4 / 7
第四話
しおりを挟む
「なぁなぁ、佐倉。
これって、須崎っぽくね?」
ある日のこと。
千寿はベータの同級生、田中馨に話しかけられた。
田中は千寿の毒舌にも物おじしない、千寿の友人だ。
その時田中が手にしてたのは、所謂週刊誌で……。
「人気作家、熱愛」そんなあおりの文句と、目元の隠された須崎と女性が、仲睦まじく夜の街を歩く写真が掲載されていた。
お相手は、28歳OL。
桜花女学院大学卒。
いわゆるお嬢様大学だ。
「……はっ」
良かったじゃないか。
そう思うのだが。
「なぁ、佐倉、どう思う?」
「……知るかよ!」
千寿はそのまま教室から飛び出した。
朝のホームルームをすっぽかして向かったのは、誰もいない屋上だ。
あんな奴、嫌いだ……。
それなのに。
「……もう、嫌になる……!」
涙が溢れて仕方なかった。
なんだって自分はオメガなんてメンドクサイものに生まれたんだろう。
そしたら、こんな気持ちも知らずに済んだのに。
週末、いつもなら須崎の自宅に出かける時間になっても、千寿は自室に閉じこもって、ぼんやりと時間を過ごしていた。
「千寿ちゃん?
いいの? 慧さんのお家に行かなくて」
「……大丈夫」
心配して様子を見に来た母親に、千寿は無理に笑顔を作った。
たぶん両親も、あの記事を見たに違いない。
それ以上千寿に強くは言わなかった。
千寿はベットに倒れこんで、ふて寝を決めこむ。
しかし昼過ぎ、ノックもなく部屋のドアが開けられ。
驚いて顔を上げると、入り口には珍しく眉を吊り上げた須崎が立っている。
「えっ! なっ!」
「何してるんだ。
お前は。
約束も守らないで!」
「は?
もういいだろ?
あんたにゃ熱愛の女性がいるんだから!」
ぽすっ、と、千寿はベット脇のクッションを須崎に投げつける。
「センジュ……妬いてるのか?」
「……んなわけ、ないだろ!!」
千寿は須崎から背を向けて体を丸めた。
「ほら……機嫌なおせよ」
ぎしりとベットが軋み、須崎がベッドサイドに腰かけたのが分かった。
そして。
須崎の指が、千寿の軟らかい髪を梳くように頭を撫でる。
千寿は須崎の言葉を無視するように、さらに体を丸めた。
と、須崎はため息をついて、ベットサイドから離れた。
やっぱりな?
帰ればいい、慧なんて!
もう婚約なんて、破棄だ!
こっちから、破棄してやる!!
千寿は唇を噛みしめた。
そしてドアを閉じる音と……ガチャリと、施錠される音が響いた。
え?
驚いて、千寿は振り向いた。
出ていったと思ったのに。
須崎は部屋に残っていて。
「なん、で……?」
千寿が問うと、須崎は唇の片方を上げて……、ニヤリと笑みを浮かべた。
「そりゃ……義父上と義母上に見られると、まずいから、な?」
千寿は思わず、ごくりと喉を鳴らした。
密室にいると、須崎の甘い匂いが千寿を攻め立てる。
見つめているのがつらくなるくらいに。
しかし今の須崎……慧からは、目が離せなかった。
いつもののほほんとした雰囲気が嘘のように、鋭く熱い瞳で見つめられ、千寿は金縛りにあったかのように身動きが出来なかったのだ。
気が付いた時には、慧は千寿の体を覆うように体を落としていて。
声を出そうにも、慧の唇が千寿のそれに重ねられ、口腔の中を舌で思うように愛撫されて。
突然受けた激しく濃厚なキスに、千寿は体の奥が熱を帯びるのを感じた。
「あ……や、だ……」
恥ずかしそうに身を捩ると、ようやく体を起こした慧は、ため息をついて悪態をつく。
「センジュ……くそっ。
煽るな!
こっちは必死に我慢してるってのに!」
「あお、る……?」
一体、何のこと?
