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生徒会長の憂鬱
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遠野真咲……初めてその姿を目にしたのは、高等部の入学式のことだ。
小柄で華奢な体つきで、貧血気味なのか青白い顔をしていた。
倒れやしないかと心配で目を止めた鈴ヶ宮だったが、ふと、ある人物のことが脳裏に浮かんだ。
嵯峨那香月……嵯峨那グループの当主、嵯峨那法月の三男の香月は、いろんな意味で目立つ後輩だった。
だが鈴ヶ宮がその香月と親しくなったのは、鈴ヶ宮の中等部での親衛隊の隊長毬里楓が、香月と寮の同室で、親友、そんな間柄だったからだ。
香月が亡くなる半年ほど前のことだ。
その頃鈴ヶ宮の中等部の親衛隊は存続はしていたものの、鈴ヶ宮の高等部進学とともにほぼ休止状態になっていた。
そのせいで楓の様子がおかしいことに、鈴ヶ宮は気づかなかった。
楓は、鈴ヶ宮の幼馴染だった。
親同士も親しく、幼等部の入学以前から付き合いである楓は、鈴ヶ宮の弟のような存在だった。
とはいえ、朝倉学園の幼等部からの生徒である鈴ヶ宮だが、中等部に入るなり親衛隊が作られたのには驚いた。
発足したのは当時三年生だった古藤という先輩だったが、正直鈴ヶ宮は親衛隊などという訳の分からない集団には馴染めないものを感じていた。
それでも鈴ヶ宮が親衛隊発足の許可をしたのは、一つ下の楓の勧めがあったからだ。
あとから判明したのだが、楓がそれを薦めたのは、すでに友人関係にあった香月の言葉があったからだという。
香月の二人の兄は、香月と同様に朝倉学園に在籍していた。
親衛隊発足を契機に当然のように生徒会入りした鈴ヶ宮が、生徒会室で出会ったのが、当時高等部の生徒会長を務めていた二年の嵯峨那聖月だ。
嵯峨那家の次男である聖月は、今現在でも鈴ヶ宮の憧れだ。
容姿が優れていたことで親衛隊などというものができた鈴ヶ宮だが、それまでの鈴ヶ宮は、もっと世間や自分を取り巻く環境を舐めていたと思う。
嵯峨那グループほどではないが、鈴ヶ宮の実家も大きなグループ企業の経営に携わっており、自分がその後継者になることは生まれたころから決まっていた。
祖父と同等の年齢の大人が彼をちやほやすることが当然で、その環境に甘んじていたのも事実だ。
だが聖月は、鈴ヶ宮と似た環境で育ちながら、彼が発するパワーは周りを巻き込むほどの熱量を持っていて、高等部の有りようそのものを変えた。
生徒自治を促進し、円滑に学園生活が進むように変えた。
親衛隊などがある風習は変わらなくても、昔のような犯罪まがいの制裁や、集団リンチは無くなった。
たった一人の行動がそれほどまでに世界を変えるのかと、鈴ヶ宮は熱い思いでそれを見つめた。
今でも憧れの存在である聖月だが、鈴ヶ宮にとっては今も昔も雲の上の人物だ。
残念ながら聖月の卒業で、そのクリーンさは失われてしまったが、鈴ヶ宮は及ばなくても彼に少しでも近づきたいと、必死に努力してきた。
特に聖月の精錬で献身的な親衛隊の様子は、今でも朝倉学園の伝説である。
だからこそ香月は、鈴ヶ宮に親衛隊を薦めたのだと思う。
親衛隊は時に厄介だが、運営の方法によってはこれ以上ない心強い味方になると知っていたのだ。
少なくとも楓が運営していた鈴ヶ宮の中等部の親衛隊は、まぎれ間もなく鈴ヶ宮の援助隊だった。
鈴ヶ宮が高等部に約一か月たち、生徒会の書記として選ばれ、忙しい毎日を過ごしていたある日のこと、高等部の生徒会室に香月が現れた。
楓の様子がおかしいという。
恐ろしいくらいに塞ぎこんで、不眠と食欲不振が続いているという。
同室だからこそ楓の様子に気付いた香月は、幼馴染である鈴ヶ宮の助けを求めていたのだ。
早速、その週末、楓に会いに行った鈴ヶ宮は、楓の変貌に絶句した。
もともとほっそりとした体が驚くほどにやせ細っている。
だがいくら理由を聞いても、楓は答えなかった。
それから2週間後、楓は自主退学した。
楓が交通事故で亡くなったのは、さらにその1か月後だった。
運転手の話によると、楓は夜間、急に道路に飛び出してきたという。
事故ということで落ち着いたが、警察の話では自殺の可能性が高いという話だったという。
通夜の晩、楓の両親から泣きながら事情を聴かれたが、鈴ヶ宮には何も答えられなかった。
同じ晩、香月の姿を見た。
