異世界転職 重機を操るインフラクイーン ‐婚約破棄元婚約者 重機で押しつぶします みなさんやっておしまいなさい‐

しおしお

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第7章:ざまぁですわ、悪徳貴族!

第26話 正義の重機部隊、発進!

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 正義の重機部隊、発進!

翌朝――。
侯爵家の領地に向かう街道には、異世界にはまず存在しないはずの光景が広がっていた。

ユンボ、ブルドーザー、ロードローラー。
ルノー家の倉庫から引っ張り出された最新鋭の重機たちが、ずらりと整列している。
その中心に、淡い金髪を束ね、黄色ヘルメットをかぶったアルピーヌが立っていた。

使用人たちはピシッと敬礼し、住民たちは期待の眼差しで見守る。
今日の“工事”は、王家公認の再開発事業――表向きは。

本音はただ一つ。

「悪徳侯爵家に、思いっきりざまぁを食らわせるためですわ」

アルピーヌはすっとユンボのキャビンに手をかけた。

すると、メイド長がふと尋ねる。

「お嬢様……どうしてそこまで重機を自在に操れるのです?
 ユンボに乗る令嬢なんて、聞いたことがございませんわ」

アルピーヌは苦笑しながら答えた。

「前の世界で、ハローワークの職業訓練に通っていたのよ。
 “重機オペレーターの資格でも取れば安定につながるかしら”と考えて、ね」

メイドたちはぽかんと口を開く。

「お嬢様が……求職者支援制度……!?」
「補助金で資格……!?」
「真面目に通ってたのですか!?」

「ええ、毎朝眠い目をこすりながら行ったわ。
 講習所で土をならしたり、走行試験を受けたり……
 ――まさか、異世界でその努力が役立つとは思っていなかったけれど」

アルピーヌは軽やかにユンボへ乗り込む。

「努力というのは、意外なところで人生を助けてくれるものですわね」

静かにエンジンがうなりを上げる。
住民たちが思わず耳をふさぎ、騎士団がざわつく。

侯爵家の前に陣取る私兵たちは剣と槍を構えた。

「ここから先は侯爵家領地である!工事など許可し――」

「剣も槍も鎧も、無意味ですわ」

アルピーヌが片手で操作レバーを握ると、ユンボのアームがゆっくりと持ち上がる。
巨大な影が私兵たちに覆いかぶさり、地面が震える。

「さあ――行きますわよ、皆さん。
 最高の“近代化”をお見せしてあげましょう」

重機部隊が一斉に始動した。
アームが持ち上がり、ローラーが地を押し固め、ブルドーザーが土を削り取っていく。

侯爵家の私兵たちは青ざめた。

「こ、こんな……武器では太刀打ちできぬ……!」

「それはそうでしょうね。
 わたくしたちは文明の力で戦っていますの。」

アルピーヌのユンボが真っ先に侯爵家の外壁前へ進み――
地面を正確に掘削し始めた。

怒号と悲鳴が上がる中、アルピーヌは言い放つ。

「インフラ更新工事ですわ。
 ――ついでに、あなた方の腐敗した権威も掘り返して差し上げます♡」

重機部隊の進撃は止まらない。

侯爵家への“合法的ざまぁ”が、今まさに始まった。
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