遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~

ヘボラヤーナ・キョリンスキー

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第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~

2-38.ダンジョンキーパー、レイフィアス・ケラー(8) 「熱い熱い熱い! ヤバいし熱い!」

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親愛なるガヤン叔母
 
 この手紙はガヤン叔母だけで読んで、読み終わったら処分して下さい。
 魔力溜まりマナプールを支配してダンジョンキーパーとなった、という経緯に関してはまあ繰り返しません。
 ただ正直なところをそのまま書くと、母がまた何かしら暴走してしまうかもしれないとも危惧するので、詳細は省かせて貰いました。
 まあ詳細というか……んー? 現状? 諸々に関して。
 
 まず現在地についてなのですが、おそらくここは古代ドワーフ遺跡なのではないかと思われます。
 古代ドワーフ遺跡と言えば、正統ティフツデイル王国領内かクトリア周辺、さらに古い物であれば東方ダリスダナ近辺も考えられますが、王国領内以外であれば、脱出後にかなりの問題が起きることが考えられます。
 ですので、叔母上には“生ける石イアン”と“迷宮探索遊技”というキーワードからも、場所の特定に繋がる情報を集めて頂ければと思います。
 また、重ね重ね母上の動向にも注意をお願いします。
 くれぐれも母上が暴走をしないよう、見ていて下さい。
 
 その他、こちらの遺跡内のことで気がついたことなどは箇条書きに纏めます。
 まず、生態系についてですが…………
 
 
 
 
 ◆ ◇ ◆

「熱い熱い熱い! ヤバいし熱い!」
 卵形のホバーチェアを高く浮かべて悲鳴をあげる。
 ダンジョンハート区画の上空。
 ホバーチェアは「地表からある程度浮く」ものなので、本来それほど上空高くにまで飛べるわけではない。
 なので今は、ダンジョンハート区画の、天井の無い“壁”の上に、無理矢理“浮いて”いるような状況。
 
 下ではこれ、かなりの乱闘騒ぎ。
 ケルっピ(ガンボンが勝手にケルピーをそう呼んでたのでその名前にした)は霧を撒きつつ駆け回り、大蜘蛛のアラリン(アラネア、をもじって付けた名前)は魔法の糸を撒き散らし、ガンボンとタカギは……逃げまくりだ。
 
 何からか?
 火焔蟻フラミカエという魔虫からだ。
 
 これは火属性の強い魔力を持つ大きな蟻型の魔虫で、砂漠地帯等にコロニーを作り生息している。
 大きさは働き蟻で中型犬くらい、兵隊蟻と呼ばれる戦闘特化のものは大型犬から馬くらい。
 
 向こうの世界に居た火蟻と呼ばれる毒蟻は、刺されるとまるで火をつけられたように痛み、アナフィラキシーを起こして場合によっては死に至る強烈な毒を持っていたのだが、こちらの火焔蟻はストレート。
 口から火炎放射のように火を吐く魔虫だ。
 
 カチカチ、と牙を二回ほど噛み合わせ、腹部を一旦大きく膨らませると、まるで大きく息を吐くようにして火炎放射をする。
 射程圏はさほどではないが、威力は火属性の強烈な魔法攻撃に等しい。
 なので、身体そのものが水属性の魔力の塊であるケルっピはには天敵。
 お互いがただの虫であれば確実な捕食者であるハズの大蜘蛛アラちゃんは、糸を燃やされてしまう難敵。
 そして豚二匹とダークエルフの小娘にとっても、決して相性の良い相手では無い。
 
 母ナナイは闇属性よりも火属性の魔力に適性があったため、この程度の火焔蟻など屁でも無かっただろうけれども、僕は火属性より土属性の適性の方が強い。
 なので火属性魔法に対しては、母から貰った付呪魔装具による守りくらいで、あれほどの火炎放射に直撃されれば火傷どころじゃ済まない。
 ガンボンとタカギに至っては文字通りにこんがり焼き豚だ。
 
 で、それになんとか対抗しているのは、「ザ・使い捨て兵」の、召喚白骨兵だ。
 “生ける石イアン”により召喚される白骨兵は、死体を直接死霊術で操るものではなく、インプ同様の異世界にある精神生命体を呼び出し、仮初めの肉体としての“白骨兵”の姿を与えるものだ。
 ただ使われている魔力は闇属性だし、死者の残した霊的エネルギーも利用している為、種別分類としてはやはりアンデッドに属する。
 ちなみにこの場合の「死者の残した霊的エネルギー」というのは、人間、人間型の死者に限定されず、例えばこの火焔蟻のでも良い。
 霊そのものではなく霊のエネルギーを頂いて利用するだけだからだ。
 
 で、弱点も死霊術で蘇った白骨兵と同じ。
 つまり強い火や浄化、打撃に弱い。
 しかし!
 今回召喚している白骨兵は全て「盾持ち」だ。
 盾で火炎を防ぎつつ、にじりにじりと間を詰めてバチボコにぶん殴る! という戦法を使うことが出来る。
 というか、それしか出来ないんだけど!
 
