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第34話 悪女令嬢、前線へ――“侵略の花嫁”出陣す
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第34話 悪女令嬢、前線へ――“侵略の花嫁”出陣す
エリフィン公爵軍が総崩れとなり、
ベルリッタ軍が本陣を制圧した翌日の朝。
王城では前代未聞の光景が広がっていた。
アクノマジョリーカが、
戦場へ向かうための支度をしていたのである。
侍女ルチア
「……お嬢様、本当に行かれるのですか?
貴族令嬢が、前線へ……!」
アクノマジョリーカ
「当たり前ですわ。
指揮を執る者は“現地”を見なければ判断を誤るもの。
それに――」
鏡を見つめ、髪を結い上げる。
アクノマジョリーカ
「私が行けば、敗残兵の士気は地の底まで落ちて、
ベルリッタ軍の勝利は確実ですわ。」
侍女ルチア
「お嬢様は……本当に恐ろしい策士でございますね。」
アクノマジョリーカ
「褒めてくださる? もっと言いなさい。」
そこへ、侍従が駆け込んできた。
侍従
「マジョリーカ様!
殿下より伝言が!
“前線は危険につき、決して来るな”とのことです!」
アクノマジョリーカ
「あら、案外まともな判断をなさるじゃありませんの、殿下。」
ルチア
「でしたら、行かないという選択も……」
アクノマジョリーカ
「行きますわ。」
ルチア
「……ですよね。」
アクノマジョリーカ
「彼の『来るな』は、裏を返せばこうですわ。
“来たら絶対守るから危険だ”と。」
ルチア
「殿下がそんな深読みで指示を……?」
アクノマジョリーカ
「そんなわけありませんわ。
ただの臆病からの忠告でしょうけれど……
殿下が“守る”と言うなら、利用しない手はありませんわね。」
そこへ、ベルリッタ王が姿を現した。
ベルリッタ王
「マジョリーカ殿。
出向なされると聞いたが、本気か?」
アクノマジョリーカは丁寧にカーテシーした。
アクノマジョリーカ
「はい、陛下。
敵対国の弱った今こそ最大の好機。
いま攻め込めば、流血も最小限に済ませ、
侵略を受けたベルリッタの安全も確保できますわ。」
ベルリッタ王
「……ドンファムを利用し、それで国を救おうというのか。」
アクノマジョリーカ
「ええ。私が婚約者に選ばれたのは、
そういう役目を果たすためでしょう?」
ベルリッタ王は短く息を飲んだ。
ベルリッタ王
「……お前のような娘に、息子はもったいない気もするな。」
アクノマジョリーカ
「殿下が“使える男”であるかどうかは、これから判断しますわ。」
王
「こ、怖い娘よ……!」
アクノマジョリーカは優雅に微笑んだ。
アクノマジョリーカ
「では、参りますわ。
この戦を終わらせるために。」
ベルリッタ王
「無茶はするな。
……息子を頼む。」
アクノマジョリーカ
「殿下の命も、この国も、私が守ってみせますわ。」
そして彼女は、
王都から前線へ向けて馬車で発った。
◇
ベルリッタ軍・前線陣地。
指揮を執っていたドンファムは、
兵士のざわめきに振り返った。
兵士A
「で、殿下! とんでもない方が到着されました!」
ドンファム
「とんでもない方?
……まさか、アクノマジョリーカ!?」
馬車の扉が開き、
まるで戦場を舞台にした女帝のように彼女が降り立つ。
アクノマジョリーカ
「殿下。前線は順調のようですわね。」
ドンファム
「来るなと言っただろう! 危険だ!」
アクノマジョリーカ
「危険?
これから仕掛ける“侵略”に比べれば可愛いものですわ。」
ドンファム
「……え、侵略?」
アクノマジョリーカ
「ええ。
殿下、準備なさって?
公爵領を平定し、ベルリッタの属領にいたしますわ。」
ドンファム
「ま、待て! そんなことをしたら……!」
アクノマジョリーカは、
彼の胸ぐらを軽く掴んで引き寄せた。
アクノマジョリーカ
「良いですか?
これは国を守る戦いです。
“やられる前にやる”――当然でしょう?」
ドンファム
「マジョリーカ……お前、どこまで本気なんだ……?」
アクノマジョリーカ
「最初から言ってますわ。
私は“悪女”ですの。
やると決めたら迷いません。
そして……」
ドンファムの胸に指先を置く。
アクノマジョリーカ
「殿下が私の“コマ”でいる限り、絶対に勝たせて差し上げますわ。」
ドンファム
「コマ……。
……だが、それでも――
お前と一緒なら、負ける気がしない。」
アクノマジョリーカ
「なら、ついてらっしゃい。
侵略の時間ですわ。」
こうして――
“悪女令嬢と元うつけ王子”の侵略作戦が幕を開ける。
彼らはまだ知らない。
この先の出来事が、王都どころか大陸すべてを巻き込む
巨大な歴史の転換点となることを。
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エリフィン公爵軍が総崩れとなり、
ベルリッタ軍が本陣を制圧した翌日の朝。
王城では前代未聞の光景が広がっていた。
アクノマジョリーカが、
戦場へ向かうための支度をしていたのである。
侍女ルチア
「……お嬢様、本当に行かれるのですか?
