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短篇 彼は私のことを男性だと思っています
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「葵っ。
俺さぁ。
もぉ、苦しーよ。
黙ってるつもりだったけど、耐えられそうにないんだ……」
ただいま気温マイナス五度。
寒さが嫌いな私は、普段だったら絶対に外で立ち話などしたりしない。
だけど、ここ数日沈痛な表情を続けていた親友に呼び出されたとなれば、話は別だ。
ヒートテックの二枚重ね、ニット、コート、ニット帽、手袋などなど、幾重にも重ね着しているから何とかこの寒さでもしのげている。
とはいえ露出している顔がもげそうなほど寒い。
凍傷になる。
どうでもいいからとっとと話せやと、友情と寒さを天秤で比べてしまって若干友情が負けつつある今。
その親友に思いっきり抱きしめられるという異常事態に、私は身も心も凍り付きそうになった。
ぎゅむ……と、肉厚の固い胸から、雄の匂いが漂っている。
まぁこいつは彼女切らしたことないほどもてる男だから、その匂いは決して臭くはない。
むしろ何かのコロンの香りもしていていい匂いなくらいだ。
だがさすがに密着していると、成長しきって完全に大人の体になった親友……長浜渉の体臭が、直に鼻腔を刺激する。
くらくらとして、思わずこのままずっと抱きしめられていたいなんて考えてしまうことは、絶対に秘密だ。
絶対に秘密だが、この親友に抱きしめられるなんて、もしや、秘密がばれたのか? と、緊張して体が硬くなる。
「わた……るっ!!
苦し……い!!
離せよ!!」
私はできるだけ低い声で渉を威嚇する。
バレていないことを願いながら。
そんな私の思いを知ってか知らずか、渉は私の体臭をくんかくんかと鼻の穴をおっぴろげて嗅ぎまわる。
「……ぅ……ん。
馬鹿!
やめろって!!」
私は羞恥で顔を赤くしながら、すごい力で抱きしめる渉から、逃れようと必死に動いた。
「葵っ!!
いい匂いだ……!!」
「人の話を、聞けよっ!!」
私は思い切って渉のおでこに頭突きをかました。
普段は頭一つ分低くて、そんなことをしても絶対届かない&よけられる自信があるが、ほら今、抱きしめられて足も地面から離れてる状態だから、私の頭はラクラク渉のおでこに激突した。
「のぉぉぉぉぉぉ!!!」
がちんと頭と頭のぶつかる大きな音の後、私の体はリリースされた。
問題は思った以上の衝撃で目の前に星が散っていることだが、まぁとりあえずは拘束から逃れることができた。
良しとしよう。
「なに血迷ってんだ、馬鹿!!」
私は解放された体を、一生懸命伸ばして痺れを振り払う。
なんて馬鹿力!
……バレてないよなぁ?
私は渉の顔をうかがったが、特に不振がってる様子はない。
ほっとした半面、微妙に傷つく。
確かにぺちゃだし……ガリだけど。
あんなに密着してたのに、私が女って気付かないの?
なんて、理不尽な怒りを親友に感じた。
そう、私、犬塚葵。
どこにでもいる男子高校生な私だが、実際は女……。
生まれた時から性別を詐称してきた、ちょっと訳ありな男子高校生なのだった。
日本舞踊の家元という特殊で女系家族の外孫である私だが、親が駆け落ちの末授かった私と兄。
女系家族なのに私以外の女児がいないという危機的状況で、ある奇跡が起きた。
病院の出生証明書の書類が、なんの間違いか男児と書かれていたのだ。
お家騒動と遺産相続問題で混迷を極めていたため、両親は私が奪われる未来を憂いて、その間違った書類をそのままに役所に出生届を出した。
騒動が収まれば、戸籍を訂正する心算だったと聞かされている。
だが17年たった今も、家元の襲名問題の決着がついてない。
そのせいで私は今も男のままだ。
というかもう本当のところ、女になるのは、諦めていた。
それに今更女に戻れと言われても、男としての生活しか、私は知らない。
というか、クラスメイトの女子たちを見ていても、その中で馴染む自分が想像できない。
無理だ。
ちなみにそんな複雑な状況下にいる私を先ほど抱きしめた、ご乱心中の親友は長浜渉。
何をとちくるって、奴は私を抱きしめたのか。
バレてるなら、ゆゆしき事態だし、バレてないならそれはそれで問題だろう。
「葵……嫌いにならないで……」
渉は目にいっぱいの涙をためて、私を見つめる。
……うぅ!!
