「貴方に心ときめいて」

華南

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閑話18

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もう何度、深く祥吾さんに愛されたか解らない。

気付くと何時も祥吾さんに愛撫されていて。

「うん、祥吾さん……」

「気付いたか?さゆ」

「う、ん」

子供の様に舌ったらずで答えてしまう。
微睡んでいた思考は私に上手く言葉を紡がせない。
そんな私に祥吾さんは、くすり、と笑う。

この頃、私の名を紗雪では無く、と祥吾さんは言う。
子供の頃、紗雪と上手く言えなくて、「さゆ」と自分の事を言っていた。
でも、何故、祥吾さんがそう私を呼ぶの?

「何を考えている?」

「……」

「俺に抱かれていて、他の事を考える余裕があるのか、さゆは」

「そ、そんな所で話さない、で……」

花芯を含みながら話かけられる。
強烈な快感に脳髄を侵される。
熱い舌と口で食み強く吸う。
その度に端なく流れる愛液は留める事を知らず。

(いやだ、こんな中途半端な煽られるなんて……。
中に欲しいのに。
祥吾さんが欲しいのに、どうして)

自然と生理的な涙を流している。
じわじわと快楽に落とす癖に直接的な刺激を与えてくれない。

「しょおご、さああん……」

祥吾さんの髪を掴みながら悶えてしまう。

「こんなの、いやあ……」

「こんなのって、何を?」

にやり、と口角を上げ舌で花芯を舐める。
腰が揺れトロリと流れる愛液。
解っている癖に私に言わせようとする祥吾さんはいつになくイジワルだ。

「私の中を祥吾さんで、メチャクチャにして……」

こんな恥ずかしい言葉をすげなく言ってしまう。

「さゆ」

「欲しいのお。
祥吾さんが欲しくて堪らないの……」

顔を上げて身体を起こす祥吾に紗雪は、啜り泣きながら祥吾の首に腕を回す。

「さゆ」

向かいあい互いの唇を求める。
夢中になって自ら舌を絡める紗雪に祥吾は愛おしさが込み上がる。
淫らに自分を求める紗雪。
今の紗雪には自分しか見えていない。
自分が与える快楽の虜だ。

祥吾にとって紗雪は神聖な存在でありながらも、唯一、女として欲しい存在でもある。

(もっと俺を求めろ。
お前にとって俺が全てだと心にも身体にも刻ませてやる)

今はまだ紗雪の心に己に対する愛は芽生えてはいない。
だがいつの日か気付く事になる。

紗雪が愛する男は祥吾、ただ一人だと。


***

(あれ?
私、いつの間に?)

隣に祥吾が居ない。
シーツに体温の名残りを感じる。
先程まで側で眠っていたに違いない。

(また、気を失うまで抱かれていた。
何処までも激しく身体の芯を蕩けさせるくらいに隅々まで愛されて……)

最後に浮かんだ言葉に頬が赤く染まる。
自然と鏡に映る自分に紗雪は全身を赤く染め上げる。

(な、何、こ、このキスマークの痕。
こ、こんなに付けられて、な、何をしょ、祥吾さんは考えて……)

とろり、と流れる愛液。
何度も精を受け入れて。

避妊は考えていない。
もしかしたら、妊娠をしている可能性だってある。

子供ごと人生を欲しいと請われて流される様に祥吾さんを受け入れて。
自然と彼が与える愛撫に身を悶えさせてさせている。

耳元で名を囁かれ、愛を告げられて。
真摯に自分を求められていたら心が揺れ動いてしまう。

溺愛と言える程、深い愛を捧げられている。
平凡な、平凡以下の本当にモブとしか思えない自分に、ここまでの想いを抱かれたら拒み切れない。
眉目秀麗で、財力があって、そして地位のある。
そんな彼に愛されている。
女として最高だと思う。

多分、結婚を視野にと考えているのだろう。
子供ごと人生を欲しいって。

(一気に現実が……。
そ、そんな、馬鹿な事ってあり得ないと思っている。
でも……)

一時の過ちであってこんな事になっていると考える方が自然だ。
身分も、育ちも家柄も、そして生きてきた環境も違う。

そんな彼が自分を愛していると言うのは、今だけの事。
周りが許さないだろう。
メリットも無い私との結婚なんて。
非現実とか思えない。

(それが当たり前。
今は夢を見ているだけ。
ふふふ、正にゲームと同じ事が現実に起きて体験している……。
こんな事、これから先、あるとは到底、思えない)


ぽと。

シーツに染みが出来る。
自然と涙を流している。

(あ、あれ?
な、なんで泣いているの?
今、思い浮かんだ事にどうして涙が)

止まらない。
何が悲しいのだろう。
何で涙が止まらないのだろう。

(ああ、私)

こんな風に深く愛される事が無かったから。
祥吾さんに愛された事だけが、今までの私の人生の中で唯一の……。

(胸が苦しい。
好きなっては駄目なのに。
本気で好きになったら、傷付いてしまう。
今だけの事なのに。
永遠に続く想いでは無いのに。
なのに祥吾さんを愛してしまったら……)

私はきっと自分を見失ってしまう。

(離れないといけない。
これ以上、側にいたらきっと離れられない。
求めてしまう。
彼が欲しいと。
貪欲なまでに愛されたいと)

夢なら醒めないでって。
ずっと愛されたいと。

(ああ、私は……)

気付いてしまった。
私、祥吾さんの事を好きになっている。
心が奪われている。

彼に恋をしている……。
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