開発者を大事にしない国は滅びるのです。常識でしょう?

ノ木瀬 優

文字の大きさ
2 / 3

しおりを挟む
【side フィミール会長】

 翌週、私達は新しく、『魔法空調機』を開発し、販売を開始する。気温が高めのこの国で、手軽に涼しい空間を作り出せる『魔法空調機』は爆発的に売れた。そして当然……。

「フィミール会長! ドッペル商会が、『魔法空調マシーン』を販売し始めました!」
「よし! 今回も完全にコピー?」
「はい! 完全にコピーされています」
「OK! それで、例の装置は?」
「テストでは問題ありませんでした。予定通り、実行できるかと。ですが……いいんですか? 本当にそんなことをして……」
「ここまできて何言ってるの。やるったらやるわよ。さ、もうひと踏ん張り! 頑張りましょう!」
「うぅ……分かりました」

 仕込みは上々。後は、ドッペル商会とライル王子に気付かれず、来週を迎える事さえできれば、何とかなる。

 私達は来週に向けて、色々と準備を進めるのだった。



【1週間後 side ドッペル会長】

 フィミール商会が開発した『魔法空調機』を『魔法空調マシーン』として販売し始めて1週間。『魔法空調マシーン』は飛ぶように売れた。

 というのも、最近は客達も、他商会で新商品が発売されても、ドップル商会から安く販売されるまで、新商品を買うのを控えていたからだ。今回も、一部の頭の固い客を除いて、多くの客がドッペル商会に『魔法空調マシーン』を買いに来た。

 もちろん、出来る商人であるわしは、それを見越して、多くの『魔法空調マシーン』を製造させておいたので、在庫不足で販売中止となるようなことはなかった。そのため、販売から1週間で、多くの客に『魔法空調マシーン』を販売する事が出来た。


 しかし……。

「ふざけんな!」
「お前らの商品だろ!! とっとと直せよ!」
「『魔法空調マシーン』のせいで、子供が熱中症になったんです! どう責任取ってくれるんですか!」

 1週間後、ドップル商会に『魔法空調マシーン』を買った客達が、クレーマーとなって押し寄せて来た。どうやら、『魔法空調マシーン』に不具合が生じて、涼しい空間を作り出すはずが、周囲の温度を上げてしまい、さらには電源を切る事が出来なくなってしまったらしい。ただでさえ暑いのに、さらに温度を上げられて、怒り狂った人たちが、店に押しかけて来たのだ。

(くそっ! どうしてこんなことに!!)

 わしは裏口から支店に入り、開発部に怒鳴りこむ。

「どうなっておるか!」
「か、会長!」
 
 開発部の者がわしに気付いて振り返った。

「そ、それが……先週、購入したフィミール商会の『魔法空調機』と先ほど購入した『魔法空調機』で微妙に差異がありまして……」
「はぁ!?」

 1週間で魔道具の仕様が変わるとは考えにくい。あるとすれば……。

「貴様……さては不良品を掴まされたな!!」

 先週購入した『魔法空調機』に初期不良があったか、だ。

「そ、それは……その……で、ですが、複製する前に行ったテストでは問題なかったのです……1週間も経ってから不具合が発生するとは、考えにくいのですが」
「黙れ! 現に、今販売されている『魔法空調機』と差異があるのだろう? それが、貴様が不良品を掴まされたという動かぬ証拠ではないか! ええい、もうよい! とにかく、今販売されている『魔法空調機』を、急いで複製するのだ!」
「は、はい!」

 わしの指示を聞いた開発部の者達は一斉に仕事にとりかかる。

(クッソ、とんだ赤字だ!)

