社長室の蜜月

しおしお

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第5章:新たな未来へ

5-2:プロポーズを匂わせる言葉

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秘書課の中心人物として、相沢結衣は日々忙しく働きながらも充実感を得ていた。西園寺蓮の信頼のもとで仕事をする喜びと、自分の成長を実感するたびに、彼女の胸の中には感謝と誇りが広がっていく。だが、秘書課での立場が安定するほど、蓮に対する結衣の想いは徐々に別の形を帯びていった。


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その日も、結衣は蓮のスケジュールを確認しながら、重要な会議の準備に追われていた。蓮の仕事量は膨大であり、結衣もまたそれに比例して多忙を極めていたが、彼女の表情には疲労感はなく、むしろやりがいがにじみ出ていた。

「相沢、明日の午後の会議だが、議題の資料は揃っているか?」
蓮が社長室から声をかける。

「はい、全て準備できています。念のため、最新のデータも更新しておきました。」
結衣は資料を手にし、迅速に蓮へ渡した。

彼は目を通しながら小さく頷いた。
「いつも助かる。お前のサポートがなければ、このプロジェクトもここまで順調には進まなかっただろう。」

蓮の言葉に、結衣の胸はほのかに熱くなった。彼の言葉一つ一つが、いつも結衣の心を強くしてくれる。


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会議の後、蓮は結衣を呼び出し、話があると言った。

「今日は少し時間がある。夕食でも付き合ってくれないか?」

突然の誘いに、結衣は驚きながらも了承した。
「もちろんです。どちらに行かれますか?」

「近くにいい店がある。そこへ行こう。」

蓮が案内したのは、静かなフレンチレストランだった。二人で食事をすること自体は珍しくなかったが、この日だけはどこか特別な雰囲気が漂っていた。


---

店内に入り、席に着くと、蓮が結衣にワインリストを差し出した。
「今日は少し贅沢な時間を過ごそう。好きなものを選んでくれ。」

その言葉に、結衣は少し照れくさそうに微笑んだ。
「社長と一緒なら、どんな時間でも十分に贅沢です。」

蓮は短く笑い、静かにワインを選んだ。その後も、会話はスムーズに進み、仕事の話題から少しプライベートな話題へと移った。

「相沢、お前はこれからどうしたいと思っている?」
蓮がふと、そんな質問を投げかけた。

「どうしたい……ですか?」
結衣は一瞬言葉に詰まり、蓮の意図を探るように彼の顔を見つめた。

「そうだ。秘書としても、お前個人としても、どんな未来を思い描いているのかを知りたい。」

蓮の真剣な瞳に見つめられ、結衣は少し考え込んだ後、静かに答えた。
「私は、社長を支える今の仕事がとても好きです。それに、社長が目指している未来を、少しでもお手伝いできるのなら、それが私の幸せだと思っています。」

その言葉を聞いた蓮は、一瞬だけ表情を緩めた。
「そうか。それはありがたい。」

蓮はグラスを持ち上げ、一口ワインを飲む。そして、低く静かな声で続けた。
「だが、俺は仕事の中だけでなく、プライベートでも支えてほしいと思うことがある。」

その一言に、結衣は一瞬心臓が止まるような感覚を覚えた。

「プライベート……ですか?」

「そうだ。お前が俺のそばにいることが、どれだけ大きな支えになっているか、お前自身が気づいていないかもしれないが、俺にとってはそれが事実だ。」

蓮の言葉に、結衣は胸が熱くなり、言葉を失った。彼が自分を必要としてくれている――その事実が、これほどまでに心を揺さぶるとは思っていなかった。


---

その後も会話は続いたが、結衣の心は蓮の言葉に囚われていた。「プライベートでも支えてほしい」というその一言が、まるでプロポーズを匂わせるように感じられたからだ。

食事を終えて店を出ると、夜の冷たい空気が二人を包んだ。蓮がそっと結衣に歩み寄り、静かに言った。
「今日は付き合ってくれてありがとう。これからも頼りにしている。」

「こちらこそ、ありがとうございました。私もこれからもっと頑張ります。」

結衣がそう答えると、蓮は少しだけ微笑んだ。
「期待している。」

その言葉とともに、蓮は結衣を見送り、その背中を見つめながら、結衣は胸の中で自分の想いが確かに形作られていくのを感じていた。


---

その夜、結衣は家に帰り、蓮との会話を何度も思い返していた。彼の言葉には確かな信頼と、隠しきれない優しさが込められていた。そして、彼女自身もまた、蓮と共に歩む未来を強く望んでいることに気づいた。

「プライベートでも支えてほしい……」
その言葉の意味を噛み締めながら、結衣の中で一つの決意が芽生え始めていた。それは、彼を秘書として支えるだけではなく、一人の女性として彼を支えていきたいという想いだった。

彼女の中で蓮への想いは、もはや揺るぎないものとなりつつあった――。

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