よりも大切な存在だと思われて。
その相手が、私にとって誰かと言えば……。
「エレーヌ」
「駄目……」
「エレーヌ……」
それ以上、私の、ううん、エレーヌの名を呼ばないで。
押し留めている感情が出てしまう。
私を紗雪だと呼んで。
一柳さんと同じ声を持ちながら、でも、一柳さんとは違う。
貴方に、オリバー。
貴方に名を呼ばれたい。
紗雪、と。
「駄目だ、エレーヌ。
お前を誰にも渡さない」
悲痛な声で耳元で囁き私を抱き締めている。
強く、強く……。
「オリバー、兄様……」
「大切なお前を、誰にも渡したく、無い……」
震える手が彷徨う。
抱き締めるオリバーの背に手を回そうとしている己を律している。
オリバーの感情は何を訴えているの?
妹を、溺愛している妹を離したくは無いから?
それとも、エレーヌを一人の女性をしての事、なの?
「兄様……」
「……」
「にい、さま……」
言葉が出ない。
一体、何が起こっているの?
唇が熱い。
柔らかい感触。
え……。
どうして……。
「う、ん」
息が出来ない。
こんな事って。
どうしてなの?
何故、オリバーが私にキスしているの。
押し付ける唇の熱さに私の動揺が大きくなっていく。
呆然とした私の緩んだ唇からオリバーの舌が入り。
「はあ、ん」
互いの舌が絡む音がやけにリアルに聞こえる。
こんな事あっては駄目なのに。
オリバーと私は、兄妹なのに。
だけど私は心の中で喜んでいる。
オリバーに求められている事に。
「エレーヌ……」
時間が止まればいい。
今、この時を永遠に止める事が出来ればいいのに。
「オリバー……」
呟いていた、オリバーの名を。
エレーヌとしてでは無く、紗雪として。
どんな目で私はオリバーを見ているのだろう。
そしてオリバーはどんな目で私を見つめているの。
涙で視界が歪んでオリバーの表情が分からない。
だけどこれだけは言える。
もう、エレーヌとしてオリバーの側には居られない。
私は、ううん、オリバーとエレーヌは超えてはならない境界線を超えてしまった……。
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