【悪役令嬢】転ぶ令嬢と暗躍メイドの完璧なる逆襲劇

しおしお

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第27話 ソフィアの複雑な心境

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第27話 ソフィアの複雑な心境

 舞踏会の華やかな調べが続き、大広間は歓声と拍手に包まれていた。  
 エドモンドの連行が終わった後、クラリッサ・フォン・ローゼンベルクはレオンハルト王子とのダンスを終え、静かに広間の片隅へ下がった。  
 彼女の金色の髪がシャンデリアの光を浴びて輝き、宝石が散りばめられたドレスが優しく揺れる。  
 誰もが彼女を称賛し、視線を注いでいた。

 クラリッサは優雅に扇を広げ、口元を隠しながら周囲を見渡した。  
 レオンハルトは廷臣たちと談笑し、次期国王としての威厳を放っている。  
 彼女は静かに微笑み、視線を片隅に移した。

 そこに、ソフィアが立っていた。  
 彼女はメイド服の上に控えめなドレスを羽織り、壁際に寄り添うように佇んでいる。  
 表情は穏やかだが、瞳の奥に、微かな影が宿っていた。

 クラリッサはゆっくりとソフィアに近づき、手を差し出した。

「ソフィア……あなたも、一緒に踊りましょう?」

 ソフィアは驚いたように目を丸くし、すぐに優しく微笑んだ。

「お嬢様……ありがとうございます」

 二人は軽やかにステップを踏み始めた。  
 音楽が優しく流れ、クラリッサのドレスとソフィアの控えめなドレスが調和する。  
 広間の人々は、二人のダンスに温かい視線を注いだ。

 しかし、ソフィアの心は穏やかではなかった。  
 彼女はクラリッサの手を握りながら、静かに目を伏せた。

(……お嬢様の晴れ姿……本当に、美しいですわ)

 クラリッサはレオンハルトとのダンスを終え、次期国王の隣に立つ可能性を匂わせる存在となった。  
 廷臣たちの囁きが、耳に届く。

「お似合いですわ……」

「クラリッサ様が新たな王妃になられるのでは……」

 ソフィアはそれを聞きながら、胸の奥に小さな棘が刺さるのを感じた。

(……やっぱり、私はメイド。  
 お嬢様の隣に立てるのは、殿下なのですわね)

 彼女は静かに息を吐き、クラリッサの顔を見上げた。  
 クラリッサは優しく微笑み、ソフィアの手を強く握り返した。

「ソフィア……ありがとう。  
 あなたがいなければ、ここまで来られなかったわ」

 ソフィアは目を細め、静かに答えた。

「お嬢様……わたくしは、ただお嬢様のそばにいられるだけで幸せです」

 しかし、その言葉の裏に、微かな寂しさが混じっていた。  
 クラリッサはそれを敏感に感じ取り、ダンスを止め、ソフィアを広間の隅へ連れ出した。

「ソフィア……どうしたの?  
 顔が、少し曇っているわ」

 ソフィアは一瞬、言葉に詰まり、目を伏せた。

「……お嬢様が、こんなに輝いていらっしゃるのを見て……  
 わたくしは、とても嬉しいですわ。  
 でも、少し……寂しいのです」

 クラリッサはソフィアの手を両手で包み込んだ。

「寂しい……?  
 どうして?」

 ソフィアは静かに微笑んだ。

「お嬢様は、これから王妃になられるかもしれない。  
 わたくしは、メイドのまま……  
 お嬢様の隣に、ずっと立てるわけではありませんわね」

 クラリッサの瞳が揺れた。  
 彼女はソフィアを強く抱きしめた。

「そんなこと……ないわ。  
 あなたは、わたくしの大切な人よ。  
 メイドだろうと、婚約者だろうと……  
 わたくしにとって、あなたはいつも、そばにいてくれる人」

 ソフィアの瞳に、涙が浮かんだ。

「お嬢様……」

 クラリッサはソフィアの頰に手を当て、優しく拭った。

「これからも、ずっと一緒にいましょう。  
 王妃になっても、わたくしはあなたを離さないわ」

 ソフィアは静かに頷き、クラリッサの胸に顔を埋めた。

「ありがとうございます……お嬢様」

 二人はしばらく抱き合い、互いの温もりを感じた。  
 広間の喧騒は遠く、二人だけの静かな時間が流れた。

 やがて、クラリッサはソフィアを離し、優しく微笑んだ。

「さあ、舞踏会はまだ終わっていないわ。  
 あなたと一緒に、もっと踊りましょう」

 ソフィアは涙を拭い、明るく微笑んだ。

「はい、お嬢様」

 二人は再び広間の中央へ戻り、軽やかにステップを踏んだ。  
 廷臣たちは、二人の絆に温かい拍手を送った。

 舞踏会の夜は、華やかに続き、クラリッサとソフィアの絆は、さらに深まった。

 逆襲の成功は、二人の未来を照らす光となった。  
 ――これからも、ずっと一緒に。

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