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第3章:屋敷まるごとスマート化計画
第12話 ディーゼル発電機と配電網 ~「電気代?SDGs?知らん!」~
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ディーゼル発電機と配電網 ~「電気代?SDGs?知らん!」~
「今日も良い天気……よし、やるわよ!」
その朝、私は地球のアパートで荷造りを終えると、ドレスに着替えて台車を押しながら異世界ゲートへと向かった。今日のテーマはズバリ――「発電所建設」。ルノー邸に安定した電力を供給するため、ついに私はディーゼル発電機を持ち込むことにした。
これまで照明や家電の電源は、アパートのコンセントから引いた延長コードでまかなっていた。でもね、さすがにね――
「電気代が、シャレにならん!」
真顔で明細を見つめながら、自分でツッコミを入れる日々だった。
---
異世界に転送されたその巨大な金属塊は、見た目こそ無骨で味気ないが、実力は本物だ。セルスターター付き、出力5kW、最大8時間稼働の頼れるディーゼル発電機。
異世界のメイドたちが「魔導エンジン……?」と目を丸くするその中で、私は当たり前のように作業着姿で作業を進めていた。
「お嬢様……また妙なものを……」 「妙じゃありません! これは文明です!」
屋敷の裏手、庭園の一角にひっそりと設置された発電機は、防音シェルター付き。とはいえ多少の騒音は出る。それでも電力が安定して供給されるという利点には勝てない。
私はメイドたちの困惑した視線を背に、配電ケーブルを手に取ると、いそいそと電柱代わりの木柱に這わせていく。
---
「これで……ランドリールーム、キッチン、執務室、そして私の部屋にも電力が通ったわ」
一人、満足気にうなずく。ケーブルは屋敷中に張り巡らされ、今やルノー邸は“自家発電付き屋敷”として王国最先端の存在となりつつある。
とはいえ、問題がないわけではない。なにせ、ここは異世界。ガソリンスタンドなんて、ない。
「燃料は地球で買いだめして、ポリタンクで持ち込んでるけど……これもけっこうコストがかかるのよねぇ」
と、私の頭の中に浮かぶのは、またしても月末の電気代と燃料費。
「そろそろ、本気で自家発電の自給自足体制を考える必要があるわね……」
そう。次なるステップは、太陽光発電+水力発電によるクリーンエネルギーへの転換。でも、まだそれはちょっと先の話。
---
その日の午後、私はメイド長と使用人代表を集めて、屋敷の「電気利用に関する説明会」を開いた。
「というわけで、ここからは、電気がタダではありません。電気は貴重な資源です」
「……それって、どういうことでしょう?」
「使いすぎると、わたくしが破産しますの♡」
「えっ」
満面の笑顔で言い放った私に、一同固まる。
「なので、電子レンジは長時間使用禁止、冷蔵庫の開けっ放し厳禁、電気ポットの保温機能は使わず都度加熱! いいですね?」
一斉にうなずくメイドたち。だが、その顔にはどこか苦笑いが浮かんでいる。
「なに、もし壊れたら――交換すればいいんですわ!」
私はそう言って、無造作に不良アクティブスピーカーを台車に乗せ、廃棄コーナーへぽいっ。
「修理? SDGs? 知らん!!」
その言葉に、リアンナが震えた声でつぶやく。
「お嬢様……もはや、神ですわ……」
「違います。ただの、無職です!」
---
その日の夜。
私は疲れた体をバスタブに沈めながら、ふうっとため息をついた。
「最初は、ちょっと便利な生活をしたかっただけなのに……。いつの間にか、王国一の電化屋敷になってるじゃないの……」
浴室の照明は、人感センサー付きLED。お湯の温度は、太陽熱温水器と電気ヒーターの併用によって常に最適。
天井に取り付けたBluetoothスピーカーからは、プリンセス・ラポートお気に入りのCDが流れている。
「はぁ……SDGsの風が私に逆らっている……」
湯気の向こうで、私は誰にともなくつぶやいた。
でも。
それでも。
この文明の力が、屋敷の人たちを笑顔にできるのなら。
「私は今日も、異世界出勤いたしますわ!」
浴室から出ると、明日の計画メモを広げる。
【To Do】 ・ソーラーパネル設置 ・水力発電用の滝候補地の調査 ・ドラムリール追加購入 ・Amazonで特価のディーゼル燃料ポリタンクを探す
異世界での私の革命は、まだまだ続いていくのだった。
「今日も良い天気……よし、やるわよ!」