◆ ◇ ◆ 
 
 地下階の床下からボコリと穴を開けて奴らが侵入してきたのは半刻くらい前。
 そのときガンボンはフローズンゼリーの食いすぎで下し気味な腹を抱えてトイレに籠もり、僕は相変わらずデスクに半ば突っ伏した状態でぐだっていた。
 そのぐだって朦朧としていた意識の中に、警告音とともに発せられる“生ける石イアン”の声。
『キーパーよ、侵入者だ』
「───は? え? 何? どこ?」
 ヤバい、涎垂れてた。
 
 この島の上部の区画は、まだきっちりとした壁や天井で区切られていない。
 ダンジョンハート区画は一応壁では囲っているけれど、まだ屋根も無く上空からなら余裕で侵入出来る。
 つまり、敵が支配区画に侵入したのなら、それは上空からだろうと思い見上げてみても、見えるのは溶岩の照り返しに赤くギラつく巨大洞窟の天井だけ。
「はへ? 上じゃ……無いの?」
 パネルの地図を確認。赤く点滅してるのは……地下室だ!
 
『ガンボン! ガンボン! 地下室に敵!』
 その地下区画で便所に籠もってヒーヒー言ってるガンボンへと、【伝心の耳飾り】で警告を送る。
『へ? あ? 何? どこ?』
 相変わらず緊張感のない間抜けな反応だなぁ、などと、さっきの自分とほぼ同じであることをスルーしてそう思うが、実際正確な場所がどこかと言うと──、
『これは……食料庫か?』
 地図上のそこは、前のステージで手に入れた魔獣肉を保冷保存している食料庫。
 てことは、敵の第一の狙いって……それ?
 
 大蜻蛉を派遣すると、食料庫の床には大きな穴。
 中から溢れ出てきているのは、犬くらいの大きさに赤黒い外骨格の大きさの蟻。
 うわ、これ知ってる! 魔物研究本でお馴染みケイル・カプレートの『南沙奇異録』で、「砂漠の脅威」の項にあったヤツ!
 そう驚いているとそいつはカチカチと牙を噛み合わせ……あ、これ来る……!
 
 火炎一閃。まるで殺虫剤スプレーにライターで火をつけたみたい。一瞬で焼き尽くされる大蜻蛉の姿に、心のアラートが鳴りまくる。
 え? え? ヤバいじゃん? どういうこと!?
 パネル上の地図を確認するが、地下区画の更に床下から穴を掘って侵入してきたこと以外は良くわからない。
 問題なのはその数!
 地図上……つまり支配区画内で確認できる範囲内でも既に10体近く。
 それが出たり入ったりしてるということは……実際にはもっと多くの火焔蟻が食料庫の食い物を奪いに来ている。
 
 どーすんのよ、これ!?
 しかもこの流れ、食料庫の肉を全て奪ったら、そりゃ間違い無く僕らを餌と見做すでしょ?
 ケイル・カプレートの本によれば、砂漠地帯で人里近くに出来てしまった火焔蟻のコロニーに気付くのが遅れた結果、村一つが丸ごと餌として食い尽くされる、なんてこともあるらしい。
 小さな虫の蟻よりコロニーの個体数は遥かに少ないらしいが、そんなのは何の慰めにもならない。
 
 何にせよまずは防御だ。
 攻撃は最大の防御、というのは相手の兵力がある程度推察できるときのもの。
 現時点での兵力差も分からない以上、闇雲には攻めていけない。
 
 消費コストが低くて使い捨て出来る白骨兵をダンジョンハートにて召喚。まずは30体ほど。
 現在は最初に支配下にした魔力溜まりマナプールの他、ケルっピが支配してた水属性の魔力溜まりマナプールと、今ここにある魔力溜まりマナプールの3つもの魔力溜まりマナプールから魔力を引き出せるから、低コスト召喚魔物の人海戦術はかなり楽だ。
 
 一々指示をせずに増員出来るように定期的に自動召喚するようにセットをしておき、それからケルっピに【霧の渦】を広範囲指定で使わせておく。
 水属性の魔力による守りの結界を作るこれで、ある程度は火属性魔法攻撃の威力を相殺できる。
 それからさてどうするか……と、考えてたところ、地下階からの大きな物音。
 うへ? 何? 見やる視線の先に現れたのは、両腕に抱えた肉の塊を必死で守り駆け上がって来たガンボンとタカギ。
 そして、その肉の塊を奪おうとその後を追いかけて来た、何体もの火焔蟻達……。
 
 ちょ、ちょっと! こっちにまで呼び寄せてどーすんのよ!?
 
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