 この1週間で『魔法空調マシーン』は300台近く売れた。それはつまり、300台もの不良品が世に出回ってしまったという事だ。わしらはそれを、無償で交換する必要がある。

(ま、まあいい。『魔法空調マシーン』は1000台以上売れる見込みだ。ここで気付けて良かったと思うべきだろう)

 そう思っていたのだが……。



【一週間後】

 商会には、先週を超える数の人々が押し寄せてきていた。

「「「ふざけるなー!!」」」
「「「家族が体調を壊した! 責任を取れ!!」」」

(なぜだ! なぜこんな!)

 わしは、先週同様、裏口から商会に入ろうとする。しかし……。

「おい。あいつ、ドッペル商会の会長じゃないか?」
「そうだ! ドッペル会長だ! おい、皆! 会長がいたぞ!」
「捕まえろ! 捕まえて責任を取らせるんだ!!」
「なっ!!??」

 わしは、半ば暴徒と化した人々に捕まってしまった。

「き、貴様ら! わしにこんなことをして、どうなるか分かっているのか! わしは――」

 『わしはライル王太子と懇意にしている。わしに暴力をふるえば、ライル王太子が黙っていない!』。そう続けるつもりだったのだが、わしの声は、人々の怒号でかき消された。

「うるせー!! こんな不良品売りつけやがって!」
「責任は取ってもらうからな!」
「「「そうだ! そうだ!」」」

 怒りの感情に支配されている人々は、わしの声など、聞く耳を持たない。

「なっ! 貴様ら! ――ぐへっ!」

 そうするうちに、わしは地面に押し倒され、踏みつけられた。

「や、やめ――ぐはっ!」
「ここに裏口があるぞ! 店の裏に入れる!」
「俺達からだまし取った金が保管されているはずだ! 取り返せ!」
「俺達の金だ! 皆! 行くぞ!!」
「「「おおぉぉおお!!!」」」

 倒れているわしを踏みつけながら、人々は店の中に入って行く。

(い、痛い! 痛い痛い痛い! や、やめてくれ…………)

 大勢の人々に踏みつけられながら、わしの意識は遠のいていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お前のせいで不幸になったと姉が乗り込んできました、ご自分から彼を奪っておいて何なの?

coco
恋愛
お前のせいで不幸になった、責任取りなさいと、姉が押しかけてきました。 ご自分から彼を奪っておいて、一体何なの─?

婚約破棄され一人寂しく家を出た私を連れ戻したのは…まだ見る事の無かった運命の相手でした。

coco
恋愛
婚約破棄され、一人寂しく家を出た私。 そんな私を連れ戻したのは…まだ見る事の無かった運命の相手でした。

私を見下す可愛い妹と、それを溺愛する婚約者はもう要らない…私は神に祈りを捧げた。

coco
恋愛
私の容姿を見下す可愛い妹と、そんな彼女を溺愛する私の婚約者。 そんな二人…もう私は要らないのです─。

あなたの瞳に映るのは妹だけ…闇の中で生きる私など、きっと一生愛されはしない。

coco
恋愛
家に籠り人前に出ない私。 そんな私にも、婚約者は居た。 だけど彼は、随分前から自身の義妹に夢中になってしまい…?

婚約破棄を突き付けられた方の事情 わかってます?

里中一叶
恋愛
学園の卒業パーティーで婚約破棄を高らかに発表する公爵子息。 された側の事情わかってますか?

妹と婚約者が口づけしているところを目撃してしまう、って……。~これはスルーできませんので終わりにします~

四季
恋愛
妹と婚約者が口づけしているところを目撃してしまう、って……。

私を婚約破棄させる事に執着した義妹は、愛する人からすっかり嫌われた上に幸せを逃しました。

coco
恋愛
私を目の敵にしている義妹。 彼女は、私を婚約破棄させる事に執着しているようで…?

元夫をはじめ私から色々なものを奪う妹が牢獄に行ってから一年が経ちましたので、私が今幸せになっている手紙でも送ろうかしら

つちのこうや
恋愛
牢獄の妹に向けた手紙を書いてみる話です。 すきま時間でお読みいただける長さです!

処理中です...