Machine& Mercenary

タクティカルおじさん

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Mission3-2

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下水道口に到着。
ニーリングしライトで奥を照らす。
少なくともライトの光が届く範囲に敵はいない様だ。
最悪ドローンぐらいはいると思ったけど、少し拍子抜け。

ハンドサインでみんなを呼ぶと、順番に入って左右の通路に別れて前進する。
しかし相変わらず小松菜さんは武装しない。
やっぱり身体能力が高いのかな。
そう思ってたら角刈りのドモンさんに教えられた。

「小松菜はサイボーグなんだよ。だから武器も装備もいらねぇのさ」
「一応防具は必要だし」

小松菜さんが振り返って相槌。
彼女がサイボーグならあれでも周囲の索敵が出来てるのかもしれない。

「それにサイボーグツリーはお金が掛かるのよ!こういう任務は食って掛からなきゃ」

と力説する小松菜さん。
目がドルマークになってそう。
こっちだとビスマークか。
そんなお話しながら進んで行き、時にMAPと照らし合わせて目標地点と比較。
ルートを合わせて進んでいく。
この間エンカウントゼロ。
気楽に行けるのは良い事だ。

更に進んで何回目かの梯子を確認。
MAPと合わせ見て、目標地点である事を確認したので合図して皆を集める。

「この上から作戦領域、陽動が効いてるうちに終わらせるよ」
「ヨシ来た」
「暴れてやるぜ」
「そういう任務じゃないって言ってるでしょうが」

何だかなぁと思いつつ梯子を上る。
マンホールの蓋に手を掛け、一瞬だけ思い切り力を入れて持ち上げる。
中々上がらなかったが二回か三回ノックしたら持ち上がったのでよし。
ARを背中に回してハンドガンを抜き、ゆっくりと蓋を持ち上げながら隙間から銃を寝かせて頭半分と下腕部だけ出して索敵。
動かせる範囲だけで索敵しつつ上がっていき、廊下に足が着いた時点でハンドガンをホルスターに収めてARに切り替える。
蓋を横にズラして出来なかった反対側を索敵。
敵が来ていないのを確認してハンドサインで上がってくる様に合図する。
するとーー

「よっと」

小松菜さんが梯子を使わず跳躍だけで外に出てきた。
華麗な着地と驚きの身体能力に思わず呆気に取られるが気を取り直して反対側を見ておく。
小松菜さんがサイボーグというのはフレーバーではなく本当の事だったらしい。
そういうのがあるのは知っていたけど、実際に出会うのは初めてだ。
小松菜さんが最速で死角の警戒に入ってくれたから余計な気を張らなくて済むのは助かる。
続いてデイダラさんを先頭に残りの三人も上がってきた。
手慣れた様にニーリングからカバーに入っていくのは流石だ。
最後にダスクさんが上がって三人が揃う。
それと同時に小松菜さんが発言する。

「それじゃドモン達は三人で、私はユキちゃんと行くね」
「それでいいぜ」
「小松菜一人でいいんじゃね?」
「それいいな」
「わ、た、し、はユキちゃんと行くね」
「分かったから怒んな」

小松菜さんが結構強引にチーム分けしたのでスムーズに編成完了。
でもーー

「私一人でも構わないけどね」
「ダーメ、ユキちゃんは私と行くの」

背中を軽く叩かれたと思ったら小松菜さんが悠々と前を歩く。
それをダスクさんが肩を竦めて見送り、自分達の本分を果たす為に動き出す。
三人が見えなくなったので諦めて自身の役割を果たすことに専念する。
ダスクさんが向かったのは生活水供給水路だろう。
なら私達は浄水槽に向かう。
反対側を小松菜さんに見てもらい私は通路の角にカバーリング。
チラリと顔を半分だけ出して確認。
見た感じカメラすら付いていない。
ARを前に突き出しながら前進。
円形状のホールに出るが敵影無し。
気配すら無いが、これは恐らく迎撃に出たのだろう。
玄関口と思われる両扉が開けっ放しだ。

「この変に生体反応は無いわね。ただ・・・・・・」

小松菜さんがそう言って上の方を指差した。
指先を追うとそこには正に通過中の小型ドローンが遠くに飛んでいた。
下部には機銃が付いている。
ドローンの大きさ的に付いてるのは小口径火器だろうけど、人間の私には小口径でも致命傷だ。
だが問題はそこじゃない。
ドローンに発見されればそこから情報がテロリストに漏れる可能性がある。
絶対に見付かってはいけない。
幸い小型で防御力は低そう。
狙撃を敢行する事にする。
腰ほどのパーテーションまで前進してしゃがんで姿勢安定、手摺を利用してバイポッド代わりに手ぶれ補正。
ゆっくりと息を吸い込み、呼吸を止めて肺の活動によるブレをストップ。
通過点にレティクルを置いてーートリガー。

