遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~

ヘボラヤーナ・キョリンスキー

文字の大きさ
230 / 496
第三章 クラス丸ごと異世界転生!? 追放された野獣が進む、復讐の道は怒りのデスロード!

3-30.クトリア議会議長、レイフィアス・ケラー「ふわぁぁ……。こ、こりゃ、たまらん!」

しおりを挟む

 
 
「ふわぁぁ……。こ、こりゃ、たまらん!」
 ぐでんぐでんである。
 そしてでろんでろんである。
 さらに言うなら、にゅろんにゅろんである。
 ぐりょんぐりょんのへろんへろんでもにゃんもにゃんである。
 ヤバい。これは今まで以上にリアルガチでヤバい。
 
 クランドロール……は、まあまあ、置いておくとして。プレイゼスのショーエンタメ観劇体験もかなり上質で素晴らしかった。
 けど、それでもまあイベンダーも交えての根回し、事前交渉はそう悪くない流れで、よく出来た方だと思う。
 隗より始めよ、との故事に倣い、クトリア共和国の発足に伴う新たな法令づくりでは、まずは貴族街三大ファミリーの活動を縛ることにもなる法を優先して制定することにした。
 
 王無きクトリアでは共和制、そして議会による法の制定を原則とすることにはしたが、いきなり貴族街三大ファミリーと内城壁より外の、言わば“貧民”たちの議会を同等の権限を持つものとして扱うのには無理がある。
 それでは絶対に貴族街三大ファミリーは納得しないし、無理やりごり押ししてそういう議会にしたところで足並みも揃うわけもない。
 なので、貴族街三大ファミリー選出の議員の議会を「上院議会」とし、旧商業地区や外城壁外の集落等から選出された議員達の議会を「下院議議会」として差を付けることにした。
 
 役割も勿論変えている。
 上院議会は貴族街でのみの決まり事と、クトリア共和国全体に関わる決まり事の両方を制定出来る。
 下院議会では、クトリア共和国全体の法令は作れるが、貴族街内部のみの法令は作れない。
 また、下院議会で議決された法案は、必ず上院議会でも審議され、そこで否決されたら下院議会へ差し戻しになる。
 逆に上院議会で議題になり可決された法案は基本的に下院議会から否決されることなく制定される。
 ただ異議申し立てや再審議の要求を出すことは出来る。
 細かいところもややこしくはあるけど、とにかく上院議会は下院議会に対してかなりの優越性をもっている。
 
 この議会システムにしても、イベンダー等とかなり話し合ってなんとか形にしたものだ。
 今まで貴族街三大ファミリーの者やその関係者は、いわゆる旧商業地区の貧民たち相手に何をしても、それが罰せられることはなかった。
 極端な話、貴族街のファミリーの誰かが旧商業地区、市街地にやってきて、そこらの誰かを白昼堂々と好き勝手殺し回っても、それを罰する事は誰にも出来ない。
 勿論実際にそんなことをすれば、自警団の王の守護者ガーディアン・オブ・キングスや、光魔法の使い手の集まりである“黎明の使徒”なんかと全面戦争になる可能性があるから、そうそうそんなバカをやる者は居ない。
 けどそこまでひどくはない、つまり目立たない程度の事件ならちょいちょい起きている。
 例えばJBが最初にクランドロールと関わり合いになるキッカケは、彼の昔馴染みの孤児の少女を、クランドロール前ボスのサルグランデがこっそりと誘拐させたことにあるという。そしてそれを罰する法は今のクトリアには無いし、それを防げる勢力も無い。
 