貴族令嬢が、前線へ……!」
アクノマジョリーカ
「当たり前ですわ。
指揮を執る者は“現地”を見なければ判断を誤るもの。
それに――」
鏡を見つめ、髪を結い上げる。
アクノマジョリーカ
「私が行けば、敗残兵の士気は地の底まで落ちて、
ベルリッタ軍の勝利は確実ですわ。」
侍女ルチア
「お嬢様は……本当に恐ろしい策士でございますね。」
アクノマジョリーカ
「褒めてくださる? もっと言いなさい。」
そこへ、侍従が駆け込んできた。
侍従
「マジョリーカ様!
殿下より伝言が!
“前線は危険につき、決して来るな”とのことです!」
アクノマジョリーカ
「あら、案外まともな判断をなさるじゃありませんの、殿下。」
ルチア
「でしたら、行かないという選択も……」
アクノマジョリーカ
「行きますわ。」
ルチア
「……ですよね。」
アクノマジョリーカ
「彼の『来るな』は、裏を返せばこうですわ。
“来たら絶対守るから危険だ”と。」
ルチア
「殿下がそんな深読みで指示を……?」
アクノマジョリーカ
「そんなわけありませんわ。
ただの臆病からの忠告でしょうけれど……
殿下が“守る”と言うなら、利用しない手はありませんわね。」
そこへ、ベルリッタ王が姿を現した。
ベルリッタ王
「マジョリーカ殿。
出向なされると聞いたが、本気か?」
アクノマジョリーカは丁寧にカーテシーした。
アクノマジョリーカ
「はい、陛下。
敵対国の弱った今こそ最大の好機。
いま攻め込めば、流血も最小限に済ませ、
侵略を受けたベルリッタの安全も確保できますわ。」
ベルリッタ王
「……ドンファムを利用し、それで国を救おうというのか。」
アクノマジョリーカ
「ええ。私が婚約者に選ばれたのは、
そういう役目を果たすためでしょう?」
ベルリッタ王は短く息を飲んだ。
ベルリッタ王
「……お前のような娘に、息子はもったいない気もするな。」
アクノマジョリーカ
「殿下が“使える男”であるかどうかは、これから判断しますわ。」
王
「こ、怖い娘よ……!」
アクノマジョリーカは優雅に微笑んだ。
アクノマジョリーカ
「では、参りますわ。
この戦を終わらせるために。」
ベルリッタ王
「無茶はするな。
……息子を頼む。」
アクノマジョリーカ
「殿下の命も、この国も、私が守ってみせますわ。」
そして彼女は、
王都から前線へ向けて馬車で発った。
◇
ベルリッタ軍・前線陣地。
指揮を執っていたドンファムは、
兵士のざわめきに振り返った。
兵士A
「で、殿下! とんでもない方が到着されました!」
ドンファム
「とんでもない方?
……まさか、アクノマジョリーカ!?」
馬車の扉が開き、
まるで戦場を舞台にした女帝のように彼女が降り立つ。
アクノマジョリーカ
「殿下。前線は順調のようですわね。」
ドンファム
「来るなと言っただろう! 危険だ!」
アクノマジョリーカ
「危険?
これから仕掛ける“侵略”に比べれば可愛いものですわ。」
ドンファム
「……え、侵略?」
アクノマジョリーカ
「ええ。
殿下、準備なさって?
公爵領を平定し、ベルリッタの属領にいたしますわ。」
ドンファム
「ま、待て! そんなことをしたら……!」
アクノマジョリーカは、
彼の胸ぐらを軽く掴んで引き寄せた。
アクノマジョリーカ
「良いですか?
これは国を守る戦いです。
“やられる前にやる”――当然でしょう?」
ドンファム
「マジョリーカ……お前、どこまで本気なんだ……?」
アクノマジョリーカ
「最初から言ってますわ。
私は“悪女”ですの。
やると決めたら迷いません。
そして……」
ドンファムの胸に指先を置く。
アクノマジョリーカ
「殿下が私の“コマ”でいる限り、絶対に勝たせて差し上げますわ。」
ドンファム
「コマ……。
……だが、それでも――
お前と一緒なら、負ける気がしない。」
アクノマジョリーカ
「なら、ついてらっしゃい。
侵略の時間ですわ。」
こうして――
“悪女令嬢と元うつけ王子”の侵略作戦が幕を開ける。
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