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33話 経験値
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「千尋さんが未婚のまま蓮さんを産んだのにはそういう事情があったのですね」
「……うん」
家を出てからの一年半、本当に沢山の事を自分で決めてきた。
そのたび、自分なりに真剣に悩んで出した決断だから後悔はしていない。
でも。
「蓮を産むって決めてからずっと……不安だった。はたして一人でやっていけるのかって、私なんかがちゃんと母親になれるの? って……考え始めたら夜も眠れなくなるくらい……怖かった」
「千尋さん……」
私は浮かんだ涙をごまかすように鼻をすする。
「でもね、私っ……この選択だけは間違いじゃなかったって思ってる。蓮を産んで……蓮の母親になれてホントに良かったってっ」
勢いあまって偽装駆け落ちなんてしちゃったけど、蓮を産むと決めたことは間違いじゃなかったって自信をもって言える。
だって、あんなにかわいい蓮の母親になれたんだから。
子育ては想像以上に大変で投げ出したくなる時だって正直ある。
それでも、やっぱり我が子はかわいい。
愛しくて愛しくてたまらない。
あの日、諦めなくて良かった。
蓮に会えて本当に良かった。
私は蓮を絶対に、絶対に幸せにする!
「わっ、私っ……間違ってないよねっ……!」
「……ええ」
冬馬先生は優しく背中をさすってくれる。
私は先生の広い胸に抱かれて涙を流した。
「あなたの選択は正しかった。素晴らしい決断をなさいましたね」
先生……。
はたから見れば私は、若気の至りで駆け落ちした末に妊娠したあげく、男に捨てられたどうしようもない女だ。
浅はかで愚かな人間だと思われても仕方がないし、そう思われても構わないと思っていた。
だけど今夜、先生に本当の事を話せて良かった。
好きな人には、真実を知ってもらいたいし、先生が……素晴らしい決断だと言ってくれたことがホントに嬉しい。
「先生……好き」
先生が大好き。
寝ころんだまま先生を見上げる。
「千尋さん……」
先生は少し腕を緩め、私の目尻に唇を寄せた。
「しょっぱい……」
って、先生っ!?
そりゃそうだよ。涙はしょっぱいに決まってる。
先生は少し困ったように眉を寄せている。
「プッ、センセ、かわいい……」
いい歳して子供みたい。
私はつい吹き出してしまう。
先生は少しだけ不満そうな顔をしたものの柔らかくほほ笑んで言った。
「私にとっては千尋さんの笑顔が一番かわいいです。だからもう……泣かないで」
先生の唇がまた目尻に触れる。
私はそっとまぶたを閉じた。
「うん、先生……好き、本当に大好き」
「きっと私の方がその何倍も……あなたの事を好きですよ」
先生の唇が私の口を優しくふさいだ。
「ん……っ」
軽いキスを交わして見つめあう。
「あなたが想像している以上に、私はあなたの事を想っています」
「トーマ先生……」
「そして、蓮さんの事も……本当に愛しく思い始めているんです。まあ、そもそも、千尋さんの子供なんだから、かわいくないわけがないですよね」
せんせいっ!!
私は先生の首元にすり寄った。
薄い掛け布団越しに抱きしめられていてうまく身動きが取れないのがつらい。
私は両手で先生のシャツの胸元を握りしめた。
ホントは先生をギュッと抱きしめたいくらい嬉しいよ!
ああっ、もう大好きっ!
「あんなにかわいいんですから眞島さんもきっと……蓮さんに会いたいでしょうね」
…………!?
頭上から穏やかな声でそう言われて驚く。
「そう、だよね……でも、タツキ君とはあの日以来一度も会ってないの。彼は引き続き私をアパートに住まわせてくれて、定期的に生活費も送ってくれた。一緒に暮らすことは出来なかったけどずっと、私達親子を支えてくれていたのに……」
「そうですか……眞島さんはちゃんと責任をはたしていたのですね」
「うん……私もタツキ君に会いたいけど……」
どうしても若くて体格のいい男の人が怖い。
タツキ君が悪い訳じゃないのに……。
「千尋さんっ!」
先生は突然体を起こすと私を組み伏せた。
「えっ!? ト、トーマ先生?」
両手を掴まれてじっと見おろされる。
「あなたがタツキさんに似た男性を恐れるのは……あの夜のせいですよね?」
「え?」
あ、あの夜って……。
そ、そりゃ、私にとっては初めての体験だったから正直すごく怖かったけど。
「私がすべて……塗り替えて差し上げます」
へ? ちょ、ちょっと。先生っ!?
