私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

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第9話 悪女令嬢、ベルリッタ王国を救う(ついでに元母国を潰す準備)

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第9話 悪女令嬢、ベルリッタ王国を救う(ついでに元母国を潰す準備)

 アクノマジョリーカに背中を押され、ドンファム王子は国王の執務室へ飛び込んだ。

「父上っ!! たいへんだよ!!
 エリルフィン公爵が、ぼくらの国を……その……!」

「落ち着けドンファム! 何事だ!」

 国王ベルリッタ七世は驚いたが、さらに驚いたのはその後のことだった。

 王子の背後から、ゆっくりとアクノマジョリーカが入ってきたのだ。

「国王陛下。
 エリルフィン公爵家――つまり私の父は、近くベルリッタ領へ侵攻するつもりですわ」

「な、なんだと……!? そなたの父が? あのエリルフィン公爵が……!」

 国王は衝撃のあまり言葉を失った。

 だがアクノマジョリーカは静かに頷く。

「父は外交条約を口実とし、ベルリッタ王家との“より親密な関係”を築くという名目で、すでに他国の密偵を大勢送り込んでいますわ」

 国王の眉が跳ね上がった。

(なんだと……あの外面だけ良いエリルフィン公爵が、そこまで……!?)

 アクノマジョリーカは続ける。

「今回の婚約も、“公爵領の兵を国境の奥深くまで合法的に運び込むための口実”にすぎませんわ」

「なんという……そんな卑劣な……!」

 王は拳を握りしめる。

 その横で、ドンファムがアクノマジョリーカを見上げた。

「ねぇ父上……マジョリーカが言うには、父上の側近の中にも“公爵の息がかかった者”がいる可能性が高いんだって」

「なに……!?」

 王宮に、静かなざわめきが走った。

(そうですわ。父の侵略計画は周到。
 この国の弱点も、ぜんぶ知っている。
 ――けれど、私はもっとよく知っているのですもの。)

 アクノマジョリーカは一礼し、淡々と告げた。

「陛下。いま急ぐべきは“防衛”ではなく“内部の洗浄”。
 王城を侵食している密偵を一掃し、国境を封鎖すべきですわ」

「確かに――確かにその通りだ……!」

 国王の目が真剣に変わる。

 アクノマジョリーカはさらに一手を示した。

「それからもう一つ。
 ベルリッタ軍の弱点は“決断の遅さ”ですわ。
 国境に兵が集まってからでは遅い。
 “最初の動き”だけは、こちらから先に出る必要があります」

「先に……動く……?」

「ええ。“やられる前に、やる”。
 陛下、侵略されるより先に――侵略者を摘み取るのですわ」

 国王の目が大きく見開かれた。

「……まさか、そなた……」

「ええ。最初からそのつもりですわ」

 アクノマジョリーカは涼しい顔で言い切る。

「ベルリッタを守るために、元母国を潰す準備を進めておりますの」

「た、たた潰すって……き、君……!?」

 ドンファムは震えながらも、どこか誇らしげだった。

(この人、本当に怖いけど……でも、頼もしい……!
 ぼくなんかよりずっと……王国に必要な人だ……!)

 国王は深く息を吸い込み、ようやく決断した。

「アクノマジョリーカ嬢。
 そなたを、ベルリッタ軍戦略顧問に任命する!」

「光栄ですわ、陛下。
 さっそく、密偵の洗い出しと迎撃態勢の構築から始めましょう」

 その瞬間――

ベルリッタ王国は滅亡寸前から一気に“逆侵略態勢”へと転じた。

 そしてそれを仕掛けたのは他ならぬ、
悪女の名を背負う一人の令嬢――アクノマジョリーカであった。


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