遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~

ヘボラヤーナ・キョリンスキー

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第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~

2-144. 追放者のオーク、ガンボン(65)「いや、むちゃくちゃだ!」

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 再びの静寂。ハコブさんを中心にやや遠巻きに居るアダンさん他“シャーイダールの探索者”達は、それぞれに困惑と驚き、そして何よりも目の前で起きていることの意味が理解できずに居るようだ。
 そりゃそうだ。話半分とは言え、イベンダーによる「秘密の開示」を聞いてしまっていた俺にもよく分からない。
 一応聞いていた事からすれば、ハコブさんはグレタ・ヴァンノーニと裏で通じていて……“邪術士シャーイダール”側からすれば裏切り者で、密かにシャーイダールさん暗殺を目論み続けて居てつい最近それを成し遂げたと言う。そしてアダンさん達の言葉が正しいのなら、ハコブさんが今被っている仮面こそがシャーイダールの仮面だと言うからには……そう言うことなのだろう。
 
 そしてその「秘密の開示」を行ったイベンダーは今俺の足下で血にまみれて倒れていて、ハコブさん本人はこれから自分がシャーイダールさんに成り代わり、またクトリアの王になるとも宣言した。
 事実、ハコブさんは東方の亡国ディシドゥーラの王族の女性を母に持ち、父は例の“悪しき者”でありクトリア王朝最期の王、ザルコディナス三世だと言う。
 なんというかその生い立ちは、それこそ伝承や物語の主人公にでもなりそうな程のものだ。
 
 その辺の真偽は分からない。分からないし……正直俺にはどうでも良い。問題は───。
 
「は、はは……おい、ちょっと、さすがに……冗談キツいぜ、ハコブ。
 今このタイミングで、そんな凝った仮面の偽物作ったりして、よ……。
 そりゃ懲りすぎだってーの……」
 
 引きつりながら乾いた笑い声をあげ、努めておどけた調子でそう切り返すアダンさん。
 それを受け、返すのは……、
「いや……違う。あれは……本物だよ。間違いなく、本物のシャーイダール様の仮面だ」
 きっぱり断言する魔術師のマーランさん。
 
「あの禍々しさに、強い魔力のほとばしり……見ているだけで竦み上がり心臓が止まりそうな威圧感……。むしろ……本物のシャーイダール様以上の恐ろしさがある……」
 微かに震えている。
 
「……本物以上……。ああ、さすがだな、マーラン。まさにその通りだ」
 彼等四人へと向き直ったハコブさんは、まるで俺とイベンダーの存在など意に介していないかにそう言葉を続ける。
「この、本物のシャーイダールの仮面は……本当に良い。良いぞ、とてつもなくな……!
 今までこれほど……こんなにも魔力が漲り、思考が冴え気持ちの良いことはなかった……!
 コボルトごときですら、いっぱしの邪術士に見えるほどの仮面の力……この俺が使えば当然それを……遥かに上回る……!」
 
 落ち着いていたように見えた態度、物腰が、話すにつれその言葉通りに高揚し上擦った大きな声のへと変わる。
 何かに酔ったような、そんな調子だ。
 
「本物以上の仮面……て、それじゃ、本当に、シャーイダール様は……?」
 困惑に怯えの入り混じった声で聞くニキさんに、両手を広げ掲げるようにしながらハコブさんが言う。

「さっき言った通りだ。シャーイダール……いや、長い間自らをシャーイダールと偽り、我々を欺いていた卑小なコボルトは死んだ。殺したんだ。
 そして───」
 ここで改めて足下近くに居る俺とイベンダーへと視線を向け、
 
「そのシャーイダールが偽物と知ってて担ぎ上げていたイベンダーには、少しばかりキツメの仕置きをしてしまったがな」
 
 驚き交互に顔を見合わせている四人だけでなく、俺もまた混乱し諸々の言葉の意味、真偽を計りかねている。
 シャーイダールさんがそもそも偽物だった……というのも初耳だし、イベンダーがそれを知ってて担いでいた、というのも知らない話。
 そしてそれは彼等四人にとってもそのようで、この状況への困惑をさらに加速させている。
 
「……意味、分かんねえ……」
「そ、そうだぜ、ハコブ、何言って……んだ、よ?」
 混乱と困惑をそのままに吐露するスティッフィさんとアダンさん。
 
 反して、
「───い」
 そう切り出したのはマーランさん。
「いつから……それ、を……?」
「俺が知ったのは“つい最近”だ。だがイベンダー達が知ったのはあの“ハンマー”ガーディアンの暴走の日だそうだ」
「……達?」
「ああ。イベンダーの他に、ブル、マルクレイ、そして……JBがそのときにシャーイダールが偽物であることを知った」
 
 再びざわつく。イベンダーはどうあれ彼らの仲間になって日が浅い。けどJB達は違う。長年の仲間に騙されていた……そう知らされることは一層の衝撃だろう。
 
「マジかよ……嘘だろ?」
「JB……達が?」
 矢継ぎ早の“衝撃の真相”に混乱した頭の中に突き刺さる“裏切り”の事実。それはこの混乱を一つの方向へ容易く導くことが出来る。
 
「奴らを責めるな」
 しかしハコブさんはそうきっぱりと言う。
「俺たちはガーディアンの暴走で一度に大勢の仲間を失い、混乱し打ちひしがれていた。そこでさらにそんな話を知れば、立ち直れない者も多くでたかもしれん。そうだろ───ニキ」
 急に名指しでそう言われて、ニキさんはしどもどしつつもなんとか「あ、あう」と、返事か嗚咽か分からない声を出す。
 
「JB達が黙っていたのは悪意からじゃ無い。時機を見て話そうとしていて、まあその後のゴタゴタの区切りがついてから、まず俺に相談してきた。だから、あいつらのことは責めるな……」
 そう言いながら、けどそこでまた言葉を区切り一息。続けて今度は、
「───だが、そう言い含めてJB達を巧く操り、さらにはその隙に偽のシャーイダールを自らの傀儡とすることで、密かに俺たち全員を支配下にしようと企んでいたイベンダーのことは……簡単には許せんよなあ?」
 
 ───え?
 それは……いや、むちゃくちゃだ! 
 さっき、俺が図らずも盗み聞きする形で聞いてしまった話では、そもそもハコブさんはシャーイダールの探索者として活動しつつも、本当はグレタさんと通じて、「シャーイダールさんの暗殺及び探索組織の乗っ取り」を企んでいたハズだ。
 けどそれを今……全くの真逆にして、その陰謀をイベンダーに押し付けた。
 
「───あの“本物のシャーイダールの仮面”をハコブに盗み出されていたっ……てのまでは、読み切れンかったわ」
 いきなり、耳元でそう声がして、俺はあやうく無様に驚きの声をあげそうになる。
 小さくそう言うイベンダーの声はいつもより明らかに張りがなく弱々しいが、それでもまだ意識ははっきりしているようだ。
 
「イ、イベンダーのおっさんが!?」
「そ、そんな……」
 向こうではハコブさんの“告発”を受けて、口々にそう言うアダンさん達。イベンダーは闇の森からこちらに転移して短い間ながら彼らとはかなり親密になっていたようだった。それなりに信頼もされてたろうし、だからそう言われてもすぐさま信じられることもない。けど……。
 
「偽物のシャーイダールを殺した俺と……このドワーフ。どちらを信じるか……」
 
 仮面でその表情は見えない。見えないがもし見えていたら───きっとその目は震えるほどに冷たくさめているのだろう。
 
「いや───どちらにつくのか……だ」
 
 突きつけられる選択に、さらに空気がざわつく。
 
 
 その背後で、見えない視線に晒されつつ、
「……こないだお前さんにくれてやった首飾り、あるか?」
 と、か細い、力のない声で囁きそう聞いてくるイベンダー。
 
 金ピカドワーフ合金製のそれは、“銀の輝き”へ行ったその帰りにイベンダーがくれたものだ。
「最悪の場合に備えてのものだったんだが、今はまだその最悪の二歩くらい手前ってとこか。
 だがまあ……こうなりゃ使わざるをえんな」
 
 差し出したそれを手にして、イベンダーはぶら下がっている丸い飾り部分を、例の左腕の籠手と重ねて何かを施す。
 
「わかりやすく言うとな。こいつは“遠隔からの音声データを同期して録音記録する端末”だ。対になる集音用は俺が持ってた」
 はい? と、思わず聞き返しそうになる言葉。
 
「今、再生させるようにした。だからお前は取りあえず全力で……走って避けろ」
 
 戻されたそれは、丸い飾り部分が小刻みに小さく震えて、そこからついさっき耳にしていた言葉のやり取り、会話が聞こえ出す。
 
『───いつから……。いや、どうして気付いた?』
『そりゃあ……まあ、お前さんがカストなんぞ殺すからだ』
 
 ◆ ◆ ◆
 
 次々と地面から立ち上がる炎の柱が俺のさっきまで居た場所を焼き尽くそうとする。
 ケツに火がついたように、という慣用句があるが、ちょっとでも遅れれば文字通りに火がついて、さらには火だるまにもなりかねない。
 連発されるその火柱の合間に、今度はうねるような炎の渦が頭上を掠める。
 ゴロンゴロンと玉のように転がって、受け身をとりつつ素早く立ち上がるとさらに走る。走り続ける。
 
 全力、必死、そして猛ダッシュ。しかし俺のこの魅惑のファットボディに備わった機動力とスタミナでは、いつまで続けられるかは分からない。
 
『確かにな。あいつほどくだらん恨みを方々で買いながら、無駄に逃げ延びてるような奴は珍しい』
 
 逃げ惑う俺の首飾りから、先程の会話がノイズ混じりに聞こえてくる。音質はそれほど明瞭でもない。けれども誰と誰が会話しているかも、その内容もきちんと分かる。
 
『普通ならとっくに殺されてる』
 
 熱の気配を感じ、手にした棍棒を握りしめて床面の石畳の段差へ先端を突っ込んで加速の勢いを殺さずに右へターン。
 その瞬間、直進していたらそのまま飛び込んでいただろう場所に炎の壁が立ちはだかる。
 
「ハ、ハコブ! 何なんだよ、何してんだよ!?」
 悲鳴のように声を上げるも、アダンさんもことの展開についていけず、両手で頭を抱えてオロオロするしかない。
 他の三人も同様。何がどうなってて、どうすれば良いのか判断出来ないでいる。
 
『要するに───奴を殺すに足る動機は、結局のところ奴が『シャーイダール殺しの陰謀』を立ち聞きしちまったということ以外ありゃしないワケだ』
 
 会話が問題の箇所にさしかかり出す。
 そう、この先だ。この先にイベンダーは「秘密の開示」───つまり、ハコブさんがシャーイダールさんと他の探索者達を裏切っていたということを口にする。
 そしてハコブさんとしては、それが明らかにされる前に俺を焼き殺し、この首飾りを奪い、作動を止めるか壊すかをしたいはずだ。
 
 けれども、それが明らかにされてしまったら果たしてどうなるのか───。
 
 ぬう、と目の前に突如現れるのは不気味な仮面……いや、ドワーフ合金製の剣を構えたハコブさんだ。
 魔法はあくまで牽制、そして俺の逃げる先を操るためのモノで、留めは自ら直接……との狙いか。
 その切っ先は俺の喉元、首飾りへと向けられて、鋭くそして無駄のない動きで突き、貫こうとする。
 俺はそれに合わせ……大きく頭を振り、前傾姿勢になって頭を前へと突き出す。
 角兜に弾かれ、剣先の軌道が逸れる。しかし幾つかの安物首飾りの鎖や革紐が切られて、バラバラと散らばった。
 
 ハコブさんはその飛び散った破片に気を取られる。首飾りから声がしていたのは分かっていたが、この大量の安物の中に紛れ本物がどれかまでは分からない。だから一瞬ではあるが、その飛び散った中のどれかかもしれない、と考える。
 
『……イベンダー、慎重に答えろよ?
 つまりお前は───』
 
 すれ違い様に鳩尾への鋭い膝蹴り。俺とは違うハコブさんの長い脚が、肉厚の脂肪と筋肉を打ち抜いてよろめかさせられる。視線は散らばった首飾りへと向けつつ、けれども攻撃の手……いや、脚は緩めてない。
 その蹴りを受けて前のめりになっていた体勢の俺は、そのままつんのめり頭から転ぶ───かに見えて、そうはならなかった。
 頭から床に突っ込むより先に、イベンダーが俺を受け止め、抱えて、そのまま上空へと飛び上がったのだ。
 
「よっしゃ、よく逃げ切ったな! よくやった、ガンボン!」
 ニヤリと笑いつつも、俺はそれに応えられる余裕もない。咽せるように数回せき込み、荒く息を吐きつつ脱力。
 
「おい! アダン! マーラン! ニキ! スティッフィ! もう分かっただろう!?」
 続けてイベンダーはそう大声で叫ぶ。
 
「え!? な、何が!?」
「今のハコブは“マトモ”じゃない! いいか、あの本物の“シャーイダールの仮面”は、呪われた仮面だ!
 シャーイダール本人以外が被ると呪われっちまう仮面なんだ!
 ハコブはその呪いに操られて、おかしな状態になっちまってる! なんとかして止めないと……えらいことになるぞ!」
 
 かすれ気味の声だが、それでも全ての気力を振り絞ったかの大音声。さっきの今でよくも出せたもんだけど、その必死さは彼ら四人に届いたようだ。
 
「……そうか、糞! そりゃ……すげえ納得いくぜ!」
「……確かに今のハコブは……かなりオカシイね……」
「だ、だけど、止めるって言ったって、どうやってやればいいのサ……!?」
 口々にそう言う彼らを、後ろからずいっと押し退けるように前に出て、肩に担いだ戦鎚をぶんと一閃。
 
「アタシらが教わった通りに───だろ?」
 
 そう言いつつスティッフィさんの構えた“雷神の戦鎚”が、立ち上る炎にぬらりと照り返して鈍く光る。
 超、頼もしい!
 
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