知識チートの正しい使い方 〜自由な商人として成り上ります! え、だめ? よろしい、ならば拷問だ〜

ノ木瀬 優

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第3章 躍進の始まり

88.【サーシスの傷跡5 作る物】

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「作りたいのも? ……あの子らのため、なんやな?」
「はい。今日会った5人のため。そして、明日から会う子供達のために作りたいものが3つあります。まずは――」

 俺は『作りたい物』について説明していく。

「――という物を作りたいです」

 俺の説明を聞いたミッシェルさんが難しい顔をした。

「あんさんが言っとることは理解できたつもりや。1つ目と2つ目は難しいが、作れなくはないやろ。せやけど3つ目は――」
「――簡単ではないことは理解しております。開発のために、非人道的な行為が必要であることも。それでもやる価値はあると思います」
「……覚悟はあるっちゅうことか」
「ええ」

 ミッシェルさんが俺を見る。おそらく、俺の覚悟のほどを探っているのだろう。だが、俺はもう覚悟を決めている。

「ええやろ。幸いなことに開発に必要なは揃っとる。シャル様もこちらに向かってるそうや。イリスはんがお願いすれば、協力してくれるやろ」
「……え? 王女様に協力して頂くんですか?」
「せや。今回の件、特に3つ目は開発に成功したらどえらいことになる。利権に飢えた貴族どもが黙っとるわけがない。シャル様に後ろ盾になってもらわな、わてかて対処しきれんようになるやろな」

 ……そこまでの事だという認識はなかった。

「無自覚なんかい……ほんに怖いわ。気を付けなはれ?」
「すみません。気を付けます」

 確かにこの世界に無いものだし、あれば必要とする人は多いだろう。

「まぁええ。ほんならお願い事は『材料』の準備と場所の提供ってとこか?」
「ええ。いずれ、フィリス工房で量産してもらうつもりですが、あの子達の分はなるべく早く作りたいので」
「そうやな。支店の商品開発部に話つけたる。あんさんが作るんか?」
「いえ……マリーナさん達にお願いしようかと。私は3つ目の開発に注力します」
「それがええ。……マリーナ、ミケーラ。聞いとったな?」

 ミッシェルさんがマリーナさん達を見る。

「聞いてました! お願い事ってこの事?」
「そうです。お二人のお力をお借りできればと」
「もちろん協力するよ! でも私達だけじゃ人手が足りないな……」
「そうですよね……父さん達は、手伝える?」
「もちろんだ。製造は専門外だが手伝い位なら出来るぞ」
「おお! ルークさん達が手伝ってくれるなら何とかなるよ! ふふふ。いいねぇ、楽しそう!」

 上機嫌なマリーナさんを見ていると、なぜか不安になってくる。

「……大丈夫です、アレン様。私が責任もって監督しますので」
「あ、なら安心です」
「ひどくない!?」

 マリーナさんの能力高い。ミケーラさんが監督してくれるなら大丈夫だろう。

「ユリ、この後、簡単な設計図を書きたい。手伝ってくれる?」
「任せて! っていうか、私が描く! お兄ちゃんに任せられない」
「え、いや、設計図くらいなら――」
「――いいから! 私が描くの!」

 ユリがやる気に満ちているので任せることにする。決して俺の設計図が見にくいとかそういう事ではないはずだ。



 食後、俺はユリと設計図を書いた。

「タイヤに持ち手が付くの?」
「そう。持ち手に力を入れれば前に進む仕組みさ」
「なるほど! だいたいわかった! 一回書いてみるね」
「よろしく!」

 俺が開発したい物の1つ目は『車椅子』だ。足を切り落とされたリーシアちゃんのために開発している。

「いいね! これで清書してもらえるかな?」
「分かった! それでこっちだけど……本当にこれでいいの?」
「ああ。上手に書けてるよ」
「でもこれ……何? ペン? 耳かき?」
「いいや、『竹とんぼ』っていうおもちゃだよ」
「これが? 空を飛ぶものって言ってなかったっけ!?」

 ユリが『信じられない』という目で俺を見た。まぁ実際に遊んでみなければ竹とんぼの面白さは分からないだろう。

 そう、俺が開発したい2つ目は『竹とんぼ』だ。

「まぁ、分からないよね。作ってみればわかるよ。楽しみにしてて」
「んー、まぁお兄ちゃんがそういうなら」

 ユリは納得していないものの、信じてくれたようだ。

「それじゃ、今晩中に『車椅子』の設計図を書き上げるね。明日の朝一にマリーナさんに見せられると思う」
「ありがとう! 助かるよ」

 ユリが絵だけでなく、設計図を書くのも上手くて本当に助かった。ユリに説明するために俺が書いた設計図は、すでにゴミになっている。ゴミになった理由は、設計図を見た時のユリの顔が物語っていた。

(設計図を書くのがこんなに大変だとは思わなかったよ……本当に助かった)



 翌日、設計図をマリーナさん達に見せる。

「なるほど……座った状態でタイヤについている持ち手を押して前に進むわけだ」
「はい、小型のタイヤを前に付けて安定感を増しています」
「これ、左右のタイヤは繋がってないの?」
「ええ。左右のタイヤを独立させることで、小回りが利くようにしています」
「なるほど。馬車とは違うんだね……うん! これ作れると思う。それでこっちだけど……」

 マリーナさんが竹とんぼの設計書を手に取った。

「これ、何??」
「『竹とんぼ』っていうおもちゃです」
「おもちゃ……ってことはこれで完成なの!?」
「ええ、そうですよ」
「これのどこに空を飛ぶ要素があるの?」
「それは……まぁ作ってからのお楽しみという事で。素材は竹を使ってください。ここのつなぎ目は力がかかりやすいので丈夫にお願いします」
「わ、わかったよ……とりあえず夜までにサンプル品を作ってみるね」
「お願いします」

 マリーナさんもユリと同じく、納得はしていないが信じてくれたようだ。

 製造をマリーナさんとミケーラさんに任せて、俺達は、被害者達のもとへ向かった。



 道中、ユリとバミューダ君がミッシェルさんから、『同情してはいけない』と、俺がされたのと同じ注意を受ける。ユリは驚いていたが、バミューダ君はあらかじめ分かっていたようだ。

「一緒に住んでた人が腕を無くした……です。だから、ご飯持っていったら『同情するな!』って怒られた……です」

 腕を無くしたってなんだよ、と思ったが、詳しく聞くのは怖いのでやめておく。
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