なんだかんだ言ったって、私はこの瞳に弱い。
捨てられた子猫のようだ。
渉は決して女々しい方ではないが、私と一緒にいるときだけ妙に甘えてくるのだから、たちが悪い。
「っ……嫌いとか、言ってないじゃん!!
抱きしめられんのが嫌なんだよ!
だから、やめろって!!」
再び私を抱きしめようとしてくるので、私は逃げるように後ずさった。
「葵……好きだ……好きだ! 好きだ! 好きだ!!
頼むから俺のモンになってよ!!」
「無理だ!!」
私は当然ながら、拒絶した。
そもそも下事情に緩いこいつが、本当に私のことを好きだなんて、疑わしい。
毎度連れてる女が違うような奴の告白なんて、聞けたもんじゃない。
それに、考えてみてほしい。
万が一、私に対する気持ちが本当だったとする。
そうなると、渉が好きなのは、「男」の葵だ。
女の葵じゃない!!
それが分かっていて、どうして承諾できるだろう。
「同性愛なんて、ごめんだっ!!」
私はきっぱりと渉にそう言った。
「オレ、同性愛とかじゃないもん。
葵愛だもん!!
葵しか好きじゃない!!
俺は葵が男でも、女でも、ニューハーフでも、イヌでも猫でも、羊だったって、好きだ!!」
……何気に人外をぶち込んでくるなと言いたい。
羊の恋人って、もはや変態以外の何物でもない。
とはいえ私はそんな突っ込みどころ満載の告白が、嬉しくてたまらなかった。
私が渉に抱いている気持ちは、最初から友情なんてものではなかった。
女がかかわると最低のヤリチン野郎の渉だが、男として側にいると、完璧なんだよ、これが。
顔よし、性格よし、頭もよくってスポーツ万能。
休みの日、私が不良に絡まれているときに突然現れた渉が助けてくれた時は、本当にマ、ジ、で、かっこよかった。
女だったら惚れるな……とそう思い、そのあとで、あ、私、女だった! と我に返る。
ずっと否定していたけど、いつの間にか、好きになってたんだと思う。
だけど、私は男じゃなくちゃいけない。
どこからばれるか分からないから、誰にも話すこともできない。
結ばれなくても好きな人と相思相愛なんて、夢みたいだった。
私は環境には引きずられずいつでも好きになるのは男の子ばっかりだったから、正直恋したり結婚したりは諦めていた。
そんな私が相思相愛……これで嬉しくない女の子がいたら、どうか教えてほしい。
でも、永久に渉とは結ばれない運命。
しかし渉の乱心から1週間が過ぎた放課後。
私から拒絶された渉は、もとのヤリチン野郎に戻ることなく、しんみりとうなだれた生活を送っていた。
遠くから切なそうに私を見つめる渉に、手を差し伸べたい気持ちを押しやり、一人で帰宅しようと校庭を歩いていた。
なんということはない、正門に向かって歩いていただけなのだが、その時。
野球部のグラウンドの方角から、「危ない!」って声が聞こえた。
その言葉もむなしく、野球部の部員が放った本塁打弾が……私の頭を直撃した。
「ふぁ……ん!!
やぁぁん!!
ぁぁぁ……ん!!」
甘い声が室内に響いていた。
あ、兄さん、AV見てる……。
きっと興奮して、前みたいにヘッドホンが外れちゃったに違いない。
女の人の、甘ったるい嬌声が響く。
私はもうろうとしながらその声を聴いた。
「ふぁ……やぁぁん」
それにしても……声が大きいし、やらしくて、聞いてるだけで恥ずかしくなる。
「……かわい……。
もっと声聞かせて?」
渉によく似た声の、男優さん。
ドキドキする。
そしてその声に続いて、ぴちゃぴちゃと、水の音が響く。
下半身……はっきり言えば女の子の大事なトコ、が、熱い。
なんだか……きもち……いい。
「ダ……メ……!!」
何がダメなのかもわからずに甘い声が、響く。
あれ?
今の声、私の??
今まで出したことない高くてかわいい声。
衝撃ではっと目を開いた私は、ありえない光景に、身動きできなかった。
私は裸だった。
唯一学校指定の白い靴下だけが残る自分の姿が、目に痛い。
それと……それが一番の問題なのだが、私の親友の渉(と、はっきりわかる馴染のある明るい色の髪の頭)が、私の股間に顔を埋めていた。
渉の舌が、私の花芯の襞をゆっくりとなぞる。
そのたびにぴちゃぴちゃと渉の唾液の音が、ひびき、それに合わせて快感が私の体を攻め立てた。
「ひぃゃ……!!
あん……!!」
そういえば昔、聞いたことがあった。
渉とエッチした女の子のこと。
初めてなのに気持ちよくって、何度も何度もイカされたって。
だから、渉とエッチしたがる女の子は多い。
噂を信じた人は、処女を渉で捨てたがる。
もちろん渉に夢中になって、付きまとってくる女の子もいたりする。
でもそんな話、遠いおとぎ話みたいなものだった。
だって、私が渉とエッチするなんて有り得ないから。
だから想像すら、してなかった。
渉の舌が、こんなに器用に動くなんて……知りたくなかった。
舌だけじゃない。
唇が私の身体の感じるところを次々に暴いていく。
ちゅちゅ……と吸い付き、弄り、次第に渉の唾液とは違う、淫らな液が私の体の奥からあふれてくるのが分かった。
初めての感覚に翻弄される私をあざ笑うように、渉の舌が、私の中に入ってくる。
「あん……あん……ヤダ!!」
「かわい……葵……俺のだ……。
俺が葵のこと、女の子にしちゃった……。
責任とる……。
責任とるから……」
何のことかわからなかったけど、私は気持ちが良すぎて渉の言うことに流された。
「うう……ひっく。
わたるぅぅぅ。
あん。
女の子……。
渉の女の子にしてぇぇぇぇぇ!!!」
渉は満足そうに微笑んだ。
それに、私のささやかな胸のふくらみを、いとおしそうに愛撫する。
股間から渉が顔を上げ、そのターゲットを胸へと移したようだ。
温かさを失ったソコが寂しさでうごめいくと、それを補うように、渉のごつごつとした指が、それをなぞる。
切なくて足を閉じようとするけど、渉の体が邪魔で、それができない。
渉は私の腰を渉の太ももの上に持ち上げた。
行き場がなくて、私は仕方なく両足を渉の体に巻き付ける。
渉が指を私の中でくちゅくちゅと動かすから、切なくて私はきゅっと足に力をこめる。
私が渉の体を締め付けるたびに、渉は嬉しそうに声を漏らす。
乳首がはれ上がりそうになるほど吸い付いているその口で、笑みを漏らす。
軽くかまれると、背筋が反り返るくらいに気持ちがいい。
私身体はうごめいて、渉の指を美味しそうにしゃぶっている。
ぐちゅりぐちゅりと私の内側を渉がこすりあげると、私は渉の手の動きに合わせて、ゆらゆらと腰を動かした。
「葵……やらし……」
気持ちよくて、頭が蕩けそうだった……。
自分がこんなに淫らだなんて、知らなかった。
「……いれるよ……?」
私が気持ちよくて泣いている最中に、渉の声が耳元で聞こえた。
ふと気づくと、指で解され、愛液でぐずぐずになったその場所に、固くて熱い怒張があてがわれているのが分かった。
「え……? あ?
んんんんん!!!!」
私の体が、渉によって開かれていく。
中をぱんぱんに広げながら、こすりながら、私の中に渉が入り込んでくる。
「葵……葵……!!!」
二人の体が溶け合うような感覚に、私は夢中になり、渉のモノをキュウキュウに締め付けた。
渉の分身を体で味わいながら、私は初めて感じる深い快感に、夢中で体を動かした。
気持ちよくて、どんなに与えられても満足できない自分がいる。
「わたるぅぅぅぅ……」
渉が腰を動かすたび、ぐちゅぐちゅと愛液があふれ、体と体がぶつかるたびに、ぱんぱんと乾いた音が静かな部屋に響き渡る。
そんな風に渉との行為におぼれていた私が自分を取り戻したのは、その次の日の朝。
気が付くと私は渉に抱きしめられながら、裸でベッドに横たわっていた。
あらぬところがジンジンと痛み、体が重かった。
状況を知ろうと、眠っている渉の手を外して体を起こすと、体中に渉のキスマークが付けられていて、驚く。
そして体を起こしたことで、私の中に注がれていた渉の精液がこぼれだしてきて、もっと驚く。
卑猥なにおいが、いまだに部屋の中に充満していた。
一体どれだけの時間セックスに興じていたのか、考えるだに恐ろしい。
「葵……起きたの?」
渉に腰を引き寄せられ、私は昨日の蛮行を思い出して、体を震わせた。
「葵……すっごく良かった。
結婚しよ?