ヒット。
案の定大部分が樹脂だったようで一発で胴体が吹き飛び、ゆっくりと落ちて行った。
息を吐いて深呼吸。
咄嗟に首と目の動きで周囲警戒。
増援の様子はない、どうやら撃墜しても問題ないようだ。

「あらま」
「他にはいる?」
「十時と真上にいるけど・・・・・・」
「分かった、一先ず十時のだけ落とす」

見てみれば本当にいた。
先程の奴とは違って私達のいる階を哨戒しているようだ。
今度は通路の角に左手の指で輪っかを作って ARの側面を当ててバレルを固定。
狙撃する。
今度もドローンの中心部を撃ち抜いたので増援の心配は無さそうだ。
MTTでMAPを確認してルートを確認すると、浄水槽はホールの反対側みたいだ。

「上のドローンに見付からない様に迂回して向かうよ」
「えっ、うん」

小松菜さんが首肯したのを確認して迂回路を進む。
流石に小松菜さんも意識して物陰に隠れる様に移動を始めた。
少し進んで正面玄関前に。
中央昇降部や張り出したテラスを注視してみるが敵影はドローン二機のみ。
正面玄関を通り過ぎれば普通に通過出来そう。
そう思って扉の影から顔を覗かせようとすると。

「ちょっと待って」

小松菜さんからストップが入ったので踏み留まる。
何事かと思えば真剣な表情で告げた。

「生体反応接近、数はぁー・・・・・・六人くらい」
「ドローン撃墜を察知した?」
「そんな様子じゃ無さそうね。足取りがゆっくりしてる」

だとすると哨戒部隊が帰還したのかもしれない。
ここから伝わると面倒だ。
ドローンも落としてるし、残骸も他のドローンには見付からないけど歩兵がいれば発見されてしまう拙い位置。
ここで始末しよう。

「誘い込んで一掃する」
「オッケー・・・・・・!」

応答した小松菜さんが跳躍して反対側に行くと扉の陰に隠れた。
私も同じ様に扉の影に隠れ好機を待つ。

「全く、何だったんだアイツら」
「さぁな、大方銃を手に入れて粋がってるチンピラだろうよ」
「まぁ政府の犬じゃなさそうだったし大丈夫だろ」

話し声が近付いてくる。
狙い目は遮蔽物の少ない中央まで移動した瞬間。
次点で扉に手を掛けた瞬間だ。
油断しているタイミングで奇襲を仕掛ければ対象を難なく無力化出来るはず。
ジッと息を潜め、攻撃の機会を窺う。
そして敵の声が至近距離まで近付いたその時。
扉に手が掛かった。

(ーー今だ!)

敵の姿が見えた瞬間に敵の大腿部から腹部に掛けて三発射撃して怯ませ、そのまま銃口で頬を打って肩を拝借。

「畜生!うわぁ!?」

反対側の兵士が階段まで吹き飛んでいく。
小松菜さんか、凄いパワーだ。
そっちに気を取られてる間に拝借した肩で委託射撃。
先頭を歩いていた男の頭部を二回射撃して確実に仕留める。
そして肩を借りていた敵が立ち直る前に銃口で押し退け、頭部に一発撃って今度こそ処理する。
直後にドゴンと鈍い音が聞こえ、そちらを見れば小松菜さんが地面に敵兵を叩き付け圧し折ってる場面だった。

(殴り合いの喧嘩は売らないようにしよ)

そう心に誓い、合わせてくれた小松菜さんにサムズアップを送る。
彼女はそれにウインクで返すと、先に進み始めた。
私もそれに続く。

小松菜さんが先頭を走る。
私に合わせてくれているから追い付けない程の速度ではない。
普段だったらクリアリングしながら移動する所だが、小松菜さんに生体反応レーダーも装備されている事が分かったので物怖じする必要もない。
敵が陽動だと気付くまでがタイムリミット。
余り悠長にはしてられないから助かっている。

「前方二人」
「了解」

被弾できない私は張り出した柱に隠れ、小松菜さんは全速力で駆け出した。
飛び出した敵兵二人が小松菜さんに気付き手に持った小銃を構えた。
その瞬間に立膝して姿勢を安定させセミオートで射撃。
銃弾は外れるが敵が怯んで隠れた。
本来だったら敵からの被弾を防げ、尚且つ異常を知らせる機会になり得た。
だがその隠れるという判断が命取りになると誰が思うだろう。
そのまま全力で駆け寄り、小松菜さんがその拳を振るう瞬間が此方からも見えた。
急いで私も彼女の元へ。
敵兵の悲鳴。
小銃の発砲音も聞こえるが、同時に何か硬い物が砕ける音がした。
小松菜さんを追って角から出てみればひしゃげた小銃を捨て、拳銃を抜いた敵兵の姿。
味方に当たらない様にそのままセミでサイティング、ガラ空きの胴体に銃弾を叩き込んだ。

