23 / 32
第23話 第一王子、まさかの再婚約を申し出る
しおりを挟むヴァイオレットの領地にある新政庁――。
静かに書類を捌くヴァイオレットのもとへ、
慌てふためく侍女が飛び込んできた。
「お嬢様……っ、大変です!大変でございます!」
「工事が遅れているのかしら?
それとも、また誰かが下水道に落ちたとか?」
「違います!! 第一王子殿下がこちらに……!!」
ヴァイオレットの手がピタリと止まった。
セドリック「…………は?」
政庁の入り口から、場違いなほどきらびやかな衣装を着た男が現れた。
――第一王子レオン。
(読者全員:帰れ。)
レオンはバッと両手を広げ、劇場の主演俳優みたいなポーズで叫んだ。
「ヴァイオレット! 君に会いに来た!!」
政庁の時間が止まった。
セドリックが最初に言った。
「帰れ。」
「ちょ、ちょっと!?第二王子、邪魔をするな!」
ヴァイオレットは眉間を押さえ、
“頭痛の原因が自力で歩いてくるのを初めて見た” という顔になった。
「一体、何のご用かしら?」
レオンは深いため息をつき、
“悲劇の美青年”みたいな表情を作ってみせた。
「……気づいたんだ。
君の罵声が……ないと、生きていけないということに!!」
(読者:!?!?!?)
セドリック:「病院行け。」
ヴァイオレット:「……は?」
レオンは熱い眼差しで続ける。
「最初は恐怖だったんだ。
でも今は違う。
君の怒鳴り声が……僕の心に火を灯すんだ!」
(読者:やっぱ病院案件。)
ヴァイオレットは本気で心配そうに彼を見た。
「……精神科医を紹介しましょうか?」
「違うんだヴァイオレット!
僕は君が好きなんだ!!
もう一度……婚約してほしい!!」
ずぅぅぅぅん。
政庁の空気が凍りついた。
セドリックは完全にドン引きしていた。
「本気で気持ち悪いな、お前。」
「き、気持ち悪い!?なぜだ!!」
「言わせるな。読者の総意だ。」
ヴァイオレットは椅子から優雅に立ち上がった。
扇子をゆっくり閉じ――
「……誰か、この変態をつまみ出しなさい。」
「変態!?そんな……!」
「あなた、私を反逆者扱いしておいて、
今さら求婚だなんて、恥という概念が存在しませんの?」
「だって……好きなんだ!」
「知らなくてよかったですわ!!」
屈強な衛兵たちが近づき、
レオンは引きずられていった。
「ま、待ってくれ!!
君の罵声が……僕の栄養なんだぁーーっ!!」
最後まで意味不明だった。
静寂が訪れる。
セドリックはヴァイオレットを横目で見た。
「……よく我慢したな。」
「我慢などしていませんわ。
ただ……殴る価値もありませんでしたの。」
「安心した。俺の未来は明るい。」
「勝手に明るくしておきなさい。」
二人の言い争いが再開される。
しかし政庁の職員たちは知っていた。
さっきの王子より100倍まともな夫婦喧嘩のように聞こえる ということを。
---
3
あなたにおすすめの小説
追放された悪役令嬢、辺境で植物魔法に目覚める。銀狼領主の溺愛と精霊の加護で幸せスローライフ!〜真の聖女は私でした〜
黒崎隼人
恋愛
「王国の害悪」として婚約破棄され、魔物が棲む最果ての地『魔狼の森』へ追放された悪役令嬢リリア。
しかし、彼女には前世の記憶と、ゲーム知識、そして植物を癒やし育てる不思議な力があった!
不毛の地をハーブ園に変え、精霊と友達になり、スローライフを満喫しようとするリリア。
そんな彼女を待っていたのは、冷徹と噂される銀狼の獣人領主・カイルとの出会いだった。
「お前は、俺の宝だ」
寡黙なカイルの不器用な優しさと、とろけるような溺愛に包まれて、リリアは本当の幸せを見つけていく。
一方、リリアを追放した王子と偽聖女には、破滅の足音が迫っていて……?
植物魔法で辺境を開拓し、獣人領主に愛される、大逆転ハッピーエンドストーリー!
捨てられた悪役はきっと幸せになる
ariya
恋愛
ヴィヴィア・ゴーヴァン公爵夫人は少女小説に登場する悪役だった。
強欲で傲慢で嫌われ者、夫に捨てられて惨めな最期を迎えた悪役。
その悪役に転生していたことに気づいたヴィヴィアは、夫がヒロインと結ばれたら潔く退場することを考えていた。
それまでお世話になった為、貴族夫人としての仕事の一部だけでもがんばろう。
「ヴィヴィア、あなたを愛してます」
ヒロインに惹かれつつあるはずの夫・クリスは愛をヴィヴィアに捧げると言ってきて。
そもそもクリスがヴィヴィアを娶ったのは、王位継承を狙っている疑惑から逃れる為の契約結婚だったはずでは?
愛などなかったと思っていた夫婦生活に変化が訪れる。
※この作品は、人によっては元鞘話にみえて地雷の方がいるかもしれません。また、ヒーローがヤンデレ寄りですので苦手な方はご注意ください。
悪役令嬢としての役目を果たしたので、スローライフを楽しんでもよろしいでしょうか
月原 裕
恋愛
黒の令嬢という称号を持つアリシア・アシュリー。
それは黒曜石の髪と瞳を揶揄したもの。
王立魔法学園、ティアードに通っていたが、断罪イベントが始まり。
王宮と巫女姫という役割、第一王子の婚約者としての立ち位置も失う。
追放された悪役令嬢は貧乏になっても図太く生きますわ!
ワールド
恋愛
貴族の娘として生まれた公爵令嬢クラリッサ。
陰謀の濡れ衣を着せられ、華やかな社交界から追放――そして辿り着いたのは、ボロ小屋と畑だけの辺境村!?
「結構ですわ! 紅茶がなければハーブティーを淹れればいいじゃありませんの!」
貧乏生活でも持ち前の図太さで、村の改革に乗り出すクラリッサ。
貧乏でも優雅に、下剋上でも気高く!
そんな彼女の前に現れたのは、前世(王都)で彼女を陥れた元婚約者……ではなく、なぜか彼の弟で村に潜伏していた元騎士で――?
「俺は見てた。貴女の“ざまぁ”は、きっとまだ終わっちゃいない。」
ざまぁとスローライフ、そしてちょっとの恋。
令嬢、辺境で図太く咲き誇ります!
婚約破棄された悪役令嬢ですが、なぜか変人侯爵に溺愛されてます
春夜夢
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢・レイナは、王子とその「自称ヒロイン」の公開断罪を、冷静に受け入れた――いや、むしろ内心大喜びだった。
自由を手に入れたレイナが次に出会ったのは、変人と名高い天才侯爵様。なぜか彼から猛烈な溺愛求婚が始まって……!?
「君がいい。契約結婚でも構わないから、今すぐ結婚してくれ」
「……私、今しがた婚約破棄されたばかりなのですが」
婚約破棄から始まる、予測不能な溺愛ラブコメディ。
策士な令嬢と、ちょっとズレた変人侯爵様の恋の行方は――?
何も決めなかった王国は、静かに席を失う』
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。
だが――
彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。
ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。
婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。
制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく――
けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。
一方、帝国は違った。
完璧ではなくとも、期限内に返事をする。
責任を分け、判断を止めない。
その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。
王国は滅びない。
だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。
――そして迎える、最後の選択。
これは、
剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。
何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる