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2024年4月

4月1日

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朝起きると、今日はどこに行くのかと長男に聞かれたので仕事だと答えると、仕事を休んでまた遊びに行こうと誘われた。
俺も遊びに行きたかったが仕事の約束があると断った。
毎日仕事って可哀想だねと言っていたが、俺もそう思う。

出社すると、東からのメモが机に置いてあった。
インパクトドライバーが動かなくなったので予備のものを出しておいて欲しいとのことだった。
倉庫から探して動作を確認してメモを貼り付けて机に置いておいた。
始業時間前だったが、今日の依頼人に電話して外回りに出た。
依頼人のアパートに着くと、約一年ぶりに会う大家の峰さんが待っていた。
毎年のことだが疲れた顔をしていた。
今回の部屋に住んでいた学生がかなりの問題がある人だったようで、会ってから帰るまでずっと話していた。
部屋に入ると少し独特の臭いがした。
畳のある部屋だからかと思っていたが、その畳も一部変色していた。
言いたいことがわかったのか、「死んではいないから、布団が敷きっぱなしだったようで」と怒っていた。
依頼された押し入れの襖を外して車に積み込んで、書類を書いてもらうために部屋に戻ると、風呂場を覗き込んでいた。
自分で掃除したが黒く変色している所はプロに任せることにすると話していた。
どんな感じなのかと思い、明かりをつけて見るとTVでよくあるゴミ屋敷の風呂場という雰囲気だった。
仕事柄見ることもあるが、一二を争うほど酷い様相だった。
戸を閉めようとすると、ガラスにヒビが入っていた。
この戸は別の所に依頼するのかと聞くと、気づいていなかったようで仕事が増えた。
居室に戻り書類を書いてもらうと、壁紙も畳も替えないといけないと悲壮な顔をしていた。
畳は裏返すか表替えをすれば大丈夫じゃないかと聞くと、液体をこぼして放ったらかしにしてたみたいで、ちょとカビっぽいでしょと。
マイナスドライバーを差し込み上げてみると確かに畳の下はカビていた。
新しい畳が必要なら手配することも出来ると聞くと、見積もりを頼まれた。
古い建物だからと安くしてたがもう学生に貸すのはやめることにすると話していた。

帰社すると、東も戻って来たところだった。
荒れた部屋の依頼だったと話すと、自分も昨日、北島に呼び出されて行ってきたらドライバー動かなくなって手でネジを外して疲れたと話していた。
洋室のクローゼットの戸が開かなくて、壊して開けたら中から女物の服や下着が出てきて臭かったと不快そうにしていた。
最近ゴミ屋敷多い気がする。
今日回収してきた襖と風呂場の戸は東が工房に運んでくれた。
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