Machine& Mercenary

タクティカルおじさん

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Mission3-3

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ちょくちょく時間取って書いてたけど大分遅れてしまいました。
申し訳ない。



******************************************************************




水路を抜け、浄水槽へと続く廊下を進む。
直線通路だけどダストボックスや用務道具を格納しておく小部屋が見られるから注意が必要だ。

「私が前に出る」
「オッケー、それじゃ中距離対応は任せるね」

あっさりと了承されて私の後ろに小松菜さんが回る。
正直助かる。
この距離だと相手が銃で武装していた場合小松菜さんが接近するまでに余計なダメージを負う可能性が高い。
そういう合理的な判断と共に、今はモヤモヤした内心を誤魔化す為に動きたいという私的な理由もあったり。
前進、警戒、姿勢維持、敵の行動パターンにおける射撃位置の確保等々、気にしてる程暇でなくなると思うからね。
こういうのは今は忘れておきたい。

手がブレない様に前進速度を緩め、カバーポイントに銃口を即座に向けられるよう集中する。
こういう遮蔽物の無い直線通路が一番怖い。
隠れられない状況で撃たれると逃げようが無い。
注意深く進み、最初の遮蔽物であるダストボックスに到達。
胸元と同じくらいの高さがある金属製の箱だ。
私の体を隠す程度なら問題はない。

「それじゃ次は私が先頭ね」
「了解、カバーする」

体半分を隠し、乗り出してダストボックスをバイポッド代わりに射撃姿勢を安定させる。
更にセミに切り替え、ドットサイトの輝度を下げて点による射撃を行える様に調整しておく。
サイレンサーでバレルサイズを誤魔化せるからこの距離くらいならマークスマンライフルとして機能するのだ。
出来れば顔を出さないで欲しいけど・・・・・・

(あっ、開いた)

奥の扉が開き始めた。
半身しか見えないがデジタルの迷彩服に黒いプレートキャリア。
明らかに敵の機動部隊だね、撃とう。
敵の右肩が露わになった所で肩関節を狙撃。
肩を庇いながら倒れる様に引っ込んでいった。
それと同時に小松菜さんが走り出した。
同時に私も前進。
カバーに出たであろう二人目の敵兵に射撃してサイティング出来ない様に牽制する。
そしてその間に全力疾走していた小松菜さんが怯んだ敵兵に飛び込んだ。
奥から響く銃声と悲鳴。
私も飛び込む様に扉を抜ける。

「化け物!」

小松菜さんが銃撃でダメージを受けるのが見えた。
しかし怯みもせず敵兵の頭を掴み、壁に叩き付けた。
オブジェクト破壊によって壁が陥没し、敵兵の頭後ろ半分も赤いプログラムの塊に変わってしまう。
まだ彼女の言う通りなら発展途上のはずだけど、このままレベルが上がり続けたら今の兵士はどうなるだろう。
・・・・・・いや、よそう。
グロにある程度耐性があってもキツイ想像になりそうだし。
敵兵はツーマンセルだったのか他には見当たらない。
近付いてる割には防御が薄いような気がする。
陽動が効いてるだけ?
何か違和感を感じる。

「ダメージは大丈夫?」

違和感を抱えながらも、銃撃を受けたと思われる小松菜さんの様子を訪ねる。
小松菜さんは振り向いて笑顔で言った。

「ダメージ耐性成長させて良かったわ!」

スキルだろうか。
この様子なら大したダメージは受けていないのだろう。
それと同時に現在の彼女には5mm弾は通用しないのが確認出来た。
全く効かないという事は無さそうだが、少なくとも手持ちの拳銃では傷一つ付かなそうだ。

