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ベリアモルゼの街の賑わい
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「お嬢様?
きつくありませんか?」
レンタールに問いかけられながら、私はきゅ、と髪に結び付けられたリボンを確認するように、鏡の前でくるりと回った。
いつもながら、レンタールの変装はすごい!!
「ユーノス、どーお??
おかしくない??」
「……いいえ!
全く違和感がありません。
驚きました。
これなら殿下のお顔を知っている者に見られても、気付かれる心配はないと思います」
ユーノスに太鼓判を押され、私は笑顔で頷いた。
地下道が発見されて早一か月。
すぐにも王宮の地下道を使って外に行ってみたかったけど、ユーノスが「安全を確認できるまではお連れすることはできません」と、頑として首を縦に振らなかったのだ。
ユーノスとはいうと、「いざというときの逃げ道を確保しておきましょう」と言って、毎日のように地下道に潜っては地下道自体の安全の確認や、出口周辺の調査などを行っていた。
そのうち城下町へも出かけていくようになり、お菓子などお土産を買ってきてくれたりしたんだけど。
ここ黒宮には図書館すらなくて……畑の世話以外にすることがなくて時間を持て余していた私は、毎日毎日ユーノスに強請り続けた結果、ようやく昨晩、お許しが出たのだ。
だけど問題はもう一つあった。
それは私が目立たない恰好をする、ってこと。
ブーデリアでは男性の長髪が珍しくないけど、ベリアモルゼでは男性は短髪が基本。
しかも、私の紫の瞳も珍しい。
でも、髪を切るわけにもいかないし(切りたくないし)。
どうしようかと困っていたら、レンタールの提案で女装しましょうってことになったのだ。
それはもしかしたら、いつも男装している私のための気遣いなのかもっておもうんだけど。
だけどなにも知らないユーノスも、その意見に「その方がいいかもしれません」と賛同したものだから、私は女装することになった。
ん?
でも男装している私がさらに女装って……??
………まぁいいか!
髪は、ベリアモルゼの女官たちを参考に結い上げてもらい、瞳の色を隠すために眼鏡を着用。
そんな私の姿を見て、ユーノスはため息をつきながら「これでは………目立ちすぎますね? もっと地味にすることは不可能でしょうか」と、うっかり呟いた。
わ、だめ! レンタールにそんなこと言っちゃったら……!!!!
と思ったけど時はすでに遅く。
レンタールの瞳が、「いったい誰に向かって言ってるの?」とばかりに、キラリン! と輝いた。
そして……1時間以上かけて、レンタール渾身の別人メークが完成した。
もはや私の顔のパーツは一体どこに……っていう仕上がり。
肌全体を浅黒く色を塗って庶民感を出し、瞼は少しぼてってしてて、眠そうに少し閉じられていて。
口はリップラインを少しはみ出して、大きめな口に。
鼻とほっぺたに入れられたハイライトとシャドウの効果で輪郭まで変わって見えた。
「出来上がりました」とレンタールの手が止まった瞬間、あまりの凄さに感激して拍手する。
ちょっぴり疲れたけど、びっくりと感動で目が覚めたよ!
「じゃあ、参りましょうか、カルディア様」
ユーノスは私の手を取って地下抗に導いた。
梯子はユーノスが新しいものを設置しているから、私は危なげなく地下抗に降りることができた。
レンタールは何かあったときのためにお留守番だ。
残念だけど仕方ない。
地下道は少しじめじめしていて、地上よりもひんやりしていた。
服を地下道で汚さないように、マントを上から羽織っていたから、ちょうど良い感じ。
1時間と少し地下を歩き、そのあとはユーノスが準備していた馬車で城下町まで向かう。
宮殿を取り囲むように広がる王都に着くと、そこは大国に相応しい美しく豪華で、活気に満ちた情景が広がっていた。
「うわぁ、すごいね、ユーノス!!
