無資格魔法使いが最強すぎる件 ―資格ってなんですか? 強いのでそんな資格いりません―

しおしお

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第32話 氷の公爵と選んだ未来――そして、幸せな結末

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翌朝。
夜明けの光が、公爵邸の白い石壁を静かに照らしていた。

ルーチェは中庭をゆっくり歩いていた。
昨夜は眠れなかった。
心臓はずっと早鐘を打ち続け、公爵の言葉が何度も胸の奥で響いていた。

「私は君を守りたい。国ではなく、個人として」

あの声が、何度も。

 

風が髪を揺らす中、彼女はふと立ち止まった。

「……私は、どうしたいんだろう」

王国に戻る選択肢はない。
追放され、禁止魔法をかけられ、無資格と嘲られた国――
そこに未練は一欠片もなかった。

では今、どこに心が向いているのか。

昨日の温かい手。
初めて見た、公爵の柔らかな表情。

胸の奥が、じんわりと熱くなる。

 

その時――背後から静かな足音がした。

「ルーチェ」

振り返ると、公爵がそこにいた。
朝日を背に、彼の姿は眩しいほど優雅だった。

「昨夜の話だが……無理に答えを急がせたくはない。
ただ、君の心がどこにあるのか、それだけ教えてくれればいい」

「アークト様……」

ルーチェは胸に手を当て、深く息を吸った。

迷っていたが、答えは最初から決まっていた。

 

「私……この国に残りたいです」

公爵の瞳が微かに揺れる。

「それは……」

「あなたと過ごす時間が、とても好きだからです」

顔が熱くなる。けれど、言葉は止まらなかった。

「追放された私を受け入れてくれて、
力を縛らず、自由にさせてくれて……。
何より、私を“ひとりの人”として見てくれたのは、アークト様だけでした」

公爵はゆっくりと歩み寄り、ルーチェの手を優しく包んだ。

「……君のその想いを聞けて、これ以上の幸せはない」

 

ルーチェは続けた。

「王国には戻りません。
でも、守れるものは守りたい。
そして……あなたの隣で、生きていきたいと思っています」

その言葉に、公爵は静かに微笑んだ。
氷が溶けていくような、柔らかな微笑み。

「ならば――これからも共に歩んでほしい。
君の未来を、私に預けてくれるか?」

「……はい」

涙が溢れそうになった。

公爵はそっと彼女の肩に手を回し、抱き寄せた。

「ルーチェ。君は私の光だ」

その囁きに、ルーチェの心は完全にほどけた。

 

――こうして、ルーチェは隣国での生活を選んだ。

王国はその後、失った“大切なもの”の大きさに気づき、
国中が後悔と自責に包まれたという。

だが、それはもう彼女には関係ない。

ルーチェは氷の公爵と共に、
静かなスローライフと、自由な魔法研究の日々を歩み始める。

世界を救った少女と、氷の公爵。
二人の物語は、ここから穏やかに続いていく。

 

――ハッピーエンド。
ざまぁは済んだ。
今度こそ、ルーチェ自身の幸せの番だ。
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