悪役令嬢はヒローインと婚約者をくっつけたい

10

　
　ランチを済ませて帰って来たら
　「ない！お母様から貰ったブローチがない………」
　私の顔を見るなりヒローインは叫んだ
　藪から棒にイベントが始まった
　前振りをお願いしたい
　王子は用事で今日はお休みですが、誰向けのイベントですか？
　「酷いお母様の形見なんです。返して下さい」
　お母様？あれ？可笑しいな
　「えっでは入学式で見掛けた男爵の隣に居た御婦人は？」
　誰？男爵の愛人？
　「お母様です」
　生きてますけど
　勝手に殺さないで、どっかのOLか！
　「間違えたお婆様のでした」
　「そうですか」
　計画が既に破綻してますけど
　「返して下さい！」
　涙の一粒位流しましょう
　「色は肌色でしたか？」
　「えっ……そんな気がします」
　肌色の宝石はありません
　「形は丸ですか？」
　「えっ形？丸…ですかね？」
　何故疑問形で返す
　「はなの柄ですか？」
　「は、な？でした」
　ぐだぐだ過ぎやしないかい
　しっかりしろヒローイン
　「では先程拾ったモノだと思います」
　丸い枠にハマった大きく鼻だけが立体的に作られた肌色のブローチを差し出した
　良かった
　作って置いて
　「え……そう、そのブローチです」
　周りを見て、ブローチを見た人達が引いてるわ
　シャレで作ったけど、我ながら立派な鼻が作れたわ
　でも付けたくない
　本物そっくりの鼻ですけど、付けるのに勇気がいる
　誰のを何処で削いできた、みたいな目で見られのよ
　ないわ～
　キモッ、作ったのは私ですけどね、つい、拘ってしまったの、悪戯心で
　ぁあ～いい皆が向ける白い目が、ヒローインにですけどね
　人生楽しまないと
　
　ヒローインが私を見る
　首を振って答える
　「やだ教室に帰らないと、授業に間に合わない。ブローチありがとうございます」
　ヒローインは鼻のブローチを持って自分の教室に帰っていった
　せめて自分の教室でしていただきたい
　あの状態をほって帰るヒローインのメンタルは超合金かしらね
　「次は教室移動ですわね」
　私の言葉を合図にクラスメイトは散っていった

　どうしましょう
　ヒローインもヒーローも（酷くて）使えない
　私王妃になりたくないんですけど