 そこまでの絶対的な力の差、関係性の差がある貴族街と市街地との格差をどう調整するか?
 なんとか折り合いを付けたのが、この両院制だ。
 これも言うなれば飴と鞭でもある。
 貴族街三大ファミリーの上層部としては、両院制の形で上位に当たる上院議会での権限を持てる、というのは、実質王政、貴族制のないクトリア共和国においては貴族になれるのに等しい。今までは単なる「山賊、豪族の寄り合い」でしかなかった彼らの権威を正当化するし、“ジャックの息子”による協定を一方的に守らさせられるだけではなく、自分たちでルール作り、つまり“協定の中身”を作れるわけだ。
 つまりその特権や権威等々が飴。
 と同時に、法を整備することで三大ファミリーの個々の構成員、関係者にも、ファミリーの掟以外の法的拘束力を持たせる事も出来る。
 それこそサルグランデが孤児を誘拐させたみたいなことは、今後はキチンと罰せられるようにすることも、だ。
 
 それを示すことで、今度は市街地に住む人々に、「今までのように貴族街三大ファミリーの連中が一方的に好き勝手出来るわけじゃない」事を印象づける。
 この辺のバランスが難しいのだけど、スペシャルアドバイザーのイベンダー氏らと諸々詰めて動いていたりするわけです。
 
 
 ───が!
 現在ワタクシ、にゅろんにゅろんのでろんでろんのぐでんくでんなのですのよ。
 いや、もうね。
 めっっっっちゃ気持ちイイわ~~~、ここの大浴場に美容エステ!
 入浴習慣は闇の森のケルアディード郷でもあったけど、ここのは規模が違う。
 いわゆる大浴場もあるし、様々な薬湯や、温度の違ういくつかの風呂に、サウナ。さらにはジェットバスみたいなのまである。
 高級スパとかそんな感じなのだ。
 
 んで、これまた噂の美容エステ。正直ダークエルフ的価値観としても、前世の感覚としても、所謂美容というものへの興味、関心度は低いんだけどもね。垢すりみたいな汚れ落としに始まり、丁寧な洗髪に蒸しタオルで顔の毛穴をオープンさせてのフェイシャルマッサージ。そしてまたハーブエキスを溶け込ませたアロマオイルによる全身マッサージ。
 もうね。
 デトーーーーーーーーーックス!
 全身全力の、デトーーーーーーーーーックス!!
 ダンジョンバトル以降、諸々でたまりにたまっていた体内の毒素が、すっかり溶け出て流されて行くかのような感覚……!
 
 本日、こちらマヌサアルバ会の“白亜殿”へと来て以降、未だ会談も折衝も根回しも出来てませんが、とにかくまあそんな具合で、ひじょーーーーーーに、心地良い時間を過ごさせていただいております。
 ヤバい。マジヤバい。これはハマるかもしれん。気持ち良すぎる……だ、堕落する……。
 
「レイフ様」
 
 不意にそう施術中に声をかけられる。施術師は白くピッタリとした簡素だけど上等な服装に、これまた白い仮面。どちらも魔糸織物の特製品で、事前に聞いた話ではマヌサアルバ会正会員と呼ばれる上位メンバーらしいのだけど、その正会員によるマッサージを受けている。
 
「ここから先は、一般の方にはしない、特別なお客様への特別な施術になりますが、よろしいでしょうか?」
 
 え? 何々? どーゆーの?
「どのようなものですか?」
 僕がそう聞くのと、施術は受けず横で警護を続けているエヴリンドが警戒の視線を送るのはほぼ同時。その視線に気付いては居るだろうけども反応せずにその正会員の施術師は、
「この様な施術を必要とする方のためのものになります───」
 と、ズキューーーン!
 
