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屈辱の回想
しおりを挟むあの出来事は二月前の事だ
朝は相変わらずビオルヘンがベッドにいて拳を振り上げる事から始まった
アメリアは貴族の義務として学校と言う名の小さな社交界へ通っていた
登校はビオルヘンも付いてくる。そして教室まで付いて来る
保護者に付き添われてる気分になるアメリアはいつも断りを入れるが軽くに言葉で巻かれてしまう
ビオルヘンは21歳なので学校に行く必要はない
ビオルヘンは変態執事だが王弟でもあるので執務があるというか本来の仕事だ
アメリアの専属執事はあくまで趣味
毎日部下の方が仕事を持って来るので王城に通う必要がないというのにアメリアと少しでも一緒にいたいと行って付いてくるのだ
そのビオルヘンは月に2回王宮に顔を出し晩餐後にしか帰ってこない日がある
その2回は国王である兄が寂しがるから行くのだが、ブラコンの国王のおかげで罠を貼るのにちょうどよかった
まさかあんな醜態を晒すことになるとは夢にも思わずウキウキと家に帰り罠を仕掛けたのだ
アメリアは胸を弾ませ待ちわびていた
ビオルヘンは朝だけ部屋に侵入してくるわけじゃない
気づいてたらよくクローゼットの中にもいる変態だ
だが罠は作動しなかった
朝はいつも通りベッドでアメリアのこぶしを受けている
不思議に思いながらもその日も学校へ行き、今は家の庭でAfternoon Teaを楽しんでいた
アメリアは昨日ビオルヘンが持って帰ってきた王族か公爵レベル位しか飲めない高級茶葉に舌鼓をうってリッチな気分を味わっている
お茶受けも美味しく紅茶が進み4杯も飲んでお腹がチャポンチャポン
アメリアはビオルヘンに片付けをお願いして自分の部屋に戻る事にした
部屋に入った瞬間檻がアメリアの上に降りてきた
「えっ?!檻?何で?」
一瞬固まったアメリアだったが昨日のことを思い出し落ち込む
やらかした
忘れてた
なんてこと自分で仕掛けた罠に嵌まるとは………
檻から出ようと扉に手をかけるが開かない
当たり前だが鍵が掛かっている
閉じ込められた
落ちつけ檻の鍵は………机の引き出しの中だ………困惑するアメリアの元にビオルヘンが現れた
「お嬢様の求める物はこれですか?」
檻を挟んでアメリアの前で鍵を掲げて見せる
「助かったわ。鍵を開けてくれる」
実はさっきの紅茶の飲み過ぎでアメリアは尿意を感じていた
速くトイレに行きたい
15歳でお洩らしなど恥だ
足をモジモジさせるアメリアを見てビオルヘンはニヤリと口角を上げる
「アメリア様」
静かな問いかけ
「この鍵が欲しいですか?」
頷くアメリアを見て微笑みを浮かべるビオルヘン
「ではアメリア様が履いているストッキングと交換ならお渡ししますよ」
アメリアは虫けらを見る目でビオルヘンを見る
ニヤついた顔を拳でワン・ツーフィニッシュしたい
だがそれよりもトイレだ
ボコルのは後だ
「馬鹿なの!いいから鍵渡しなさいよ!」
激昂するアメリアを涼しい顔で受け流す
「駄目ですよ。ストッキングを、今、ここで、脱ぎたてを、貴方の手で恥じらいながら、ビオルヘンに貰って欲しいのって台詞を入れてお渡し頂けなければ!」
具体的過ぎる要求は変態の名に恥じない
ビオルヘンへ汚物を見るように視線を向ければ、銀色の長い睫毛に縁取られた紫紺の瞳をギラギラさせ今の状況を楽しんでいるのが分かった
ビオルヘンからしたらアメリアが要求を飲もうが飲まなかろうがどちらでもよかった
今のアメリアは顔を羞恥に染めモジモジさせている姿は可愛く加虐心を煽る
楽しくて仕方がないビオルヘンは笑いが止まらない
アメリアの罠など子供の悪戯でしかなかった
魑魅魍魎が集う王宮で暮らしていたビオルヘンからしたらアメリアの罠など子供の悪戯にしか感じない
逆手にとるなど赤子の手を捻るようなもの
何時も仔猫の様に牙を剥くアメリアが可愛すぎてついついやり過ぎてしまう
今もそうだ
漏らして羞恥で泣くアメリアもいいが怒り狂いながらストッキングを脱いで渡すアメリアはどちらも捨てがたくたまらないのだ
紅茶もわざわざ城で一番高い茶葉を持って帰り、お茶受けのクッキーはサクサク度が高いが水分を欲する物を用意したのだ
単純なアメリアは簡単に引っ掛けり今にいたる
その後、結局アメリアは怒り狂いながらストッキングを投げ渡したのだ
顔は羞恥で赤く染め悔し涙で濡らしながら
勿論漏らしてはいない
かなり切羽詰まってはいたが……間に合った
ビオルヘンはアメリアのストッキングをご満悦で大切に被り温もりと香りを堪能した
腹黒変態に罠を仕掛けるなど自分から餌になりに行っているようなものだ
それにアメリアは気付かない………
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