「よくなかったのなら……私がよくしてあげますから」
先生は切れ長の瞳を細めてニヤリと笑った。
い、色気が半端ない!!
先生は押さえていた私の左手を持ち上げると指先にそっとキスをした。
「千尋さん……これは嫌じゃないですか?」
「え? う、うん……ヤじゃ、ない……」
「では……これは?」
指先に触れた舌は、手の甲をたどってツーっと手首までなぞる。
「んんっ……」
「どうです?」
……背筋がゾクゾクする。
胸が急激に高鳴って呼吸が荒くなる。
「ねえ、どう?」
先生は私の手首に舌を這わせながら甘い視線を向けてくる。
どう? って、私の口からどうしても言わせたいの?
「あっ」
「怖くないですか? 大丈夫?」
私を気遣うセリフを言いながらも先生の舌は私の指をしゃぶり、指と指の間を音を立ててなめあげた。
「んあんっ……」
ちょっ、先生!
待って待って待って!
ここは、家のリビングに面した客間だよ!
廊下の奥の寝室では両親が眠っている。
それに、足だって痛いの。
「も、ムリ……センセッ、ダメだって」
「私の事が怖いですか?」
「ううん、怖くない」
怖くはないけど……ダメだよ。
「じゃあ、気持ちいい?」
「…………」
「千尋さん……大事な事です。触れられて気持ちがいいのは、そこに心があるから……ね、千尋さん。私に全て委ねて。私はあなたが嫌がることは絶対にしません。ね、怖くありませんから」
先生……。
先生と再会してから沢山キスされたりしてきたけど、私はどれも嫌じゃなかった。
そこにはお互いの気持ちがあったから……。
「今はただ……私の愛情を素直に感じてください」
先生はそう言って私の首筋にキスをした。
「あっ」
「……好きだ……」
柔らかい唇が首筋を這う感覚に頭がしびれる。
「っ、せんせいっ! トーマ先生っ!」
「嫌じゃ……ないですよね」
「っはぁっ……ヤじゃない……ちいい、気持ちい……よぉ……」
先生がしてくれることはすべて気持ちいい。
「そんなに甘い声で言われたら……はぁっ……たまらない……かわいいですよ」
先生は耳元でそう囁いてから噛みつくように耳の下に吸い付いた。
「あ、はぁっ、も、許して」
「……許しません」
そ、そんなぁ。
恨めし気に見上げると先生は、はぁーっ、と大きくため息をついた。
「そう言いたいですが……今夜はここまでに致しましょうか。千尋さんが愛されることに慣れるためにも、私達の関係は少しずつ時間をかけて進めるべきでしょうからね……」
た、助かったぁ……。
「でも、少しだけ……こうしてそばにいてもいいですか?」
先生は再び私の横に寝ころび私の頭の下に腕を差し込んだ。
こ、これって腕枕……?