俺、葵を女の子にしちゃった責任とるから、安心して……」
そうやって、私のむき出しの肩に渉はキスを落とした。
「渉が、女の子に、した??」
そういえば、昨日もそんなことを言っていた気がするな……と、私は渉に聞き返した。
「ウン……。
俺……葵に『同性愛は無理』って言われてから、毎日神様にお願いしてたんだ。
葵を女の子にしてください、女の子にしてくれたら、もう葵以外とエッチ出来なくても構いませんって!!
まさか神様が、本当に女の子にしてくれるなんて、奇跡だ……!!!」
渉は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
そういえば、そうだったと、私は思い出す。
渉はこういうやつだった。
決して馬鹿じゃない。
むしろ学業的には頭がいい部類になる。
国立最高学府ににだって、私大の名門校にだって合格するくらいには頭がいい。
だけど、たまにこういう非常識なことを言ってよこすから不思議だ。
しかしそういう天然素材の渉のおかげで、私は今、渉と交際している。
渉は本気で私に夢中な様子で、交際が始まると毎日私にべったりと付きまとっていて、この調子だと浮気の心配もない。
ただ問題は、セックスの度に「葵のお尻、きゅっと引き締まってて固い……もともと男の子だもんね、カッコイイ……」とか「ちっちゃいおっぱい……よく見なきゃ気付かないくらいかわいい……」とか「葵の肩幅広くて安心する……」などなど、本人にとっては褒め言葉を連発してくる。
ディスられてるような気がするんだけど、と、私は渉のほっぺたを指で思いっきり捻った。
そう、渉は今でも私のことを「男性」だと信じていた。
「女体化した男性」そんなカテゴリは二次元にしか存在しないことを、渉はまだ知らない。
……教えない。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
野球の硬球が頭に直撃してなんともないなんて……葵の頭は鉄でできているんじゃないか??
葵が異常なので、皆さまは真似をしないでください。
命の危険があるので、良い子は救急車を呼ぼう!!
俺さぁ。
もぉ、苦しーよ。
黙ってるつもりだったけど、耐えられそうにないんだ……」
ただいま気温マイナス五度。
寒さが嫌いな私は、普段だったら絶対に外で立ち話などしたりしない。
だけど、ここ数日沈痛な表情を続けていた親友に呼び出されたとなれば、話は別だ。
ヒートテックの二枚重ね、ニット、コート、ニット帽、手袋などなど、幾重にも重ね着しているから何とかこの寒さでもしのげている。
とはいえ露出している顔がもげそうなほど寒い。
凍傷になる。
どうでもいいからとっとと話せやと、友情と寒さを天秤で比べてしまって若干友情が負けつつある今。
その親友に思いっきり抱きしめられるという異常事態に、私は身も心も凍り付きそうになった。
ぎゅむ……と、肉厚の固い胸から、雄の匂いが漂っている。
まぁこいつは彼女切らしたことないほどもてる男だから、その匂いは決して臭くはない。
むしろ何かのコロンの香りもしていていい匂いなくらいだ。
だがさすがに密着していると、成長しきって完全に大人の体になった親友……長浜渉の体臭が、直に鼻腔を刺激する。
くらくらとして、思わずこのままずっと抱きしめられていたいなんて考えてしまうことは、絶対に秘密だ。
絶対に秘密だが、この親友に抱きしめられるなんて、もしや、秘密がばれたのか? と、緊張して体が硬くなる。
「わた……るっ!!
苦し……い!!
離せよ!!」
私はできるだけ低い声で渉を威嚇する。
バレていないことを願いながら。
そんな私の思いを知ってか知らずか、渉は私の体臭をくんかくんかと鼻の穴をおっぴろげて嗅ぎまわる。
「……ぅ……ん。
馬鹿!
やめろって!!」
私は羞恥で顔を赤くしながら、すごい力で抱きしめる渉から、逃れようと必死に動いた。
「葵っ!!
いい匂いだ……!!」
「人の話を、聞けよっ!!」
私は思い切って渉のおでこに頭突きをかました。
普段は頭一つ分低くて、そんなことをしても絶対届かない&よけられる自信があるが、ほら今、抱きしめられて足も地面から離れてる状態だから、私の頭はラクラク渉のおでこに激突した。
「のぉぉぉぉぉぉ!!!」
がちんと頭と頭のぶつかる大きな音の後、私の体はリリースされた。
問題は思った以上の衝撃で目の前に星が散っていることだが、まぁとりあえずは拘束から逃れることができた。
良しとしよう。
「なに血迷ってんだ、馬鹿!!」
私は解放された体を、一生懸命伸ばして痺れを振り払う。
なんて馬鹿力!
……バレてないよなぁ?
私は渉の顔をうかがったが、特に不振がってる様子はない。
ほっとした半面、微妙に傷つく。
確かにぺちゃだし……ガリだけど。
あんなに密着してたのに、私が女って気付かないの?
なんて、理不尽な怒りを親友に感じた。
そう、私、犬塚葵。
どこにでもいる男子高校生な私だが、実際は女……。
生まれた時から性別を詐称してきた、ちょっと訳ありな男子高校生なのだった。
日本舞踊の家元という特殊で女系家族の外孫である私だが、親が駆け落ちの末授かった私と兄。
女系家族なのに私以外の女児がいないという危機的状況で、ある奇跡が起きた。
病院の出生証明書の書類が、なんの間違いか男児と書かれていたのだ。
お家騒動と遺産相続問題で混迷を極めていたため、両親は私が奪われる未来を憂いて、その間違った書類をそのままに役所に出生届を出した。
騒動が収まれば、戸籍を訂正する心算だったと聞かされている。
だが17年たった今も、家元の襲名問題の決着がついてない。
そのせいで私は今も男のままだ。
というかもう本当のところ、女になるのは、諦めていた。
それに今更女に戻れと言われても、男としての生活しか、私は知らない。
というか、クラスメイトの女子たちを見ていても、その中で馴染む自分が想像できない。
無理だ。
ちなみにそんな複雑な状況下にいる私を先ほど抱きしめた、ご乱心中の親友は長浜渉。
何をとちくるって、奴は私を抱きしめたのか。
バレてるなら、ゆゆしき事態だし、バレてないならそれはそれで問題だろう。
「葵……嫌いにならないで……」
渉は目にいっぱいの涙をためて、私を見つめる。
……うぅ!!
なんだかんだ言ったって、私はこの瞳に弱い。
捨てられた子猫のようだ。
渉は決して女々しい方ではないが、私と一緒にいるときだけ妙に甘えてくるのだから、たちが悪い。
「っ……嫌いとか、言ってないじゃん!!
抱きしめられんのが嫌なんだよ!
だから、やめろって!!」
再び私を抱きしめようとしてくるので、私は逃げるように後ずさった。
「葵……好きだ……好きだ! 好きだ! 好きだ!!
頼むから俺のモンになってよ!!」
「無理だ!!」
私は当然ながら、拒絶した。
そもそも下事情に緩いこいつが、本当に私のことを好きだなんて、疑わしい。
毎度連れてる女が違うような奴の告白なんて、聞けたもんじゃない。
それに、考えてみてほしい。
万が一、私に対する気持ちが本当だったとする。
そうなると、渉が好きなのは、「男」の葵だ。
女の葵じゃない!!
それが分かっていて、どうして承諾できるだろう。
「同性愛なんて、ごめんだっ!!」
私はきっぱりと渉にそう言った。
「オレ、同性愛とかじゃないもん。
葵愛だもん!!
葵しか好きじゃない!!
俺は葵が男でも、女でも、ニューハーフでも、イヌでも猫でも、羊だったって、好きだ!!」
……何気に人外をぶち込んでくるなと言いたい。
羊の恋人って、もはや変態以外の何物でもない。
とはいえ私はそんな突っ込みどころ満載の告白が、嬉しくてたまらなかった。
私が渉に抱いている気持ちは、最初から友情なんてものではなかった。
女がかかわると最低のヤリチン野郎の渉だが、男として側にいると、完璧なんだよ、これが。
顔よし、性格よし、頭もよくってスポーツ万能。
休みの日、私が不良に絡まれているときに突然現れた渉が助けてくれた時は、本当にマ、ジ、で、かっこよかった。
女だったら惚れるな……とそう思い、そのあとで、あ、私、女だった! と我に返る。
ずっと否定していたけど、いつの間にか、好きになってたんだと思う。
だけど、私は男じゃなくちゃいけない。
どこからばれるか分からないから、誰にも話すこともできない。
結ばれなくても好きな人と相思相愛なんて、夢みたいだった。
私は環境には引きずられずいつでも好きになるのは男の子ばっかりだったから、正直恋したり結婚したりは諦めていた。
そんな私が相思相愛……これで嬉しくない女の子がいたら、どうか教えてほしい。
でも、永久に渉とは結ばれない運命。
しかし渉の乱心から1週間が過ぎた放課後。
私から拒絶された渉は、もとのヤリチン野郎に戻ることなく、しんみりとうなだれた生活を送っていた。
遠くから切なそうに私を見つめる渉に、手を差し伸べたい気持ちを押しやり、一人で帰宅しようと校庭を歩いていた。
なんということはない、正門に向かって歩いていただけなのだが、その時。
野球部のグラウンドの方角から、「危ない!」って声が聞こえた。
その言葉もむなしく、野球部の部員が放った本塁打弾が……私の頭を直撃した。
「ふぁ……ん!!
やぁぁん!!
ぁぁぁ……ん!!」
甘い声が室内に響いていた。
あ、兄さん、AV見てる……。
きっと興奮して、前みたいにヘッドホンが外れちゃったに違いない。
女の人の、甘ったるい嬌声が響く。
私はもうろうとしながらその声を聴いた。
「ふぁ……やぁぁん」
それにしても……声が大きいし、やらしくて、聞いてるだけで恥ずかしくなる。
「……かわい……。
もっと声聞かせて?」
渉によく似た声の、男優さん。
ドキドキする。
そしてその声に続いて、ぴちゃぴちゃと、水の音が響く。
下半身……はっきり言えば女の子の大事なトコ、が、熱い。
なんだか……きもち……いい。
「ダ……メ……!!」
何がダメなのかもわからずに甘い声が、響く。
あれ?
今の声、私の??
今まで出したことない高くてかわいい声。
衝撃ではっと目を開いた私は、ありえない光景に、身動きできなかった。
私は裸だった。
唯一学校指定の白い靴下だけが残る自分の姿が、目に痛い。
それと……それが一番の問題なのだが、私の親友の渉(と、はっきりわかる馴染のある明るい色の髪の頭)が、私の股間に顔を埋めていた。
渉の舌が、私の花芯の襞をゆっくりとなぞる。
そのたびにぴちゃぴちゃと渉の唾液の音が、ひびき、それに合わせて快感が私の体を攻め立てた。
「ひぃゃ……!!
あん……!!」
そういえば昔、聞いたことがあった。
渉とエッチした女の子のこと。
初めてなのに気持ちよくって、何度も何度もイカされたって。
だから、渉とエッチしたがる女の子は多い。
噂を信じた人は、処女を渉で捨てたがる。
もちろん渉に夢中になって、付きまとってくる女の子もいたりする。
でもそんな話、遠いおとぎ話みたいなものだった。
だって、私が渉とエッチするなんて有り得ないから。
だから想像すら、してなかった。
渉の舌が、こんなに器用に動くなんて……知りたくなかった。
舌だけじゃない。
唇が私の身体の感じるところを次々に暴いていく。
ちゅちゅ……と吸い付き、弄り、次第に渉の唾液とは違う、淫らな液が私の体の奥からあふれてくるのが分かった。
初めての感覚に翻弄される私をあざ笑うように、渉の舌が、私の中に入ってくる。
「あん……あん……ヤダ!!」
「かわい……葵……俺のだ……。
俺が葵のこと、女の子にしちゃった……。
責任とる……。
責任とるから……」
何のことかわからなかったけど、私は気持ちが良すぎて渉の言うことに流された。
「うう……ひっく。
わたるぅぅぅ。
あん。
女の子……。
渉の女の子にしてぇぇぇぇぇ!!!」
渉は満足そうに微笑んだ。
それに、私のささやかな胸のふくらみを、いとおしそうに愛撫する。
股間から渉が顔を上げ、そのターゲットを胸へと移したようだ。
温かさを失ったソコが寂しさでうごめいくと、それを補うように、渉のごつごつとした指が、それをなぞる。
切なくて足を閉じようとするけど、渉の体が邪魔で、それができない。
渉は私の腰を渉の太ももの上に持ち上げた。
行き場がなくて、私は仕方なく両足を渉の体に巻き付ける。
渉が指を私の中でくちゅくちゅと動かすから、切なくて私はきゅっと足に力をこめる。
私が渉の体を締め付けるたびに、渉は嬉しそうに声を漏らす。
乳首がはれ上がりそうになるほど吸い付いているその口で、笑みを漏らす。
軽くかまれると、背筋が反り返るくらいに気持ちがいい。
私身体はうごめいて、渉の指を美味しそうにしゃぶっている。
ぐちゅりぐちゅりと私の内側を渉がこすりあげると、私は渉の手の動きに合わせて、ゆらゆらと腰を動かした。
「葵……やらし……」
気持ちよくて、頭が蕩けそうだった……。
自分がこんなに淫らだなんて、知らなかった。
「……いれるよ……?」
私が気持ちよくて泣いている最中に、渉の声が耳元で聞こえた。
ふと気づくと、指で解され、愛液でぐずぐずになったその場所に、固くて熱い怒張があてがわれているのが分かった。
「え……? あ?
