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プロローグ
しおりを挟む「婚約破棄だ。」
その言葉は夜会の華やかな音楽とざわめきの中でも、まるで冷たい刃のように私の心を刺した。だが、侯爵家の一人娘として育てられた私は、そんな状況でも微笑みを崩すことはなかった。
「理由は?」
「エリゼと結婚する。君とはもう終わりだ。」
目の前で薄笑いを浮かべるのは私の婚約者であり、公爵家の跡取りであるレオナルド・ヴァルディス。そして、彼の腕に抱かれるのは私の義妹、エリゼ・エルディナ。
「そうですか。」
私はただそれだけを言い、静かに一礼した。ざわつく会場の視線を感じながら、毅然とした足取りでその場を後にする。
怒りも悲しみも不思議なほど湧いてこない。ただ一つ胸に浮かんだのは――。
「私を軽んじたこと、後悔させてあげます。」
その場を去った私の背中に向けられる視線には、驚きと同情が混ざっていたかもしれない。けれども、そんなものはどうでもいい。私は知っている。これから私がどうなるかを。
侯爵家を去る日もそう遠くはないだろう。しかし、それで構わない。私は誰にも縛られずに自分の人生を生きてみせる。婚約破棄?追放?構わないわ。
「婚約破棄された令嬢ですが、何か?」
私は胸を張り、夜空に輝く星を見上げた。ここからが私の本当の物語の始まりだ。
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