その朝、私は地球のアパートで荷造りを終えると、ドレスに着替えて台車を押しながら異世界ゲートへと向かった。今日のテーマはズバリ――「発電所建設」。ルノー邸に安定した電力を供給するため、ついに私はディーゼル発電機を持ち込むことにした。
これまで照明や家電の電源は、アパートのコンセントから引いた延長コードでまかなっていた。でもね、さすがにね――
「電気代が、シャレにならん!」
真顔で明細を見つめながら、自分でツッコミを入れる日々だった。
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異世界に転送されたその巨大な金属塊は、見た目こそ無骨で味気ないが、実力は本物だ。セルスターター付き、出力5kW、最大8時間稼働の頼れるディーゼル発電機。
異世界のメイドたちが「魔導エンジン……?」と目を丸くするその中で、私は当たり前のように作業着姿で作業を進めていた。
「お嬢様……また妙なものを……」 「妙じゃありません! これは文明です!」
屋敷の裏手、庭園の一角にひっそりと設置された発電機は、防音シェルター付き。とはいえ多少の騒音は出る。それでも電力が安定して供給されるという利点には勝てない。
私はメイドたちの困惑した視線を背に、配電ケーブルを手に取ると、いそいそと電柱代わりの木柱に這わせていく。
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「これで……ランドリールーム、キッチン、執務室、そして私の部屋にも電力が通ったわ」
一人、満足気にうなずく。ケーブルは屋敷中に張り巡らされ、今やルノー邸は“自家発電付き屋敷”として王国最先端の存在となりつつある。
とはいえ、問題がないわけではない。なにせ、ここは異世界。ガソリンスタンドなんて、ない。
「燃料は地球で買いだめして、ポリタンクで持ち込んでるけど……これもけっこうコストがかかるのよねぇ」
と、私の頭の中に浮かぶのは、またしても月末の電気代と燃料費。
「そろそろ、本気で自家発電の自給自足体制を考える必要があるわね……」
そう。次なるステップは、太陽光発電+水力発電によるクリーンエネルギーへの転換。でも、まだそれはちょっと先の話。
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その日の午後、私はメイド長と使用人代表を集めて、屋敷の「電気利用に関する説明会」を開いた。
「というわけで、ここからは、電気がタダではありません。電気は貴重な資源です」
「……それって、どういうことでしょう?」
「使いすぎると、わたくしが破産しますの♡」
「えっ」
満面の笑顔で言い放った私に、一同固まる。
「なので、電子レンジは長時間使用禁止、冷蔵庫の開けっ放し厳禁、電気ポットの保温機能は使わず都度加熱! いいですね?」
一斉にうなずくメイドたち。だが、その顔にはどこか苦笑いが浮かんでいる。
「なに、もし壊れたら――交換すればいいんですわ!」
私はそう言って、無造作に不良アクティブスピーカーを台車に乗せ、廃棄コーナーへぽいっ。
「修理? SDGs? 知らん!!」
その言葉に、リアンナが震えた声でつぶやく。
「お嬢様……もはや、神ですわ……」
「違います。ただの、無職です!」
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その日の夜。
私は疲れた体をバスタブに沈めながら、ふうっとため息をついた。
「最初は、ちょっと便利な生活をしたかっただけなのに……。いつの間にか、王国一の電化屋敷になってるじゃないの……」
浴室の照明は、人感センサー付きLED。お湯の温度は、太陽熱温水器と電気ヒーターの併用によって常に最適。
天井に取り付けたBluetoothスピーカーからは、プリンセス・ラポートお気に入りのCDが流れている。
「はぁ……SDGsの風が私に逆らっている……」
湯気の向こうで、私は誰にともなくつぶやいた。
でも。
それでも。
この文明の力が、屋敷の人たちを笑顔にできるのなら。
「私は今日も、異世界出勤いたしますわ!」
浴室から出ると、明日の計画メモを広げる。
【To Do】 ・ソーラーパネル設置 ・水力発電用の滝候補地の調査 ・ドラムリール追加購入 ・Amazonで特価のディーゼル燃料ポリタンクを探す
異世界での私の革命は、まだまだ続いていくのだった。
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