千寿は瞳を潤ませながら、慧を覗き込む。
慧は千寿の鼻をつまんで。
「ふがっ……もぉ! 何?」
「……ほんと自覚ないから、お前は!」
慧は千寿のほっそりとした体を抱きかかえながら、婚約者の唇にもう一度キスを落とすのだった。
これって、須崎っぽくね?」
ある日のこと。
千寿はベータの同級生、田中馨に話しかけられた。
田中は千寿の毒舌にも物おじしない、千寿の友人だ。
その時田中が手にしてたのは、所謂週刊誌で……。
「人気作家、熱愛」そんなあおりの文句と、目元の隠された須崎と女性が、仲睦まじく夜の街を歩く写真が掲載されていた。
お相手は、28歳OL。
桜花女学院大学卒。
いわゆるお嬢様大学だ。
「……はっ」
良かったじゃないか。
そう思うのだが。
「なぁ、佐倉、どう思う?」
「……知るかよ!」
千寿はそのまま教室から飛び出した。
朝のホームルームをすっぽかして向かったのは、誰もいない屋上だ。
あんな奴、嫌いだ……。
それなのに。
「……もう、嫌になる……!」
涙が溢れて仕方なかった。
なんだって自分はオメガなんてメンドクサイものに生まれたんだろう。
そしたら、こんな気持ちも知らずに済んだのに。
週末、いつもなら須崎の自宅に出かける時間になっても、千寿は自室に閉じこもって、ぼんやりと時間を過ごしていた。
「千寿ちゃん?
いいの? 慧さんのお家に行かなくて」
「……大丈夫」
心配して様子を見に来た母親に、千寿は無理に笑顔を作った。
たぶん両親も、あの記事を見たに違いない。
それ以上千寿に強くは言わなかった。
千寿はベットに倒れこんで、ふて寝を決めこむ。
しかし昼過ぎ、ノックもなく部屋のドアが開けられ。
驚いて顔を上げると、入り口には珍しく眉を吊り上げた須崎が立っている。
「えっ! なっ!」
「何してるんだ。
お前は。
約束も守らないで!」
「は?
もういいだろ?
あんたにゃ熱愛の女性がいるんだから!」
ぽすっ、と、千寿はベット脇のクッションを須崎に投げつける。
「センジュ……妬いてるのか?」
「……んなわけ、ないだろ!!」
千寿は須崎から背を向けて体を丸めた。
「ほら……機嫌なおせよ」
ぎしりとベットが軋み、須崎がベッドサイドに腰かけたのが分かった。
そして。
須崎の指が、千寿の軟らかい髪を梳くように頭を撫でる。
千寿は須崎の言葉を無視するように、さらに体を丸めた。
と、須崎はため息をついて、ベットサイドから離れた。
やっぱりな?
帰ればいい、慧なんて!
もう婚約なんて、破棄だ!
こっちから、破棄してやる!!
千寿は唇を噛みしめた。
そしてドアを閉じる音と……ガチャリと、施錠される音が響いた。
え?
驚いて、千寿は振り向いた。
出ていったと思ったのに。
須崎は部屋に残っていて。
「なん、で……?」
千寿が問うと、須崎は唇の片方を上げて……、ニヤリと笑みを浮かべた。
「そりゃ……義父上と義母上に見られると、まずいから、な?」
千寿は思わず、ごくりと喉を鳴らした。
密室にいると、須崎の甘い匂いが千寿を攻め立てる。
見つめているのがつらくなるくらいに。
しかし今の須崎……慧からは、目が離せなかった。
いつもののほほんとした雰囲気が嘘のように、鋭く熱い瞳で見つめられ、千寿は金縛りにあったかのように身動きが出来なかったのだ。
気が付いた時には、慧は千寿の体を覆うように体を落としていて。
声を出そうにも、慧の唇が千寿のそれに重ねられ、口腔の中を舌で思うように愛撫されて。
突然受けた激しく濃厚なキスに、千寿は体の奥が熱を帯びるのを感じた。
「あ……や、だ……」
恥ずかしそうに身を捩ると、ようやく体を起こした慧は、ため息をついて悪態をつく。
「センジュ……くそっ。
煽るな!
こっちは必死に我慢してるってのに!」
「あお、る……?」
一体、何のこと?
千寿は瞳を潤ませながら、慧を覗き込む。
慧は千寿の鼻をつまんで。
「ふがっ……もぉ! 何?」
「……ほんと自覚ないから、お前は!」
慧は千寿のほっそりとした体を抱きかかえながら、婚約者の唇にもう一度キスを落とすのだった。
1
あなたにおすすめの小説
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
冒険者の幼馴染と、ずっとその隣にいたい男の話
くろねこや
BL
お前の隣で、一緒に歳をとって生きていくんだと思ってた。
例えお前が誰かと結婚しても、子どもが生まれても。
◇
15歳になると神様から魔法が与えられる世界で、たった一人魔法が使えないイスト。
火魔法と氷魔法を授かった幼馴染は冒険者になった。
オレにあるのは畑や動物たちをちょこっと元気にする力だけ…。
ところが、そこへ謎の老婆が現れて…。
え? オレも冒険者になれるの?
“古代種様”って何?!
※『横書き』方向に設定してお読みください。
※『設定 こぼれ話』は情報を追加・修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる