異世界転職 重機を操るインフラクイーン ‐婚約破棄元婚約者 重機で押しつぶします みなさんやっておしまいなさい‐

しおしお

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第8章:異世界と地球、ふたつの世界で私らしく

第31話 突然の“帰宅”——推

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 突然の“帰宅”——推しのライブ参戦!

プリンセス・ラポートとの穏やかな会話が続いていたその最中だった。

アルピーヌの置いていた小型ポーチの中から――
ピコン♪ と、異世界では聞き慣れない電子音が響いた。

「……っ!?」

プリンセスが驚いた顔でポーチを見つめる。

「い、今の音は……魔道具ですの?」

アルピーヌの心臓が一瞬で跳ね上がった。

(やばっ……!スマホの通知音!!)

慌ててポーチを開けてスマホ画面を見ると――

> 《本日のライブ、まもなく開場!》
――推しアイドル公式アプリ



「…………え」

まるで時が止まったかのように、アルピーヌの手が固まった。

(今日だったあああああ!?
 推しのライブ、今日だったじゃないのよおおお!!)

プリンセスが心配そうに覗き込む。

「アルピーヌ?どうなさったの?」

「ご、ごめんなさいプリンセス!
 本当に申し訳ないんですけど――
 私、今すぐ帰らなければなりませんの!!」

「えっ!?ちょ、ちょっと……?」

返事を聞く間もなく、アルピーヌは立ち上がって早歩きで部屋を出た。



廊下を全力で歩きながら、アルピーヌはひたすら焦っていた。

(よりによってプリンセスと会ってるときに通知が来るなんて!!
 これじゃまるで王族を置いて推しを優先する女みたいじゃないの……!
 ……いや、実際そうなんだけど!!)

城の裏庭に移動し、誰もいないのを確認してから小声でつぶやく。

「ゲート……開け!」

異世界と地球を繋ぐ光の裂け目が開く。

アルピーヌは急いで中に飛び込もうとして――

「あっ。ドレスのまま帰るところだった……!」

異世界での豪華なドレス姿で電車に乗る未来が頭をよぎり、全身が凍りつく。

(こ、これジャージ事件の二の舞じゃない!)

※数週間前
──ジャージ姿で誤って異世界へ行き、
メイド達が「お嬢様が…武道着!?変身!?何事ですか!?」
と屋敷が大混乱になった“事件”があった。

(もう、学んだはずでしょう私!落ち着いて!)

仕方なく、いったん自室へ戻るためにゲートを使う。



高科純のアパートに戻ると、猛スピードでドレスを脱ぎ捨て、
ライブTシャツとスカートに着替え、バッグを掴む。

「よし!これで完璧!」

化粧直しもほどほどに、外に飛び出して電車に乗り込む。

座席に座った瞬間、純は胸を押さえた。

「……間に合う……!推しのために今日まで生きてきた……!」

周りの乗客が「なんだこの人」と視線を向けたが、気にしている余裕はない。



ライブ会場前。

既に長蛇の列ができており、純は息を切らしながら駆け寄った。

「はぁ、はぁ……ッ、間に合った……!
 推しが……推しが生きてステージに立つのを……
 この目で……見られる……!」

目を潤ませながら、グッズ販売列に並ぶ。

そして――

爆買い。

・推しのアクスタ(全種)
・タオル(2枚)
・ライブT(3種)
・ブレスライト(2本)
・CD特典つきBOX
・ランダム缶バッジ(結果、33個購入)

「ふふ……これで勝ったわ……」

完全に尊い世界へ意識が飛びかけている。



ライブ本編。

ステージに推しが現れた瞬間、純の目からは滝のように涙が流れた。

「推し……今日も……生きててくれてありがとう……!!」

周りのファンも泣いていたので問題なかった。

曲が進むにつれ、ペンライトを振り、叫び、ジャンプし――
異世界を改革しているときとはまったく別の顔がそこにあった。



ライブ終了後、余韻に浸りながら帰宅。

布団に倒れ込み、買ったばかりのCDを抱きしめる。

「私……異世界で改革して……推し活もして……
 ……最強じゃない?」

目を閉じると、帰りの電車で流れていた推しの曲が頭に蘇る。

「明日……異世界でプリンセスに謝ろ……」

そのまま眠りに落ちる直前、ふっと笑った。

「でも……推しは世界を救うのよ……」

異世界と地球——
ふたつの世界を全力で走り回る彼女の日々は、まだまだ続く。


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