香月は泣きはらした目を、鈴ヶ宮に向けた。
鈴ヶ宮が生きている香月を見たのは、それが最後だった。
小柄で華奢な体つきで、貧血気味なのか青白い顔をしていた。
倒れやしないかと心配で目を止めた鈴ヶ宮だったが、ふと、ある人物のことが脳裏に浮かんだ。
嵯峨那香月……嵯峨那グループの当主、嵯峨那法月の三男の香月は、いろんな意味で目立つ後輩だった。
だが鈴ヶ宮がその香月と親しくなったのは、鈴ヶ宮の中等部での親衛隊の隊長毬里楓が、香月と寮の同室で、親友、そんな間柄だったからだ。
香月が亡くなる半年ほど前のことだ。
その頃鈴ヶ宮の中等部の親衛隊は存続はしていたものの、鈴ヶ宮の高等部進学とともにほぼ休止状態になっていた。
そのせいで楓の様子がおかしいことに、鈴ヶ宮は気づかなかった。
楓は、鈴ヶ宮の幼馴染だった。
親同士も親しく、幼等部の入学以前から付き合いである楓は、鈴ヶ宮の弟のような存在だった。
とはいえ、朝倉学園の幼等部からの生徒である鈴ヶ宮だが、中等部に入るなり親衛隊が作られたのには驚いた。
発足したのは当時三年生だった古藤という先輩だったが、正直鈴ヶ宮は親衛隊などという訳の分からない集団には馴染めないものを感じていた。
それでも鈴ヶ宮が親衛隊発足の許可をしたのは、一つ下の楓の勧めがあったからだ。
あとから判明したのだが、楓がそれを薦めたのは、すでに友人関係にあった香月の言葉があったからだという。
香月の二人の兄は、香月と同様に朝倉学園に在籍していた。
親衛隊発足を契機に当然のように生徒会入りした鈴ヶ宮が、生徒会室で出会ったのが、当時高等部の生徒会長を務めていた二年の嵯峨那聖月だ。
嵯峨那家の次男である聖月は、今現在でも鈴ヶ宮の憧れだ。
容姿が優れていたことで親衛隊などというものができた鈴ヶ宮だが、それまでの鈴ヶ宮は、もっと世間や自分を取り巻く環境を舐めていたと思う。
嵯峨那グループほどではないが、鈴ヶ宮の実家も大きなグループ企業の経営に携わっており、自分がその後継者になることは生まれたころから決まっていた。
祖父と同等の年齢の大人が彼をちやほやすることが当然で、その環境に甘んじていたのも事実だ。
だが聖月は、鈴ヶ宮と似た環境で育ちながら、彼が発するパワーは周りを巻き込むほどの熱量を持っていて、高等部の有りようそのものを変えた。
生徒自治を促進し、円滑に学園生活が進むように変えた。
親衛隊などがある風習は変わらなくても、昔のような犯罪まがいの制裁や、集団リンチは無くなった。
たった一人の行動がそれほどまでに世界を変えるのかと、鈴ヶ宮は熱い思いでそれを見つめた。
今でも憧れの存在である聖月だが、鈴ヶ宮にとっては今も昔も雲の上の人物だ。
残念ながら聖月の卒業で、そのクリーンさは失われてしまったが、鈴ヶ宮は及ばなくても彼に少しでも近づきたいと、必死に努力してきた。
特に聖月の精錬で献身的な親衛隊の様子は、今でも朝倉学園の伝説である。
だからこそ香月は、鈴ヶ宮に親衛隊を薦めたのだと思う。
親衛隊は時に厄介だが、運営の方法によってはこれ以上ない心強い味方になると知っていたのだ。
少なくとも楓が運営していた鈴ヶ宮の中等部の親衛隊は、まぎれ間もなく鈴ヶ宮の援助隊だった。
鈴ヶ宮が高等部に約一か月たち、生徒会の書記として選ばれ、忙しい毎日を過ごしていたある日のこと、高等部の生徒会室に香月が現れた。
楓の様子がおかしいという。
恐ろしいくらいに塞ぎこんで、不眠と食欲不振が続いているという。
同室だからこそ楓の様子に気付いた香月は、幼馴染である鈴ヶ宮の助けを求めていたのだ。
早速、その週末、楓に会いに行った鈴ヶ宮は、楓の変貌に絶句した。
もともとほっそりとした体が驚くほどにやせ細っている。
だがいくら理由を聞いても、楓は答えなかった。
それから2週間後、楓は自主退学した。
楓が交通事故で亡くなったのは、さらにその1か月後だった。
運転手の話によると、楓は夜間、急に道路に飛び出してきたという。
事故ということで落ち着いたが、警察の話では自殺の可能性が高いという話だったという。
通夜の晩、楓の両親から泣きながら事情を聴かれたが、鈴ヶ宮には何も答えられなかった。
同じ晩、香月の姿を見た。
香月は泣きはらした目を、鈴ヶ宮に向けた。
鈴ヶ宮が生きている香月を見たのは、それが最後だった。
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