結婚しない女が転生したら、棚ぼた婚約が待っていた。~政略結婚のはずが、王弟殿下の溺愛が止まりません!?~

しおしお

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1-2:「婚約者……だと!?」

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王弟殿下――レオン=フォン=グラヴィス。

そう聞いた瞬間、思考が停止した。

だって、王族だよ? 王族。
異世界に転生したら、婚約者が“王族”とか、テンプレすぎるでしょ!?
しかも、さっきエマが言ってたじゃない。“王国一の騎士”って。

“最強で美形で高貴な男性”なんて、乙女ゲームの攻略対象そのものじゃない!

なのに、そんな完璧キャラが、よりにもよって――私の婚約者?

「信じられない……いや、信じちゃいけない……!」

私はベッドの上で呟いた。完全に目を疑っていた。
なにせ私は、前世・加藤みどり。
冴えない社畜OLで、29歳目前にして彼氏いない歴=年齢を絶賛更新中。
“結婚できないんじゃなくて、しない女なの!”なんて嘯いていたけど、現実は出会いすらなかった。

そんな私が、なぜ、異世界でいきなり王子と婚約してるの……?
なにそれ、コント?

「殿下がこちらにいらっしゃいます。お嬢様、いかがなさいますか?」

エマの問いに、私は反射的に首を振った。

「ちょ、ちょっと待って。心の準備が……!」

「……お嬢様?」

「だって! だって、王子だよ!? 顔合わせの前に心構えってものがあるでしょ!? それに私、今すっぴんだし!」

「すっぴん……?」

「とにかく、あと五分! いや、十……いや、やっぱり三日欲しい!」

あわあわしていると、扉の向こうから柔らかい笑みを含んだ声が届いた。

「お邪魔しても構いませんか、サラ?」

――あ、だめ。声がいい。
この瞬間、私の中で何かが確信した。

“ああ、この人、間違いなく5高だ”

 

扉が開かれる。
光が差し込むその中に、彼はいた。

背が高く、スラリとした長身。
肩まで流れるような金の髪に、鋭すぎない優しい顔立ち。
金の瞳がやわらかに笑みを湛えていて、その視線が――まっすぐに私を捉えている。

「……よかった。目覚めてくれて」

声が、柔らかくて、深くて、低い。
まるで高級ワインみたいな響き方してるんだけど!?

あの、こんなイケメン、少女漫画以外で存在していいんですか!?

「……あ、えっと、あの……」

パニックになって、まともに言葉が出ない。
そんな私に、彼――レオン殿下は、椅子を引き寄せて静かに腰かけた。

「突然来て驚かせてしまったね。けれど……君の顔が見たくて」

え、なにこの恋愛小説みたいな台詞。
顔が見たくて来ましたって、え、それ本気で言ってる?

「記憶が混乱していると聞いて、いてもたってもいられなかった。
何かを思い出せなくてもいい。君が、無事でいてくれれば――それだけで、私は十分なんだ」

いやいやいやいや、ちょっと待って。
この人、どこの乙女ゲームのメインルートですか!?
心の中で前世のOL魂が絶叫してる。
こんなの、リアルで言われたら恋しちゃうに決まってるじゃない!

「……どうして、そんなに……優しくしてくれるんですか?」

私が震える声でそう訊ねると、彼はきょとんとした顔をしたあと、少しだけ困ったように微笑んだ。

「それは……君が私の婚約者だからだよ。私の、大切な人だ」

ぐはっ。
今の、トドメ。やばい、体温が上がる。

なんなのこの世界、甘すぎない!?
政略結婚のくせに、こんなにラブラブモード入ってて大丈夫!?
前世の私が、恋愛を諦めてた分、全部取り返そうとしてない!?

「…………」

しばらく黙っていたら、レオンは少し不安そうに眉を寄せてきた。

「サラ、具合が悪いのかい? 顔が真っ赤だ」

「ち、違います! ただの、えっと、のぼせただけです!」

思わず枕に顔を埋めた。耐えきれない。
前世の干物OL魂では、この破壊力には抗えない。

でも――私、こんな人生、悪くないかもって、思ってしまった。

 
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