人がいっぱい!!」
馬車の窓から見える人の多さに、圧倒される。
ブーデリアの王都なんて比べ物にならない。
それに軒を連ねる建物の大きくて美しいことこの上ない。
だけどユーノスはそれには答えず、軽い咳ばらいをした。
「違いますよ??
ディーナ様」
ユーノスに言われて、思い出す。
そうだった!
王都に一歩入ったら……。
「そうだった。ユリウス気を付けるね」
私はディーナ、王都郊外に住む、商家の娘。
ユリウスはその従者。
気を付けなきゃ……!!
「うわぁ!!
美味しそう!!
これ何かな???」
「おっ、お嬢ちゃん。
コッタルパン、知らねぇのか??」
露店の店先に、山のように積まれた美味しそうなパン。
人気なのだろう、次々と買われて山が小さくなる。
「スゲーうまいぞ!!
中に甘いドンダクリームが入ってるんだ。
一回食べたら病みつきだぞ??」
「ユリウス、ドンダクリームだって!!
美味しそう!!!!」
私がユーノスへと振り向くと、ユーノスは「………ディーナ様、お召し上がりになられますか??」と尋ねた。
「うん!!!! いいの???」
ユーノスは懐の中から小銭を取り出して、店の主人にコッタルパンを一つ頼んでくれた。
薄茶の紙の中のコッタルパン。
美味しそう!!
パンを買った人たちは、歩きながら食べはじめた。
私も街の人たちみたいに、その場で包みを開いてカプリと噛みついてみた。
歩きながら食べるとお行儀の先生には怒られそうだけど、郷に入れば郷に従わなきゃ!!
「! 甘い!!
美味しい!!
美味しいよ??
ユリウス!!!!」
パンの中に入っている白くトロリたしたクリームが、口の中に広がる。
気を付けながら食べていたけど、口の端にクリームがついてしまったみたい。
ユーノスは、私の汚れた口元を、子供にするみたいにハンカチで拭ってくれた。
……結構恥ずかしい……。
それから、露店でお野菜の種を買い足した。
それと卵をいくつか。
食べもするけど半分は卵から孵して中庭で育てるつもり。
半年ぐらいでニワトリさんになるから、楽しみだなあ。
お昼になって、二人で街の定食屋さんに入ることにした。
価格が安くて庶民に大人気の定食屋さんで、私たちがお店に向かったときにはすでに外に順番待ちの列ができていた。
「もうすこし早くきたら良かったですね」
列の長さをみて、ユーノスがこぼした。
「大丈夫!!
こんなに人気なら、きっとすっごく美味しんだろーね??
すっごく楽しみ!!!!」
結局1時間くらい店の前で順番待ちしていたけど、その間もすごく楽しかった。
私たちの前に並んでいたコートニーさん夫妻もこの店に来るのは初めてなんだって!!
「この店の子豚のシチューが食べたくて、ゲオルークから来たのよ?」
「ええ!?
そんな遠くから!!
すごく有名なんですね。
このお店のシチュー!!」
うろ覚えだけど、王都から300キロぐらいある北の町の名前に、びっくりする。
「たまたま商いで王都に来ることになったから、王都に行ったことのあるやつにいろいろ聞いてみたんだよ。
そしたら全員が全員、この店のシチューはぜひ食べるべきだって勧められたもんでな……」
「すごーい!!
うわー、早く食べたい………!!」
私があんまりはしゃいでたからだろう。
コートニーさんたちの順番が来たとき、旦那さんが「どうだい、せっかく仲良くなったんだ。一緒に食べないか?」と誘ってくれた。
「えー!?
ご一緒してもいいんですか???」
「もちろんだよ。
嬢ちゃんみたいに若いこと食べれるなんて、そうそうないことだしな」
「確かに、こんな格好のよいお兄さんとも食べれる機会はそうはないわね!」
コートニーの奥さんが、ユーノスを見上げて言う。
今は庶民っぽいみすぼらしい服に身をやつしてのに、なんとなくそういうファッションかと見えてしまってるから、ユーノスはすごい。
私たちはコートニーさんたちのご厚意に甘えて、一緒のテーブルに座った。
早速テーブルに運ばれてきた、子豚のシチュー。
「はぁぁぁぁ!!!!!
