婚約破棄万歳!

しおしお

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1-1 冷静な別れ

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 大広間は、貴族らしい格式と重厚感に包まれていた。ラヴェンナ・シルヴィアは、紅茶色の美しいドレスをまとい、目の前に立つ婚約者カリオス・オルシア侯爵の次男と向き合っていた。彼の表情にはどこか緊張が浮かび、これから口にする言葉が彼自身にとっても重大なものであることを物語っている。

「ラヴェンナ、君との婚約を破棄させてもらいたい。」

カリオスは毅然とした態度で告げた。その言葉は部屋の静寂を切り裂くように響いた。普通の令嬢であれば、驚き、動揺し、泣き崩れるような状況だ。しかし、ラヴェンナは一切の表情を崩さず、目の前の彼をまっすぐに見つめた。

「そうですか。承知しました。婚約破棄を受け入れます。」

その返答は、静かでありながら毅然としていた。

「……え?」

カリオスは思わず間抜けな声を漏らし、彼女の顔をじっと見つめる。彼の中には予想外の事態に対する困惑が渦巻いていた。彼は、ラヴェンナが動揺してすがりつくことを期待していたのだ。

「えっと……君、ショックじゃないのか?」

ラヴェンナは微笑みを浮かべながら、彼の問いに答えた。
「え? そうですね……ショックですわ。」

その返答に、カリオスの困惑はさらに深まる。

「その割に随分と冷静そうだが……理由を聞かないのか?」

「理由? そうでしたわね。一応、お聞きします。」

ラヴェンナはさらりと言い放ち、カリオスはその態度に圧倒されながらも少し苛立ちを覚えた。

「君、本当に気にならないのか?」

「気にならないわけではありませんが……お聞きしたところで婚約破棄が覆るわけではないのでしょう?」

その言葉に、カリオスは返す言葉を失った。彼女の論理的な返答は、彼の予想を完全に裏切っていた。

「そうだが……なぜそうも冷静でいられる?」

「貴族の淑女たる者、人前で取り乱すものではありませんわ。」

ラヴェンナの毅然とした態度に、カリオスは居心地の悪さを感じながら視線をそらした。自分が想像していた「泣き崩れるラヴェンナ」の姿は、どこにも見当たらない。

「いや、それでも……本当に君は平気なのか?」

ラヴェンナは微笑みを崩さずに返答した。
「ご心配なさらずとも、自室に戻ったら泣き崩れますわ。」

その言葉に、カリオスはほっとしたような表情を浮かべる。彼女の心中を察したつもりになり、満足げにうなずいた。

「そうか……なら良い。」

しかし、ラヴェンナの心の中では全く別の感情が渦巻いていた。
(泣き崩れる? いいえ、本当は早く自室に戻って笑い転げたいだけですわ!)

彼女は内心で歓喜の声を上げながらも、その表情には微塵もそれを見せなかった。

「では、婚約破棄の理由をどうぞ。」

ラヴェンナは冷静に促し、カリオスは気まずそうに視線をそらしながら答えた。
「……君よりも、もっとふさわしい相手が見つかったんだ。」

その理由を聞いても、ラヴェンナの態度は変わらなかった。

「なるほど。それなら仕方ありませんわね。」

まるで他人事のような返答に、カリオスは再び戸惑いの表情を浮かべた。

「君、本当にそれでいいのか?」

「ええ、もちろんですわ。」

毅然とした彼女の態度に、カリオスは気まずそうに礼をし、その場を立ち去った。

扉が閉まり、大広間に静寂が戻る。ラヴェンナはしばらくその場に立ち尽くし、ゆっくりと息を吐いた。そして心の中で叫ぶ。

(ヤッターーー! 婚約破棄バンザイですわ!)

彼女はゆっくりと大広間を後にし、自室へと戻っていった
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