ルートを再確認しておく。
違和感がどうしても拭えないからだ。
この辺自体は質素な造りだ。
エレベーターホールには休憩用のベンチや販売機が配置されているが、無骨なコンクリート造りで飾り気もない。
幾つか部屋が点在しているが、構造データを参考にするなら仮眠室か資料倉庫等に使用されているのが予想できる。
点検通路への分岐も確認できるが用があるのはそこじゃない。
階層移動用のエレベーターがある物の、恐らく張られていると見て間違いない。
ただこの警備の薄さから人数自体は大した事ないだろうと思われる。
何せ行動範囲の限られるエレベーター内であれば、少数であっても分隊支援火器があれば抑え込む事は可能だ。
だとすれば必然的に侵攻箇所は両脇の非常用階段なんだけど・・・・・・

「小松菜さん」
「なぁに?」
「上層に移動する為の階段が二つあるんだけど、目標から遠い所と近い所、どっちがいい?」

彼女は唇の下に指先を当てて少し唸ると、自らの考えを口にする。

「エレベーターじゃダメ?」

そう言って自販機を指差し、それをそのままエレベーターの方にツーっと滑らせる。
その仕草の意味を理解したけど、まさかそんな事も出来るの?
出来れば楽になりそうだけど。

「やってみる価値はあるかもね」
「よっしゃ、それじゃ扉開けてー!」

私は指示通りにエレベーターまで進み、開閉ボタンを押し込む。
開いた瞬間に素早くクリアリングして安全確認。
そして小松菜さんの方を見てみればーー

「ふんぬっ!」

女性らしからぬ声掛けで自販機を持ち上げている。
力自慢も真っ青な光景だ。
線の細い美女が、その体の二倍も三倍も重そうな自販機を持ち上げているのだから。
彼女はそのまま歩いて自販機をエレベーターの真ん中に設置する。
引き千切られた電源コードが寂しく垂れ下がるそのサマは実にシュールだ。

「準備完了!それじゃ行きましょうか」
「・・・・・・そうだね」

振り向き何事も無かった様に笑い掛ける姿に若干引いたけど何とか顔に出さずに堪えた。
今までにも非現実的な出来事に遭遇しているけど、まだまだ耐性が足りてないらしい。
銃握って戦闘しているだけでも十分非現実的なのだけど、こうもさも当然の様に連発されるとはね。
サイボーグ、恐るべし。

それはそれとしてエレベーターに乗り込み、目標地点のB2Fのボタンを押す。
扉が閉まると自販機の裏側に隠れる。
私一人では考えられなかった状況だ。
直接自販機を持ち込んで盾にするなんて思い付きもしなかったよ
それを思うと私は現実での考え方に凝り固まっていたんだと実感する。

(こういう世界観だと、ある程度自分の世界を広げた方が良いのかも)

エレベーターから到着を告げるチャイムが鳴った。
背を預け合って身を潜め、来るべき攻撃に備える。
そして扉が半分まで開いた時ーー

ーー機銃掃射によるオーケストラが始まった。

激しい着弾音が耳を掻き回す。
見る見るうちに凹みひしゃげていく自販機。
5.56mmだからなのか、それともこの自販機が丈夫なのかは分からないが今の所貫通は無い。

(正面、十時、十一時、二時・・・・・・)

だから落ち着いて射線を把握出来る。
土煙や埃で正確な位置こそ認識出来ないが、弾着位置や銃声から大凡の見当はつく。

「射撃終了と同時に閃光投擲、小松菜さん」
「分かった、左側は任せて」

続く銃撃の中、小松菜さんとコンタクトを取る。
察した彼女が頷くのを見届け、その時が来るのを待った。
射撃開始から二十九秒。
三十・・・・・・
三十五・・・・・・

ーー音が止まった。

(今ッ!)

ピンを抜いて即座にフラッシュとコンカッションを投げ込む。
甲高い破裂音と共に小松菜さんが飛び出した。
私もそれに続く様に飛び出して正面の機銃手に射撃。

「ぐあっ!?」

即死ではないが命中。
エレベーターの扉付近まで移動して右手側の機銃手に射撃した。
誰かが倒れる音が聞こえた。
間違いなく手応えを感じた。

「そりゃ!」

小松菜さんの跳躍からのフライングゲンコ。
敵のヘルメットが割れる音が聞こえた。
左側は大丈夫そうだ。
私はそれを聞き届けながら最初に撃った相手まで接近してトドメを刺す。
案の定倒れ込んだだけだったようだ。
それを塹壕正面から見下ろしてると、後ろで地面に誰かが落ちる音が聞こえたので振り返る。

「チクショウ!」

丁度立ち上がった敵兵が拳銃を抜いている場面だった。
向いてるのは小松菜さんが向かった方向。
察した私は落ち着いて敵兵の頭部に銃口を向け、撃鉄を落とした。
弾丸は狙った位置に飛び、当然の結果であるように倒れる。
少しの間倒れた敵兵を眺めていると、小松菜さんが片手を上げながら歩いて戻ってきた。

「いやーゴメンね。ブッ飛ばしたら思いの外飛んじゃって」
「小松菜さんがダメージ受けてないならそれでいいよ」

残弾が心許ないのでタクティカルロードしておく。
小松菜さんの役割はなんとなく理解しつつある。
確か回避盾だったかな。
機動力で翻弄してヘイトを買い、高い攻撃力で敵のHPを奪う。
それを繰り返して後衛がターゲットにならないように守る役割。
サイボーグである彼女には種族的にも向いてると思う。
そして面白いのは敵からの攻撃を受けても人間より頑丈だから、実際のそれよりも落ち難い。
だからこっちも安心して後方支援に徹する事が出来る。
あくまで通用するのはサイズが同程度の相手だけとはいえ、歩兵の私としては有難い。

防衛陣地の横を通り抜け、目的地に向けて進軍を再開する。
中央を抜ければグッと近付ける。
小松菜さんのお陰で理想的なルート取りが出来た訳だ。
ホール左右からの増援に警戒しつつ、小松菜さんを先導。
通路が四つに枝分かれしてるのだけど浄水槽へ繋がるのは一つだけ。
右寄り真ん中。
ここ以外は別の施設へと繋がるのでタイムロスになる。
事前に構造を把握していないと迷子になるのは間違いない。
それと本来はこの入口の段階で探知機に掛けられるけど当然の様に機能していない。
テロリストが装備や人員の移動をスムーズに行えるように切ってあるのだろう。
つまりこの先に武装した敵が待っているという事。
厄介な話だが、心構えが出来る分マシなのかもしれない。

通路は一部がスロープになっていて高低差があるが、遮蔽物らしい遮蔽物は見当たらない。
敵に挟撃されたら一溜りもない。
走り抜けた方が良いだろう。

私はハンドサインで追従するように指示。
小松菜さんが頷いたのを見て走り出す。
トライグリッドの搭乗条件を満たす為に上昇させた身体能力が、普段よりもずっと速く私を前へ前へと押し出していく。
あっという間に浄水槽管理エリアまで爆進し、その入口付近で減速。
再びハンドサインで止まるように伝えてゆっくりと前進再開。

(人の気配がする・・・・・・)

勿論、私にレーダーなんてのは搭載されてない。
だが壁の一部に目新しい手形、目を凝らさないと分からないけど薄らと足跡も見える。
最近だ、誰か通ったんだ。
しかし一般的に見られる軍用ブーツや、ましてや民間用に販売されている靴のソールとも形状が一致しない。
大抵の靴には滑り止めの溝が掘られているが、この足跡にはそれが存在しない。
それに手形も変だ。
確かに手を当てたであろう跡があるのに、そこには指紋も無ければ指先が鋭利過ぎる。

「小松菜さん注意して、特殊装備、若しくは人間以外の何かがいる」
「分かった、ユキちゃんも気を付けて」

足音を極力殺し、周囲の物音に耳を傾け、視線は常に天井含む前方視界範囲全てを情報として取り込んでいく。
人間じゃない相手は初めてじゃないけど、まだ慣れたもんじゃない。
緊張で高鳴る鼓動を無理矢理抑え込むように息を吐き、機能停止した除染エリアを抜けていく。

そして浄水槽に着いた瞬間ーー

「やれ」

静かな声を聞き取って咄嗟に頭を下げた。
通り抜けたのは一発の銃弾。
その銃弾は私を通り過ぎ、背後にあった特殊合金製であろう壁をぶち抜いた。

「いっ!?」

素早く腰程の高さの落下防止の縁に飛び込んだ。
慌てて体勢を立て直し急ぎ気味に端まで移動してニーリング。
するとすぐ背後で破裂音。
背後の一枚が抜かれていた。

(あっぶない・・・・・・!)

あれで安心してたら私の上半身は下半身と泣き別れしていただろう。
対物ライフルだろうか。
複数所持している訳じゃないみたいだが、遮蔽物が意味を成さないのは厄介だ。
出来ればあれを始末したい。
ただあれはライフル弾でどうにか出来る相手じゃない。
ゴツい装甲を纏い、重量のある対物ライフルを単体で運用できる筋力補助能力。
強化外骨格という奴か。
私一人だと厳しい戦いになるだろうから味方は必須だ。
でも小松菜さんは?
後ろから付いてきていたはず。
しかしその姿は周辺に無い、こっちまではまだ来ていないのか。
撃ち抜かれてデスしてたらどうしようこれ。

するとMTTに通信が入る。
音量を絞って音声通信を入れた。

『ユキちゃん無事?』
「大丈夫、ダメージは受けてない。でもアレ邪魔だし仕留めるね」
『なら牽制お願い、その隙に飛び込むわ』
「了解、通信終了後十秒で射撃する」

射線は把握している。
二発もあの距離で撃ってくれたなら特定も容易い。
通信を切ってカウント開始。
ライフルグレネードを装填、敵がいる方向が正面になるように位置を調整。
3、2、1ーー

(今!)

立ち上がってトリガー。
即座に倒れ込むように射線から退避。
爆発音と同時に弾丸が肩を掠め、パーカーの生地を引き裂いていった。
間一髪だ。
でもまだ止まれない。
次は倒れ込んだ位置に向けて射撃するはずだから寝てられない。
体を起こしてローレディで前進。
複数ある水槽の縁に沿うように退避する。
同時に小松菜さんが前に出たのが見えた。
まるで獣の様に姿勢を低くして信じられない速度で肉薄する。

小松菜さんに気付いた敵外骨格が照準を変えるがそれなら私もとグレネードを再装填して射撃。
直撃を避ける為か敵の体が仰け反った。
ライフルの銃口も一緒に上へと逸れた。
グレネードが再度背後の障壁に直撃して爆発。
爆風に煽られて体制が崩れる敵兵。
その瞬間、小松菜さんの鋭い拳が敵の頭部を捉えた。

「はっや」

私も援護する為に立ち上がると、いきなり背面からゾワリとした感覚を感じ取り反射的に前に転がった。
後頭部のすぐ後ろで何かの風圧を受けながら即座に射撃体勢を整えて射撃。
銃弾は当たらなかったが正体は掴んだ。

「まだいたんだ・・・・・・」

向こうにいるのより細身だが、此方も外骨格だろう。
分厚い人工筋肉がギシリと音を立てたのが聞こえた。
動きが機敏だが銃器も無く、あっち程装甲も付いていない。
油断は禁物だが、こっちなら私も相手できそうだ。
そう思ったんだけど・・・・・・

更に後続が増えて三人くらいになった。
しかも腕の一部が可変、ブレードが出現する。

「あー、そういう奴ね」

私にとって更に過酷な戦いが始まった。



*************************************************************


なるはやで投稿したいけど難しいこの頃。
クオリティ落ちてなきゃいいな・・・・・・そもそもそんなレベルじゃねぇよというツッコミはナシで((
さて、寝るか。
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