し、あ、わ、せ!!!!」
お肉が絶妙に柔らかくて、白い濃厚なクリーミーなソースが下に心地よい後味を残す。
お野菜も柔らかくてほくほく。
「嬢ちゃん、ずいぶん美味しそうに食べるなぁ」
「だって!!!!
本当に美味しいですもん。
このシチュー!!!
クリームソースが本当になめらかで口の中で溶けちゃいますし。
子豚のお肉も噛むとすっと切れる位柔らかくて絶品ですし。
ほんのり甘い人参にジャガイモがほくほく美味しく煮込まれていて。
ホントにアツアツで、外で待っている間に冷えてしまった体も温まって。
それなのに、お値段はたった12ガルですよ??
12ガル!!!!
ほんとに、信じられません!!!
この味なら私、100ガル位の価値はあると思います!!!
コートニーさんたちもそう思いませんか??
はぁぁ!!!
ほんと、こんなシチューが毎日食べられる王都の方々が、羨ましいです!!!」
私は子豚シチューのおいしさを、全力で主張した。
だけどふと見ると、コートニー夫妻、目を開けて固まってる。
あ、あれ???
私何か、変なこと言っちゃったかな???
すると、ちょうど私たちの座る席の向い側の席にいた青年も、くすくすと笑い声を漏らした。
えーっと………あの人、絶対私のこと笑ってるよね??
私は少し首を傾け、青年の様子を窺い見た。
………うん。
一番若いあの青年が、ご主人様かな?
青年はユーノス並みにいかつい5人の男性とともに、大きなテーブルに腰かけていたんだけど、普通の人にしては背筋がピンとしてて、明らかに軍人。
一人くらいならごまかせるかもだけど、5人もいたらごまかしようもない。
もしかしたら偉い人がお忍びで来てるのかも……?
その推理を裏付けるように、席を立って私の前に着た青年は、洋服こそ庶民風だけど、立ち居振る舞いが、どうしたって、お貴族様。
そんなじゃ、皆にばれちゃうし、もしかしたらすでにばれてるかもしれないよ??
レンタールから、「ダメです!! 心から庶民になり切ってもらわないと!!! もっと役になり切って!!」なんて怒られちゃうよ??
「お嬢さん。
笑ってしまって申し訳ない。
シチューの感想がすごく面白かったので、つい笑ってしまった。
決して貴方を馬鹿にしたのではない。
信じてほしい。
むしろ、感心しているんだ、私は。
確かにあなたの言う様に、この店のシチューは絶品だった。
私もあなたのように、熱弁をふるえたなら、きっとそうしていただろう。
……お詫びになるかは分からないが、ここの代金は私に持たせてもらえないか?
楽しましてもらったお礼だ」
ふふと微笑むと、青年はテーブルに置いてあった伝票を取ろうとした。
ビックリするくらい気障な人だな、なんて思ってその青年をよく見てみると、なんだかどこかで見た気がする。
いったい誰だったかな?
えーっと、えーっと。
金髪の髪、碧の大きな瞳に気障なセリフ。
金髪の髪、碧の大きな瞳に気障なセリフ。
………そうだあれは兄さんの身代わりし始めた時に1度だけ会ったことある………。
「あっ!
サグリスのベーレン王子!!」
あの頃よりずいぶん成長してて分からなかったけど、きっとそうだ……。
って………!!!!!
あわわわわわ!!!!
忘れてた!!!!!!
これは非常にマズイ……どう考えても言ってはいけないことだった。
助けを求めるようにユーノスを見るけど、ユーノスも片手を頭にあてて、しまった!! って表情。
そして……。
「……今、なんとおっしゃったかな?