「ナイス!」

小松菜さんが更に一歩踏み込み大きく振り被って敵兵の頬を砕いた。
哀れにも敵兵は並々ならぬパワーによる打撃を受け頭から地面に落ち、余りある力によって一度跳ねた。
敵兵はもう動かなくなった。
もう一人は私がそのままの体勢から頭部をダブルタップして倒した。
小松菜さんの暴力で瀕死だったから狙うのは比較的に楽だった。

今度は私を先頭に移動開始。
通路を抜け巨大な水路の様な場所に出た。
あらゆる角度を警戒するが監視カメラすら付いていない。
もしかしたらテロリストはここから侵入して制圧したのかもしれないね。
右側は行き止まり。
左側に移動、スナイパーがいれば危険な場所だ。
一直線に数十メートル、先はT字で通路が繋がっている。
非常用の水路か搬出路?
私達のいる足場は転落防止に手摺が取り付けられていて、水路に沿うように足場と手摺が続いている。
広さ故の簡易化だろうか。
どちらにせよ余り長居はしたくない。
ここより北東に浄水槽にアクセスできる通路がある。
ただかなりの距離だ。
敵に出くわさないと良いんだけど・・・・・・

一抹の不安を感じながらも早足で進み始める。
角に来る度に狙撃されないか冷や冷やする。
そしてあと少し、目標地点の近くまで来た時だった。

「ユキちゃん危ない!」
「うぇっ!?」

突如小松菜さんに押し倒される。
まさかスナイパー?
そう思って押し倒した小松菜さんの隙間から顔を覗かせた時だった。
何かが爆発するような音共に現れたのはブースターを噴かせ、何かから逃げる様に現れたスタンダード。
ブルドックのマイナーチェンジだろう。
本来装備しているセミオートライフルではなく見た目からショットガンだろう武器が握られている。
対面の通路に大きな体をぶつけながらも、私達がいる通路へと旋回しながらバックブーストで先へと銃口を来た道へと向けながら逃げていく。
更に続け様に現れたのは私が見た事のある機体だった。

(青色のハイエンド!)

器用に旋回しながらブレーキング、ブースターを出力して速度を落とさずに先のMDを追い掛けていく。
しかしその最中で、私と青いハイエンドの目が合った。
流線形の頭部から覗く赤い単眼が、その先にあるパイロットの視線を確かに感じた。
一瞬の出来事。
そのまま青いハイエンドは追撃に入り、それに攻撃を加えるスタンダード。
だがハイエンドは攻撃をシールドで受けつつ速度を上げて突進。
避けるべくスタンダードは十字路を右折して消えていき、ハイエンドも追ってその場からいなくなった。
小松菜さんが立ち上がったので私もゆっくりと立ち上がった。

「大丈夫?」
「ありがと、小松菜さんのお陰で無事だよ」

実際、守ってくれなかったら私の体はソニックブームでズタズタだろう。
死にはしないだろうけど、余計な傷を負っていた可能性が高い。
それに・・・・・・

(あのハイエンド、私達を守った?)

相手がショットガンだから完全には避け切れない。
それは分かる。
だが防御の瞬間、あのハイエンドは右手側ーーつまり私達のいる方へ移動した。
散弾の一発がハイエンドの右肩に被弾したのが見えていたが、あれはもしかすると私達に被害が出る物だったのでは?
もし本当にあの一瞬で私達を視認して、尚且つ防御の選択肢を取ったのだとしたら・・・・・・

「・・・・・・今回の私は助けられっ放しだ」
「ユキちゃん?」
「なんでもない、行こう」

ハイエンドが消えていった通路を数秒眺める。
彼らを追っても意味は無い。
出来ることもないし、あの青いハイエンドは陽動側だ。
私は私の目的を達するのがベストだろう。
でも私の中で何か、言いようの無い気持ち悪さがあった。
常に単独で任務をこなしてきたつもりだったけど、本当にそうなのか?
現に今だって助けられた。
下手したらデスしていた可能性だってあったんだ。

(あぁ、落ち着かないなぁ)

どうにもモヤモヤした気持ちを抱えながら、後で考えようと気を取り直して先に進む。
でも、やっぱり気持ち悪いなぁ・・・・・・



***********************************************************


ちょっとずつ色々心理描写するテスト。
このまま続けて書くか迷ったけど変に長くなりそうだったので切りました。
なので短め、スマン(直球

増えてく仕事にちょっとストレス。
書いてて抜けとか変な描写がありそうでコワイ。
どっかで休み取ろうかな、でも抜けたら現場がやばそうだから悩みどころさん。





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