先生の綺麗な顔が近すぎて、高鳴った胸の鼓動がなかなか治まらない。
私も、もうちょっとだけこうしていたい……。
先生は大きなてのひらで優しく私の頭をなでながら微笑む。
「怪我が治ったら、しっかり千尋さんの心をほぐして、うんとよくして差し上げますからね。楽しみにしておいてくださいね」
そ、それは、楽しみなような、怖いような……。
先生の言葉に私の顔が引きつってしまったのは……仕方がないよね。
「お、お手柔らかに……お願いします」
「ええ、それはもう優しく手ほどきして差し上げます。あなたの初心な反応をどれだけ私が嬉しく思っているのか……お分かりになりませんか?」
せ、先生ったらまた私の事を初心だなんて……。
圧倒的に経験値が足りない私は、先生には到底太刀打ちできないよ……。
「……うん」
家を出てからの一年半、本当に沢山の事を自分で決めてきた。
そのたび、自分なりに真剣に悩んで出した決断だから後悔はしていない。
でも。
「蓮を産むって決めてからずっと……不安だった。はたして一人でやっていけるのかって、私なんかがちゃんと母親になれるの? って……考え始めたら夜も眠れなくなるくらい……怖かった」
「千尋さん……」
私は浮かんだ涙をごまかすように鼻をすする。
「でもね、私っ……この選択だけは間違いじゃなかったって思ってる。蓮を産んで……蓮の母親になれてホントに良かったってっ」
勢いあまって偽装駆け落ちなんてしちゃったけど、蓮を産むと決めたことは間違いじゃなかったって自信をもって言える。
だって、あんなにかわいい蓮の母親になれたんだから。
子育ては想像以上に大変で投げ出したくなる時だって正直ある。
それでも、やっぱり我が子はかわいい。
愛しくて愛しくてたまらない。
あの日、諦めなくて良かった。
蓮に会えて本当に良かった。
私は蓮を絶対に、絶対に幸せにする!
「わっ、私っ……間違ってないよねっ……!」
「……ええ」
冬馬先生は優しく背中をさすってくれる。
私は先生の広い胸に抱かれて涙を流した。
「あなたの選択は正しかった。素晴らしい決断をなさいましたね」
先生……。
はたから見れば私は、若気の至りで駆け落ちした末に妊娠したあげく、男に捨てられたどうしようもない女だ。
浅はかで愚かな人間だと思われても仕方がないし、そう思われても構わないと思っていた。
だけど今夜、先生に本当の事を話せて良かった。
好きな人には、真実を知ってもらいたいし、先生が……素晴らしい決断だと言ってくれたことがホントに嬉しい。
「先生……好き」
先生が大好き。
寝ころんだまま先生を見上げる。
「千尋さん……」
先生は少し腕を緩め、私の目尻に唇を寄せた。
「しょっぱい……」
って、先生っ!?
そりゃそうだよ。涙はしょっぱいに決まってる。
先生は少し困ったように眉を寄せている。
「プッ、センセ、かわいい……」
いい歳して子供みたい。
私はつい吹き出してしまう。
先生は少しだけ不満そうな顔をしたものの柔らかくほほ笑んで言った。
「私にとっては千尋さんの笑顔が一番かわいいです。だからもう……泣かないで」
先生の唇がまた目尻に触れる。
私はそっとまぶたを閉じた。
「うん、先生……好き、本当に大好き」
「きっと私の方がその何倍も……あなたの事を好きですよ」
先生の唇が私の口を優しくふさいだ。
「ん……っ」
軽いキスを交わして見つめあう。
「あなたが想像している以上に、私はあなたの事を想っています」
「トーマ先生……」
「そして、蓮さんの事も……本当に愛しく思い始めているんです。まあ、そもそも、千尋さんの子供なんだから、かわいくないわけがないですよね」
せんせいっ!!
私は先生の首元にすり寄った。
薄い掛け布団越しに抱きしめられていてうまく身動きが取れないのがつらい。
私は両手で先生のシャツの胸元を握りしめた。
ホントは先生をギュッと抱きしめたいくらい嬉しいよ!
ああっ、もう大好きっ!
「あんなにかわいいんですから眞島さんもきっと……蓮さんに会いたいでしょうね」
…………!?
頭上から穏やかな声でそう言われて驚く。
「そう、だよね……でも、タツキ君とはあの日以来一度も会ってないの。彼は引き続き私をアパートに住まわせてくれて、定期的に生活費も送ってくれた。一緒に暮らすことは出来なかったけどずっと、私達親子を支えてくれていたのに……」
「そうですか……眞島さんはちゃんと責任をはたしていたのですね」
「うん……私もタツキ君に会いたいけど……」
どうしても若くて体格のいい男の人が怖い。
タツキ君が悪い訳じゃないのに……。
「千尋さんっ!」
先生は突然体を起こすと私を組み伏せた。
「えっ!? ト、トーマ先生?」
両手を掴まれてじっと見おろされる。
「あなたがタツキさんに似た男性を恐れるのは……あの夜のせいですよね?」
「え?」
あ、あの夜って……。
そ、そりゃ、私にとっては初めての体験だったから正直すごく怖かったけど。
「私がすべて……塗り替えて差し上げます」
へ? ちょ、ちょっと。先生っ!?