お嬢さん」
そう呟いたベーレン王子の口元はまだ笑顔を浮かべていたけど、目元はもうぜんぜん笑っていなかった。
きつくありませんか?」
レンタールに問いかけられながら、私はきゅ、と髪に結び付けられたリボンを確認するように、鏡の前でくるりと回った。
いつもながら、レンタールの変装はすごい!!
「ユーノス、どーお??
おかしくない??」
「……いいえ!
全く違和感がありません。
驚きました。
これなら殿下のお顔を知っている者に見られても、気付かれる心配はないと思います」
ユーノスに太鼓判を押され、私は笑顔で頷いた。
地下道が発見されて早一か月。
すぐにも王宮の地下道を使って外に行ってみたかったけど、ユーノスが「安全を確認できるまではお連れすることはできません」と、頑として首を縦に振らなかったのだ。
ユーノスとはいうと、「いざというときの逃げ道を確保しておきましょう」と言って、毎日のように地下道に潜っては地下道自体の安全の確認や、出口周辺の調査などを行っていた。
そのうち城下町へも出かけていくようになり、お菓子などお土産を買ってきてくれたりしたんだけど。
ここ黒宮には図書館すらなくて……畑の世話以外にすることがなくて時間を持て余していた私は、毎日毎日ユーノスに強請り続けた結果、ようやく昨晩、お許しが出たのだ。
だけど問題はもう一つあった。
それは私が目立たない恰好をする、ってこと。
ブーデリアでは男性の長髪が珍しくないけど、ベリアモルゼでは男性は短髪が基本。
しかも、私の紫の瞳も珍しい。
でも、髪を切るわけにもいかないし(切りたくないし)。
どうしようかと困っていたら、レンタールの提案で女装しましょうってことになったのだ。
それはもしかしたら、いつも男装している私のための気遣いなのかもっておもうんだけど。
だけどなにも知らないユーノスも、その意見に「その方がいいかもしれません」と賛同したものだから、私は女装することになった。
ん?
でも男装している私がさらに女装って……??
………まぁいいか!
髪は、ベリアモルゼの女官たちを参考に結い上げてもらい、瞳の色を隠すために眼鏡を着用。
そんな私の姿を見て、ユーノスはため息をつきながら「これでは………目立ちすぎますね? もっと地味にすることは不可能でしょうか」と、うっかり呟いた。
わ、だめ! レンタールにそんなこと言っちゃったら……!!!!
と思ったけど時はすでに遅く。
レンタールの瞳が、「いったい誰に向かって言ってるの?」とばかりに、キラリン! と輝いた。
そして……1時間以上かけて、レンタール渾身の別人メークが完成した。
もはや私の顔のパーツは一体どこに……っていう仕上がり。
肌全体を浅黒く色を塗って庶民感を出し、瞼は少しぼてってしてて、眠そうに少し閉じられていて。
口はリップラインを少しはみ出して、大きめな口に。
鼻とほっぺたに入れられたハイライトとシャドウの効果で輪郭まで変わって見えた。
「出来上がりました」とレンタールの手が止まった瞬間、あまりの凄さに感激して拍手する。
ちょっぴり疲れたけど、びっくりと感動で目が覚めたよ!
「じゃあ、参りましょうか、カルディア様」
ユーノスは私の手を取って地下抗に導いた。
梯子はユーノスが新しいものを設置しているから、私は危なげなく地下抗に降りることができた。
レンタールは何かあったときのためにお留守番だ。
残念だけど仕方ない。
地下道は少しじめじめしていて、地上よりもひんやりしていた。
服を地下道で汚さないように、マントを上から羽織っていたから、ちょうど良い感じ。
1時間と少し地下を歩き、そのあとはユーノスが準備していた馬車で城下町まで向かう。
宮殿を取り囲むように広がる王都に着くと、そこは大国に相応しい美しく豪華で、活気に満ちた情景が広がっていた。
「うわぁ、すごいね、ユーノス!!
