知識チートの正しい使い方 〜自由な商人として成り上ります! え、だめ? よろしい、ならば拷問だ〜

ノ木瀬 優

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第3章 躍進の始まり

90.【サーシスの傷跡7 竹とんぼ】

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 屋敷に戻ると、ミケーラさんが出迎えてくれた。

「皆様、おかえりなさい。ご帰宅そうそうで申し訳ないのですが、姉がアレン様を呼んでおります。恐れ入りますが、一緒に来て頂けますでしょうか?」
「分かりました。行きます」

 ミケーラさんに案内されて屋敷の奥に向かう。奥の部屋では、マリーナさんが『竹とんぼ』とにらめっこをしていた。

「マリーナさん、ただいま帰りました」
「おーアレン君、お帰りー。疲れている所、悪いね」
「今日はユリとバミューダ君が頑張ってくれたから、大丈夫ですよ。それより、どうしたんですか?」
「いやぁ、とりあえず、『竹とんぼ』のサンプル品をアレン君に言われた通りに作ったんだけど……これであってる? これが飛ぶイメージがわかないんだけど……」

 マリーナさんが訝し気に竹とんぼを見ている。

「ここ羽根なんだよね? 言われた通り丈夫にしたからどうやっても羽ばたけないよ? クリス様にお願いして『属性』魔法でもかければ飛ぶかもしれないけど、それじゃ長続きしないし、量産なんて絶対無理だよ?」

 この世界で飛ぶものと言ったら鳥や虫だ。『飛ぶ=羽ばたく』と思うのも無理はない。

(というか、『属性』魔法!? クリス使えるの? あ、休憩室の扉を固定していた魔法か!)

 『属性』魔法について色々聞きたかったが、我慢する。

(後でクリスに聞けばいいしね。それよりも……)

「魔法は使いませんよ。これはこうするんです」

 マリーナさんからサンプル品を受け取って両手で構える。マリーナさんとミケーラさんの視線を感じながら、俺は竹とんぼを飛ばした。

「「おおぉぉー!!!」」

 2人が歓声を上げる。

「凄い凄い凄い! 飛んだ! 確かに飛んだよ!」
「これは面白い! 空を飛ぶおもちゃなんて世界初ですよ!」
「アレン君! 私にもやらせて!」
「わ、私もやりたいです」

 マリーナさんは俺から竹とんぼを受け取ると、俺と同じように飛ばした。

「飛んだ! 飛んだよミケーラ!」
「次、私! 私にやらせてください!」

 こんなに興奮したミケーラさんは初めて見る。マリーナさんから竹とんぼを受け取ったミケーラさんも同じように飛ばした。

「これ……凄く簡単に飛ばせますね。ゆっくり降りてくる様がまた何とも……」
「次私ね! 今度は思いっきり飛ばしてみよう!」

 ミケーラさんが思案している横でマリーナさんが思いっきり竹とんぼを飛ばす。

「バキッ!」
「「あ!!」」

 竹とんぼから嫌な音がしたと思ったら、羽根と持ち手のつなぎ目が折れてしまっていた。

「ご、ごめん! ここ、丈夫にって言われてたのに……強度が足りなかったみたい」
「捩じる力がかかりますからね……つなぎ方に工夫が必要かもしれません。設計から見直しましょう」
「そうだね……量産する前に分かって良かった。アレン君、もうちょっと待ってね」
「もちろんです。よろしくお願いします」

 むしろ、1回目のサンプル品で飛ばせただけで大したものだと思う。ユリが分かりやすい設計図を書いてくれて、マリーナさん達がその通りに作ってくれたおかげだろう。

「羽根の部分ですが、後ろ側にもう少し丸みを持たせてもらえますか? その方が飛びやすいんです」
「こんな感じ?」
「そうです。それで後ろは薄くして……」
「なるほど……だいたいわかった! これで作ってみるね」
「ありがとうございます。もうすぐ夕食ですし、今日はこれくらいにして食堂に行きましょうか」
「そうだね! 行こ―!」

 ミケーラさん達と共に食堂に向かうと、ちょうど食堂の方からユリとバミューダ君がやってきた。

「あ、お兄ちゃん! 丁度いい所に!」
「お兄ちゃん、もうすぐ夕食……です。食堂行こう……です」

 どうやら俺達を呼びに来てくれたらしい。入れ違いにならなくてよかった。

「ありがとう! 一緒に行こうか」
「うん! 早くいこー」

 ユリに急かされて食堂に向かう。食堂に着くと俺達以外の人はすでに席についていた。

「すみません、お待たせしました」
「かまへんよ。そんなことより、開発具合はどんな感じや?」
「はい! 『竹とんぼ』のサンプル品を見せて頂きましたがいい感じでした。強度不足の問題はありましたが、ちゃんと飛びましたよ」
「ほんまか!? そら凄いな」
「え!? あの形で飛んだの?」

 設計図を書いたユリも驚いた顔をしている。

「どうやって飛ぶの? 見てみたい!」
「さっきも言ったけどサンプル品は強度不足で壊れちゃったんだ。明日一緒に見てみようか」
「うん!」
「わても気になるよって明日帰ってきたら皆で見よか。それで? 『車椅子』の方はどうなん?」

 ミッシェルさんの質問にミケーラさんが答えた。

「現在、サンプル品をアナベーラ商会のテスターの方達に確認して頂いている所です。終わり次第、アレン様にお見せできるかと」
「なるほど、ご苦労さん。よく一日で作ってくれたな」
「姉に発破かけ続けましたから」
「……ほんに酒が入らな優秀なんやけどなぁ」
「それは言いっこなしです」

 確認し忘れていたが、『車椅子』も順調なようだ。これで1つ目と2つ目は間に合うだろう。問題は3つ目だ。

「アレンはん、頼まれとったは、明後日には来るそうや。その翌日にはシャル様も来て下さるらしいで」
「ありがとうございます!」
「それで……ほんに出来るんか?」
「……正直、分かりません。でもやります」
「……せやな。分かった! が来次第、あんさんは3つ目の開発に専念しぃな。他の準備はわてらで何とかしたる」
「すみません。よろしくお願いします」

 1週間後に、被害者達を集めて、今回開発したものをお披露目する予定となっていた。そのためには、何としても3つ目を完成させる必要がある。

(絶対間に合わせてみせる! そのためには……やってやるさ!)

 被害者達のため、そしてクリスのために、絶対にやり遂げることを俺は心に誓った。
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