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第21話 王都、動く──第一王子派の黒い噂
しおりを挟む王都・王宮の奥深く。
分厚いカーテンに覆われた部屋で、男たちがひそひそと集まっていた。
「……ヴァイオレットの領地改革、予想以上の成果だな」
「民が移住したという噂は本当か?」
「本当どころではない。隣領の者どもまで押し寄せ、今や“黄金の領地”などと持ち上げられている」
「忌々しい……!」
怒りに拳を震わせたのは、第一王子派の筆頭貴族。
隣では、第一王子レオンが椅子にふんぞり返っていた。
「どういうことだ。
あの女は俺の元婚約者だぞ?」
貴族たちは気を遣ってうなずく。
「王子の“目を付けた令嬢”なら、没落して当然のはず……」
「なのに、なぜあれほど民に支持されるのか……」
レオンは忌まわしげに舌を鳴らした。
(俺が捨てた女のくせに、成功など許せるか……!)
その時、ひとりの貴族が手を挙げた。
「閣下、いっそのこと“反逆者”という噂を流しては?」
「反逆者?」
「領地改革などという大それた行いは、本来、王家がするべきことです。
そこへ民衆を取り込み、急激に勢力を伸ばしている……これは王家への挑戦だ、と」
レオンの目が鋭く光る。
「面白い。
つまり──」
彼は端整な顔を歪ませ、にやりと笑った。
「ヴァイオレットは王家転覆を狙う反逆者である、か。」
ざわ……!
一瞬で、貴族たちの表情に陰湿な期待が浮かぶ。
「それならば正当な理由で取り締まれますな」
「王都の民にも“危険思想の女”として広めれば……」
「評判を落とせます!」
レオンは満足げにうなずいた。
「よし、噂を広めろ。
民衆は愚かだ。
少し煽れば、すぐに騒ぎ立てる」
彼はつぶやいた。
「ヴァイオレット……。
俺を拒み、俺より輝くなど、二度とさせるものか」
部屋にどす黒い笑みが満ちていく。
――そのころ、ヴァイオレット領。
ミーナ「ヴァイオレット様!! 王都の噂が……!」
情報通の少女が駆け込んできた。
「噂? 何かしら?」
ミーナは息を切らしながら続けた。
「“ヴァイオレット様が王家への反逆を企てている”って……!」
ヴァイオレット「…………は?」
ぴきり、とこめかみに青筋が走る。
その瞬間、周囲の空気が変わった。
セドリックは呆れ半分、怒り半分の声を上げる。
「第一王子派の仕業か……! あいつら、ついに本気で潰しに来たな」
「わたくしを反逆者扱い? ふざけた話ですわね」
ヴァイオレットは優雅に髪を払った。
だがその瞳は、氷のように冷え切っていた。
「……よろしい。
王都が喧嘩を売るというのなら――」
すっと、扇子を開く。
「買って差し上げましょう。徹底的に。」
こうして彼女は、王都の陰謀の中心に否応なく巻き込まれていく。
だがまだ誰も知らない。
王都を震撼させる“反撃の一手”が、すでに動き始めていることを。
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