傍若無人の悪役令嬢 ―幸せになりたいなら黙って私に従いなさい―

しおしお

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第15話 王都からの圧力?知らない言葉ですわ

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 領地改革が進み、治安も改善し、物流も拡大し――
 ついには「この国で一番勢いのある領地」と噂され始めた頃。

 ついに“あの場所”が動いた。


---

◆◆王都・評議会室

「……これは完全に行き過ぎだろう!」

「公営住宅、上下水道、道路舗装……何だあの速度は!」

「改革の“やりすぎ”は混乱を招く!止めさせろ!!」

「第一王子ルーファス殿下の顔も立たん!!」

 重臣たちが口々に叫ぶ。

 そこへ一人が震える声で告げた。

「実は……国民の間で……
 “あの悪役令嬢こそ有能なのでは?” という噂が……」

「――黙れッ!!」

 室内に怒号が響く。

「女一人の暴走で王都の威厳が揺らぐなど、断じて許されん!!」

「ならばどうする?」

「……第二王子セドリックを派遣する」

「なんですって!?あの俺様を!?」

「彼なら止められる。“口論で負けたことがない男”だ」

「――というか、あいつ以外近づきたがらんだろう、あの令嬢に……」

 空気が重く沈む。

「では決まりだ。通達を送れ。
 “改革を即刻中止せよ”とな」


---

◆◆領地・執務室

 その日の午後、王都からの封書が届いた。

「ヴァイオレット様……王都より、緊急通達が……」

 アルフレッドが青ざめた顔で差し出す。

「まあまあ、珍しいことですわね。
 あの王都が、わざわざ私にお手紙?」

 ヴァイオレットは優雅に封を切った。

 中身を一瞥。

 次の瞬間――

「ふふ……ふふふ……」

「お嬢様?なぜ笑って――」

「ご覧なさい、アルフレッド。“改革を中止せよ”ですって」

「……ええ!?し、中止!? な、なぜですか!?
 こんなに領地が良くなっているのに!!」

「理由など書くまでもないのでしょう?
 “王都のメンツが潰れるからやめなさい”とでも
 言いたいのでしょうね」

 ヴァイオレットの微笑みは、上品なのに凶悪だった。

「どうされますか?従いますか?」

「従うわけ、ありませんでしょう?」

 即答。

「却下ですわ。あ、返事は不要ね。読む価値もありませんもの」

「よ、読む価値……!」


---

◆◆エマ監察官、胃痛が増す◆◆

「ヴァイオレット様。
 王都は本気であなたを止める気だと思います」

「なら来ればよろしいのですわ。
 私は逃げませんし、怯えませんもの」

「しかし――」

「それに、“中止せよ”と指示を出す暇があるなら、
 王都は道路でも舗装しておけばいいのですわ。
 あそこ、ひどい轍になってますもの」

「そ、それは……!?」

(この女……本当に怖い……!
 でも正論すぎて反論できない……!)エマの胃が痛む。


---

◆◆領民の声は王都とは真逆◆◆

「ヴァイオレット様のおかげで仕事が増えた!」

「生活が安定した!」

「治安が良くなった!」

 領民の声援がどんどん大きくなる。

 それを受け、ヴァイオレットは言い切る。

「改革を止めたら、困るのはこの人たち。
 ――王都のご機嫌など、知ったことではありませんわ」

(王都と令嬢……完全に価値観が真逆……
 これは衝突不可避ですわね……)と、エマは天を仰いだ。


---

◆◆王都からの第二通達:人間付き添い◆◆

 翌日、また封書が届く。

「また手紙ですか?往復書簡の趣味でも始めたのかしら?」

 開封したヴァイオレットは、眉ひとつ動かさずに読み上げた。

「“改革の監視と指導のため、王族を派遣する。
 拒否すれば反逆と見なす”……だそうですわ」

「反逆……!?」

「ふふ……ようやく本気になったみたいね」

 アルフレッドが震える。

「王族って……まさか……」

「ええ、来るのでしょうね。
 王家が手足のように動かせる、扱いやすい第一王子ではなく……」

 その瞬間、エマが顔を上げる。

「では……来るのは……!」

「ええ――」


---

◆◆第二王子セドリック、派遣決定◆◆

 ヴァイオレットの口元が、勝負師の笑みになる。

「“俺様”と呼ばれ、王都一の論破魔。
 政治家たちを口だけで泣かせた男。
 第一王子より有能すぎて扱いづらいから次期国王にできなかった男――」

「第二王子、セドリック・アルスター」

 エマが呟く。

「王都が送り込んだ“最終兵器”ですわね……」

「望むところですわ。
 あの男、私と会ったらきっとこう言いますわよ?」

 ヴァイオレットは高らかに笑った。

「“お前の好きにさせると思うなよ!”ってね!」


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