んんんんん!!!!」
私の体が、渉によって開かれていく。
中をぱんぱんに広げながら、こすりながら、私の中に渉が入り込んでくる。
「葵……葵……!!!」
二人の体が溶け合うような感覚に、私は夢中になり、渉のモノをキュウキュウに締め付けた。
渉の分身を体で味わいながら、私は初めて感じる深い快感に、夢中で体を動かした。
気持ちよくて、どんなに与えられても満足できない自分がいる。
「わたるぅぅぅぅ……」
渉が腰を動かすたび、ぐちゅぐちゅと愛液があふれ、体と体がぶつかるたびに、ぱんぱんと乾いた音が静かな部屋に響き渡る。
そんな風に渉との行為におぼれていた私が自分を取り戻したのは、その次の日の朝。
気が付くと私は渉に抱きしめられながら、裸でベッドに横たわっていた。
あらぬところがジンジンと痛み、体が重かった。
状況を知ろうと、眠っている渉の手を外して体を起こすと、体中に渉のキスマークが付けられていて、驚く。
そして体を起こしたことで、私の中に注がれていた渉の精液がこぼれだしてきて、もっと驚く。
卑猥なにおいが、いまだに部屋の中に充満していた。
一体どれだけの時間セックスに興じていたのか、考えるだに恐ろしい。
「葵……起きたの?」
渉に腰を引き寄せられ、私は昨日の蛮行を思い出して、体を震わせた。
「葵……すっごく良かった。
結婚しよ?
俺、葵を女の子にしちゃった責任とるから、安心して……」
そうやって、私のむき出しの肩に渉はキスを落とした。
「渉が、女の子に、した??」
そういえば、昨日もそんなことを言っていた気がするな……と、私は渉に聞き返した。
「ウン……。
俺……葵に『同性愛は無理』って言われてから、毎日神様にお願いしてたんだ。
葵を女の子にしてください、女の子にしてくれたら、もう葵以外とエッチ出来なくても構いませんって!!
まさか神様が、本当に女の子にしてくれるなんて、奇跡だ……!!!」
渉は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
そういえば、そうだったと、私は思い出す。
渉はこういうやつだった。
決して馬鹿じゃない。
むしろ学業的には頭がいい部類になる。
国立最高学府ににだって、私大の名門校にだって合格するくらいには頭がいい。
だけど、たまにこういう非常識なことを言ってよこすから不思議だ。
しかしそういう天然素材の渉のおかげで、私は今、渉と交際している。
渉は本気で私に夢中な様子で、交際が始まると毎日私にべったりと付きまとっていて、この調子だと浮気の心配もない。
ただ問題は、セックスの度に「葵のお尻、きゅっと引き締まってて固い……もともと男の子だもんね、カッコイイ……」とか「ちっちゃいおっぱい……よく見なきゃ気付かないくらいかわいい……」とか「葵の肩幅広くて安心する……」などなど、本人にとっては褒め言葉を連発してくる。
ディスられてるような気がするんだけど、と、私は渉のほっぺたを指で思いっきり捻った。
そう、渉は今でも私のことを「男性」だと信じていた。
「女体化した男性」そんなカテゴリは二次元にしか存在しないことを、渉はまだ知らない。
……教えない。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
野球の硬球が頭に直撃してなんともないなんて……葵の頭は鉄でできているんじゃないか??
葵が異常なので、皆さまは真似をしないでください。
命の危険があるので、良い子は救急車を呼ぼう!!
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