婚約破棄?興味ありません

SEKISUI

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左様でございますか

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 「わたしは真実の愛を見付けた。すまないがミルクお前とは婚約破棄する!」
 星祭りの真最中、クルトン伯爵の次女ミルク・クルトンは侯爵家嫡男カール・ヘクトルより婚約破棄を言い渡される
 カールの隣にはこの国には珍しいピンク色した髪の女性がカールにしなだれかかっていた
 顔は好みにもよるが10人いたら1人位は振り返る
 お世辞で美人、可愛いいと言って貰えるレベル
 スタイルはまぁまぁ、胸は無いこともない、腰は細いが特別細くはない
 髪色以外そこらにいる
 はっきり言って普通
 
 「え!?……何と……申しましたの?」 
 突然の言葉にミルクは驚きの声を上げる
 蜂蜜色の髪は太陽の光を浴び煌めきすれ違う人々は視線を奪われる
 困惑の表情を浮かべるも長い睫毛に縁取られたサファイアの瞳はある一点に囚われていた
 視線はカールの方向を向いていたがカールを通りこしてある一点から視線を外せないでいた
 視線の先には親子連れがいる
 屋台で買って貰ったお菓子を子供は頬張っていた
 微笑ましい
 星祭り、祭りと言えば屋台だ
 串焼き、焼き鳥、チョコバナナ、リンゴアメがこの世界にあるかは知らないが屋台はある
 眼中にカールはいない
 カールと隣の女性は景色の1つだ
 だからカールの言葉は全く聞こえていない
 社交界では「太陽の華」と呼ばれる美貌の持主のミルクであったが、自分の容姿に興味はない
 ピンクの女性がミルクを上から目線で見ている事に気付かない
 例え気付いたとしてもどうでもよい事であった
 
 カールはイケメンと言われる程度の顔であり侯爵家の地位と合わせ相乗効果で社交界ではモテていた
 その為ナルシストまっしぐらの自信過剰野郎に育ちミルクも自分を好きだと勘違いが加速しての宣言だった
 鼻たーかだかでルークは声だかにもう一度言葉を叫ぶ
 「ミルクお前とは婚約破棄すると言ったんだ!」
 「畏まりました」
 視線は相変わらずカールの後ろに据えていた
 困惑の表情はなく、無表情で了承の意を表す
 但しミルクの纏う空気は少し焦りがちだった
 その為視線を合せぬミルクにカールは強がっているのだろうと勘違いし鷹揚に俺優しいの言で勘違いはどこまでも加速する
 「お前がどうしても嫌だと言うなら破棄を撤回してやらない事もない」
 「婚約破棄承りました」
 この世はまだまだ女性の地位は低く婚約破棄されれば女性の方に瑕疵が付く
 「冗談だと思っているのか?わたしは本気だぞ」
 自分を見ないで了承の言葉を述べるミルクに対して少し焦りを覚えるカール
 「このままだと婚約破棄になるのだぞ」
 「了承しました。分かりました。婚約破棄でいいです問題ないです。興味ないです。ウザイです。邪魔です」
 全て否定の言葉にカールの心は打ち砕かれる
 面倒臭そうに答えるミルクにカールは先程の勢いはなりを潜めてしまう
 「わたしの事は好きだろう?」
 「いいえ」
 「嫌いなのか?」
 「すみません。今は特にどうでもよいです」
 カールは涙目だ
 自分の自尊心を満たすためだけに始めた事とはいえ心は今や瀕死で顔色は青い
 隣のピンクの令嬢は引いている
 周りの女性は白い目で引いている
 男性の一部は止めてあげてと目でミルクに訴えかける
 「家同氏の取引に心はいりません」
 所詮は政略結婚
 「星祭りに来たのは屋台を目当てに来ただけですのでわたしにお構いなく。どうぞそちらの方とお楽しみ下さい」
 とうとう涙がポロリと頬を伝う
 ピンクの令嬢どんどん後へ
 ミルクの視線はい今だカールの後方で固定していた
 「あっ!」
 叫び声にカールは振り返る
 視線の先でチョコバナナが食べかけのチョコバナナが折れた。
 チョコバナナは静かに地面へ向けて
 親子の声にならぬ悲鳴が折れたチョコバナナに注がれる
 それはスローモーションの様にゆっくりと落ちて行く
 「あ~ぁ。等々落ちましたわ」
 幼き子供が食べてたらでのあるあるである
 子供が上手く食べられるか子供の両親同様ミルクはずっとハラハラ見ていた
 何故落ちる前にに対処しないと思われるだろうが
 嫌がるのだ
 手を出そうとしたら子供は烈火のごとく駄々をこね面倒臭い
 なので手を出せず子供を見守るしかできなかったのだ
 上手く全部食べられたら大人の階段を一歩登ったと達成感に満たされる
 今回は残念ながら登れ無かった
 次回こそは成功するといいな
 そうミルクは勝手に思うのであった

 「カール様、何故泣いているのです?」
 本日始めて婚約者の顔を見たミルクは小首を傾げる
 「もういい……」
 プライドがボロボロに粉砕されたカールの目は虚ろだ
 「ーーあ!そうでしたわ。婚約破棄でしたわね。父に伝えて置きます。浮気での慰謝料の件についても」
 優雅にカーテーシーを一礼する
 「それでは失礼します」
 ミルクは去って行く
 残されたカールは自失呆然
 これだけ大勢の人々の中で行われた婚約破棄宣言は撤回は出来ない
 ミルクは嬉し過ぎて足が吊る程にスキップして家路に着くのだった

 元々この婚約はカールがミルクに一目惚れした事でのものだった
 その為に地位を嵩にごりにゴリ押しでの婚約だった為ミルクにとって今回の出来事はラッキーなだけだった
 向上心のない現状維持を心にモットーにいてる両親はコレ幸いと婚約破棄を了承してくれるだろう
 

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