人がいっぱい!!」
馬車の窓から見える人の多さに、圧倒される。
ブーデリアの王都なんて比べ物にならない。
それに軒を連ねる建物の大きくて美しいことこの上ない。
だけどユーノスはそれには答えず、軽い咳ばらいをした。
「違いますよ??
ディーナ様」
ユーノスに言われて、思い出す。
そうだった!
王都に一歩入ったら……。
「そうだった。ユリウス気を付けるね」
私はディーナ、王都郊外に住む、商家の娘。
ユリウスはその従者。
気を付けなきゃ……!!
「うわぁ!!
美味しそう!!
これ何かな???」
「おっ、お嬢ちゃん。
コッタルパン、知らねぇのか??」
露店の店先に、山のように積まれた美味しそうなパン。
人気なのだろう、次々と買われて山が小さくなる。
「スゲーうまいぞ!!
中に甘いドンダクリームが入ってるんだ。
一回食べたら病みつきだぞ??」
「ユリウス、ドンダクリームだって!!
美味しそう!!!!」
私がユーノスへと振り向くと、ユーノスは「………ディーナ様、お召し上がりになられますか??」と尋ねた。
「うん!!!! いいの???」
ユーノスは懐の中から小銭を取り出して、店の主人にコッタルパンを一つ頼んでくれた。
薄茶の紙の中のコッタルパン。
美味しそう!!
パンを買った人たちは、歩きながら食べはじめた。
私も街の人たちみたいに、その場で包みを開いてカプリと噛みついてみた。
歩きながら食べるとお行儀の先生には怒られそうだけど、郷に入れば郷に従わなきゃ!!
「! 甘い!!
美味しい!!
美味しいよ??
ユリウス!!!!」
パンの中に入っている白くトロリたしたクリームが、口の中に広がる。
気を付けながら食べていたけど、口の端にクリームがついてしまったみたい。
ユーノスは、私の汚れた口元を、子供にするみたいにハンカチで拭ってくれた。
……結構恥ずかしい……。
それから、露店でお野菜の種を買い足した。
それと卵をいくつか。
食べもするけど半分は卵から孵して中庭で育てるつもり。
半年ぐらいでニワトリさんになるから、楽しみだなあ。
お昼になって、二人で街の定食屋さんに入ることにした。
価格が安くて庶民に大人気の定食屋さんで、私たちがお店に向かったときにはすでに外に順番待ちの列ができていた。
「もうすこし早くきたら良かったですね」
列の長さをみて、ユーノスがこぼした。
「大丈夫!!
こんなに人気なら、きっとすっごく美味しんだろーね??
すっごく楽しみ!!!!」
結局1時間くらい店の前で順番待ちしていたけど、その間もすごく楽しかった。
私たちの前に並んでいたコートニーさん夫妻もこの店に来るのは初めてなんだって!!
「この店の子豚のシチューが食べたくて、ゲオルークから来たのよ?」
「ええ!?
そんな遠くから!!
すごく有名なんですね。
このお店のシチュー!!」
うろ覚えだけど、王都から300キロぐらいある北の町の名前に、びっくりする。
「たまたま商いで王都に来ることになったから、王都に行ったことのあるやつにいろいろ聞いてみたんだよ。
そしたら全員が全員、この店のシチューはぜひ食べるべきだって勧められたもんでな……」
「すごーい!!
うわー、早く食べたい………!!」
私があんまりはしゃいでたからだろう。
コートニーさんたちの順番が来たとき、旦那さんが「どうだい、せっかく仲良くなったんだ。一緒に食べないか?」と誘ってくれた。
「えー!?
ご一緒してもいいんですか???」
「もちろんだよ。
嬢ちゃんみたいに若いこと食べれるなんて、そうそうないことだしな」
「確かに、こんな格好のよいお兄さんとも食べれる機会はそうはないわね!」
コートニーの奥さんが、ユーノスを見上げて言う。
今は庶民っぽいみすぼらしい服に身をやつしてのに、なんとなくそういうファッションかと見えてしまってるから、ユーノスはすごい。
私たちはコートニーさんたちのご厚意に甘えて、一緒のテーブルに座った。
早速テーブルに運ばれてきた、子豚のシチュー。
「はぁぁぁぁ!!!!!
し、あ、わ、せ!!!!」
お肉が絶妙に柔らかくて、白い濃厚なクリーミーなソースが下に心地よい後味を残す。
お野菜も柔らかくてほくほく。
「嬢ちゃん、ずいぶん美味しそうに食べるなぁ」
「だって!!!!
本当に美味しいですもん。
このシチュー!!!
クリームソースが本当になめらかで口の中で溶けちゃいますし。
子豚のお肉も噛むとすっと切れる位柔らかくて絶品ですし。
ほんのり甘い人参にジャガイモがほくほく美味しく煮込まれていて。
ホントにアツアツで、外で待っている間に冷えてしまった体も温まって。
それなのに、お値段はたった12ガルですよ??
12ガル!!!!
ほんとに、信じられません!!!
この味なら私、100ガル位の価値はあると思います!!!
コートニーさんたちもそう思いませんか??
はぁぁ!!!
ほんと、こんなシチューが毎日食べられる王都の方々が、羨ましいです!!!」
私は子豚シチューのおいしさを、全力で主張した。
だけどふと見ると、コートニー夫妻、目を開けて固まってる。
あ、あれ???
私何か、変なこと言っちゃったかな???
すると、ちょうど私たちの座る席の向い側の席にいた青年も、くすくすと笑い声を漏らした。
えーっと………あの人、絶対私のこと笑ってるよね??
私は少し首を傾け、青年の様子を窺い見た。
………うん。
一番若いあの青年が、ご主人様かな?
青年はユーノス並みにいかつい5人の男性とともに、大きなテーブルに腰かけていたんだけど、普通の人にしては背筋がピンとしてて、明らかに軍人。
一人くらいならごまかせるかもだけど、5人もいたらごまかしようもない。
もしかしたら偉い人がお忍びで来てるのかも……?
その推理を裏付けるように、席を立って私の前に着た青年は、洋服こそ庶民風だけど、立ち居振る舞いが、どうしたって、お貴族様。
そんなじゃ、皆にばれちゃうし、もしかしたらすでにばれてるかもしれないよ??
レンタールから、「ダメです!! 心から庶民になり切ってもらわないと!!! もっと役になり切って!!」なんて怒られちゃうよ??
「お嬢さん。
笑ってしまって申し訳ない。
シチューの感想がすごく面白かったので、つい笑ってしまった。
決して貴方を馬鹿にしたのではない。
信じてほしい。
むしろ、感心しているんだ、私は。
確かにあなたの言う様に、この店のシチューは絶品だった。
私もあなたのように、熱弁をふるえたなら、きっとそうしていただろう。
……お詫びになるかは分からないが、ここの代金は私に持たせてもらえないか?
楽しましてもらったお礼だ」
ふふと微笑むと、青年はテーブルに置いてあった伝票を取ろうとした。
ビックリするくらい気障な人だな、なんて思ってその青年をよく見てみると、なんだかどこかで見た気がする。
いったい誰だったかな?
えーっと、えーっと。
金髪の髪、碧の大きな瞳に気障なセリフ。
金髪の髪、碧の大きな瞳に気障なセリフ。
………そうだあれは兄さんの身代わりし始めた時に1度だけ会ったことある………。
「あっ!
サグリスのベーレン王子!!」
あの頃よりずいぶん成長してて分からなかったけど、きっとそうだ……。
って………!!!!!
あわわわわわ!!!!
忘れてた!!!!!!
これは非常にマズイ……どう考えても言ってはいけないことだった。
助けを求めるようにユーノスを見るけど、ユーノスも片手を頭にあてて、しまった!! って表情。
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「……今、なんとおっしゃったかな?
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