「うほぉわ!?」
 いや、ズキューーーン! だけど、いや、ちょっと、そうなん!?
「え、ちょ、待って、一旦、待って!」
 いや、ちょっと心の準備出来てなかったけど、はー……そうか、そう来たか。
 JBやイベンダーからも聞いてはいたけど、ここマヌサアルバ会は表向きは美食と浴場と美容の総合リラクゼーション施設。けど本質的な実態は、貴族街唯一の魔術結社。
 人数はそう多くはないものの、正会員と呼ばれる者達は全て魔術の使い手で、準会員とされる者達はその従僕としての護衛も兼ねている戦士たち。
 その下にはさらに多くの使用人や何やらも居るけれど、中核を成すのは彼ら。
 その魔術の使い手である正会員がわざわざマッサージをしていたのは、つまりこの「特別なお客様のみの施術」のためか。
 
 これは、うん、確かに……。
「よろしいでしょうか?」
「あ、はい、続けて下さい」
 ズキューーーン! と、施術師の掌から魔力が注がれ、僕の体内へと広がって、また回りうねりつつ循環を促される。
 いや、これはかなり───上手い。
 “風の迷宮”では僕もアデリアやジャンヌにやってはいたけど、恐らくそれの何倍も“上手い”、魔力循環マッサージだ。
 
 魔力を扱う者にとっては円滑な魔力循環は必要不可欠だけど、例えば血流なんかが日々の疲労や不摂生で滞り、それが慢性的な疲労や肩こりに繋がるのと同様、魔力の循環が滞ることは魔術の行使の妨げのみならず、心身の健康にも問題を与える。それは人間もエルフも変わらない。
 魔力瘤が出来るほどの滞りはそうはなくても、他者により循環を良好な状態に調整してもらうには魔力循環マッサージが効果的なんだけど、まさかそれを受けられるとは───。
 
 なんて日だ! ヤバいここ最高!
 
■ □ ■
 
 分かり易いくらいに上気した頬と緩んだ顔で、ぼけーっとテーブル席につく。
 調度品も美しく調えられた個室の中に、僕とエヴリンド、デュアン、イベンダーとが合流し、四人でディナー会食。
 食事そのものよりもまずはホストにあたるマヌサアルバ会会頭のアルバを待っているんだけど、この人は基本的に夜に入ってからでないと人前には姿を現さない主義だそうで、マヌサアルバ会から選出された上院議員は彼女自身ではない。
 
 先に個室へと入っていたモディーナという名の背の高い正会員の女性は、仮面越しにも分かるくらいに目鼻立ちのしゅっとした美人のようだ。一見すると少女のように見えるアルバよりも随分と大人びた雰囲気で、知らぬ人が二人が並んでるところを見れば、間違いなくモディーナの方を会頭だと勘違いするだろう。
 
「少々支度に手間取っているようですね。
 皆様とのせっかくの会食です。会頭も失礼の無いよう十分以上に気を張っているのでしょう」
 口元を軽く釣り上げ、微笑みながらそう言うモディーナ。
 
 うむむ。
 いや、ここ、マヌサアルバ会の正会員はそれぞれ皆魔術の使い手だという。それでいて、かつての邪術士達のように悪逆非道な魔術実験をするでも、また王国の魔術師教会のように真理探究の道を進むでもなく、この貴族街という狭い城壁の中で「協定の範囲内」での支配者として君臨し、けれども事業形態としてはあくまでサービス業。
 この辺、実際かなりこう……奇妙ではある。
 
 これだけの術士の集まりなら、もっと強い立場、権力を得ていてもおかしくはないのだしね。
 そして何より実際に“白亜殿”へと来てそのサービスを受け、彼らと相対していると、全体にこう……蠱惑的というか、謎めいて引き込まれる雰囲気と言うか、そういうものを感じる。
 今目の前にいるモディーナもそうだ。視線一つ、口角の上げ方一つとっても、ただ見た目が整っているというだけではない魅力が溢れ出ている。
 
「そう言えばモディーナ。あなたはかなり古くからの正会員だそうですね」
 射すくめら絡め取られるかの視線を意にも介さず、デュアンがそう水を向ける。
「ええ、そうですね。我々が結社を作った最初期から居ます」
「なるほど。言わばマヌサアルバ会の歴史に最もお詳しい」
「いいえ、それほどでも」
 言葉上は否定はするも、実際問題そうなのだろう。
 