「よくなかったのなら……私がよくしてあげますから」
先生は切れ長の瞳を細めてニヤリと笑った。
い、色気が半端ない!!
先生は押さえていた私の左手を持ち上げると指先にそっとキスをした。
「千尋さん……これは嫌じゃないですか?」
「え? う、うん……ヤじゃ、ない……」
「では……これは?」
指先に触れた舌は、手の甲をたどってツーっと手首までなぞる。
「んんっ……」
「どうです?」
……背筋がゾクゾクする。
胸が急激に高鳴って呼吸が荒くなる。
「ねえ、どう?」
先生は私の手首に舌を這わせながら甘い視線を向けてくる。
どう? って、私の口からどうしても言わせたいの?
「あっ」
「怖くないですか? 大丈夫?」
私を気遣うセリフを言いながらも先生の舌は私の指をしゃぶり、指と指の間を音を立ててなめあげた。
「んあんっ……」
ちょっ、先生!
待って待って待って!
ここは、家のリビングに面した客間だよ!
廊下の奥の寝室では両親が眠っている。
それに、足だって痛いの。
「も、ムリ……センセッ、ダメだって」
「私の事が怖いですか?」
「ううん、怖くない」
怖くはないけど……ダメだよ。
「じゃあ、気持ちいい?」
「…………」
「千尋さん……大事な事です。触れられて気持ちがいいのは、そこに心があるから……ね、千尋さん。私に全て委ねて。私はあなたが嫌がることは絶対にしません。ね、怖くありませんから」
先生……。
先生と再会してから沢山キスされたりしてきたけど、私はどれも嫌じゃなかった。
そこにはお互いの気持ちがあったから……。
「今はただ……私の愛情を素直に感じてください」
先生はそう言って私の首筋にキスをした。
「あっ」
「……好きだ……」
柔らかい唇が首筋を這う感覚に頭がしびれる。
「っ、せんせいっ! トーマ先生っ!」
「嫌じゃ……ないですよね」
「っはぁっ……ヤじゃない……ちいい、気持ちい……よぉ……」
先生がしてくれることはすべて気持ちいい。
「そんなに甘い声で言われたら……はぁっ……たまらない……かわいいですよ」
先生は耳元でそう囁いてから噛みつくように耳の下に吸い付いた。
「あ、はぁっ、も、許して」
「……許しません」
そ、そんなぁ。
恨めし気に見上げると先生は、はぁーっ、と大きくため息をついた。
「そう言いたいですが……今夜はここまでに致しましょうか。千尋さんが愛されることに慣れるためにも、私達の関係は少しずつ時間をかけて進めるべきでしょうからね……」
た、助かったぁ……。
「でも、少しだけ……こうしてそばにいてもいいですか?」
先生は再び私の横に寝ころび私の頭の下に腕を差し込んだ。
こ、これって腕枕……?
先生の綺麗な顔が近すぎて、高鳴った胸の鼓動がなかなか治まらない。
私も、もうちょっとだけこうしていたい……。
先生は大きなてのひらで優しく私の頭をなでながら微笑む。
「怪我が治ったら、しっかり千尋さんの心をほぐして、うんとよくして差し上げますからね。楽しみにしておいてくださいね」
そ、それは、楽しみなような、怖いような……。
先生の言葉に私の顔が引きつってしまったのは……仕方がないよね。
「お、お手柔らかに……お願いします」
「ええ、それはもう優しく手ほどきして差し上げます。あなたの初心な反応をどれだけ私が嬉しく思っているのか……お分かりになりませんか?」
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