「わたしはまだ会頭のアルバ殿とはお会いして居ない。ですが魔術の使い手としてはかなり破格の実力をお持ちだそうですね」
 僕もまだ今日で二回目。最初の召集のときに見た限りでも、その実力はダークエルフの呪術師にも匹敵するかと思えた。少なくとも人間の世界でなら、大魔術師と呼ばれてもおかしくないくらいはある。
 ただ、又聞きの話としても、その実力に比例するかに“弱点”も多いらしく、何よりも闇属性の魔力に極端に偏った結果、日中と夜とでは実力含めてかなり変わってしまうとかなんとか。
 しかしその特徴は……彼女だけなのかな?
 マヌサアルバ会の正会員達がもしそのアルバと同系統の魔術師なのだとしたら、似たような特徴を持っていてもおかしくはない。
 
 そう思いながらモディーナをぼんやりと見ていると、不意に目が合って微笑み返される。
 ドキリとするような、なんとも言えない目で。
 
 そのとき、
「その目を使うのは控えて貰おう」
 と、横合いから不意にエヴリンドが口を挟む。
 
 ん? と思いエヴリンドとモディーナへと視線を送っていると、
「ああ、これは不作法な真似をして申し訳ありません。
 どうにもこの目は、自分でも完全に制御出来ぬモノ故、時折このように力が漏れ出てしまうのです。
 特に───貴方のように魅力的な方と目を合わせてしまうと……」
 と、小さく頭を下げ謝罪を示す。
 
 んん? ん? ん? んーーー? ……と考え、あっ、と気付く。
 そうか、あの目───見つめた相手に好感を持たせることの出来る【魅了の目】だったんだ!
 道理で、何か見られるとゾクゾクすると思った! 
 
「なるほど、呪文を唱えずに効果が現れるのものだったのですか。いやー、いつ使われたのか分からなかったー!」
 何故かそうはしゃいだ調子で言うデュアン。
「ダークエルフの方々には通じませんね。我々も多くは闇属性の魔力を持ちます。しかしやはり闇属性魔力の質、量、密度、純度───とにかくあらゆる点で、ダークエルフの方々にはとうてい及びません」
 確かに、僕らダークエルフは生まれながらに強い闇属性の魔力を持っている。そしてそのことが外界でのダークエルフへの悪評にも繋がっているのだけども、同じ闇属性の術士だからなのか、彼女らにはそのことへの嫌悪感や偏見は特に無いようだ。
 
 いや、というよりはむしろ……と、そう考えて頭に浮かぶのはアデリアの顔。
 いやいや、まさかまさかだよね?
 まさかこの人たちもあの……ダークエルフフェチ……?
 
 うん、まさかね!? ないよね!? そういうキャラ、アデリアさんだけでじゅーぶんですからね!?
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

『三度目の滅びを阻止せよ ―サラリーマン係長の異世界再建記―』

KAORUwithAI
ファンタジー
45歳、胃薬が手放せない大手総合商社営業部係長・佐藤悠真。 ある日、横断歩道で子供を助け、トラックに轢かれて死んでしまう。 目を覚ますと、目の前に現れたのは“おじさんっぽい神”。 「この世界を何とかしてほしい」と頼まれるが、悠真は「ただのサラリーマンに何ができる」と拒否。 しかし神は、「ならこの世界は三度目の滅びで終わりだな」と冷徹に突き放す。 結局、悠真は渋々承諾。 与えられたのは“現実知識”と“ワールドサーチ”――地球の知識すら検索できる探索魔法。 さらに肉体は20歳に若返り、滅びかけの異世界に送り込まれた。 衛生観念もなく、食糧も乏しく、二度の滅びで人々は絶望の淵にある。 だが、係長として培った経験と知識を武器に、悠真は人々をまとめ、再び世界を立て直そうと奮闘する。 ――これは、“三度目の滅び”を阻止するために挑む、ひとりの中年係長の異世界再建記である。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

処理中です...