『ポンコツ社員と呼ばれた私、実はエースでした!?』

しおしお

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第二部 第2章 沈黙の反撃

セクション2:報告書の提出

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セクション2:報告書の提出

午後五時、第一営業部のオフィスにはまだ静かな緊張が漂っていた。
キーボードの音も、いつもより控えめだ。

真子は黙々と資料を整えていた。
そのモニターには、複雑な数式とグラフ、そして大量のクロスチェック表。

> 「……取引記録の更新タイムスタンプ、
掲示板投稿の時刻、社内VPNのログイン履歴……」



彼女の指先が淡々と動くたび、
数字と文字が見事な整列を見せていく。

「まるで機械ね」と、同僚の一人が小声で呟いたが、
誰も近づこうとはしなかった。

真子は冷たい表情のまま、淡々と最後のシートを追加する。
ファイル名を確認し、保存ボタンを押す。

> 「業務不正・情報流出に関する分析資料_ver.4.xlsx」



完成までに要した時間、約32時間。
ほとんど睡眠も取らず、
社内すべてのログと伝票を一人で照合して作り上げたものだった。


---

夕刻。
第一営業部の窓から、沈みゆく夕日が射し込む。
神宮寺がそっと声をかけた。

「……できたか?」
「はい。もう、逃げ道はありません」

彼女はファイルをUSBメモリに保存し、
それを両手で神宮寺に渡した。

「お願いできますか。私はこれ以上、出しゃばりたくありませんので」
「出しゃばりじゃない。これは、正義の仕事だ」

神宮寺はわずかに微笑み、
受け取ったUSBを胸ポケットに収めた。

「社長室に持っていく。……すぐ戻る」
「はい」

真子は軽く頭を下げ、
再びデスクに戻って残りの業務を始めた。
まるで、何事もなかったかのように。


---

一方その頃、社長室。

上條社長は書類を整理しながら、
机上の時計を見た。

> 午後六時四十分。



「そろそろ来る頃か……」
独りごちるように呟いたところで、ドアがノックされた。

「神宮寺です」
「入れ」

神宮寺が静かに入室し、USBを差し出す。
「例の件です。すべての証拠と分析結果が入っています」
「ふむ」

社長はUSBを受け取り、ノートPCに接続する。
数秒後、画面にファイルが開かれた。
無機質なExcelシート――だが、そこに詰め込まれた情報量は圧倒的だった。


---

「……これは、彼女が作ったのか?」

社長の目が細められる。
シート1には“時系列比較表”。
掲示板投稿、社内ネットワークアクセス、メール送受信ログ――
それらが分単位で照合されている。

> 投稿 2025/10/02 20:43
ログインユーザー:tadokoro_shige
IP:192.168.22.07
デバイス名:PC-07



その右列には、赤い罫線で囲まれたメモ欄。

> ※投稿後、社内サーバーから同一端末へのアクセスを確認。
当該時間帯、他社員ログイン履歴なし。



神宮寺が静かに言葉を添える。
「彼女は社内システム担当ではありません。
 それでも、業務記録とログを突き合わせ、
 投稿主を特定したんです」

「……まるで監査官だな」

社長はページをめくるたびに、
感嘆とともに眉を寄せた。

> “被害社員:野呂真子”
“発信経路:第二営業部端末経由”
“目的:特定社員の名誉毀損と業務妨害”



最後のページには、一文が添えられていた。

> “本資料は、感情ではなく数字に基づき作成しました。
嘘は、数字の中で必ず崩壊します。”
――野呂真子



社長の手が止まった。
小さく息を吐き、
机の上でペンをトントンと鳴らす。

「……彼女は、本当にすごいな」
「そう思います。彼女は“沈黙”のまま、誰よりも正確に戦った」

神宮寺の声は静かだが、誇らしげだった。


---

上條はUSBを外し、封筒に入れる。
そして、人事部長宛のメモを一枚書いた。

> 『第二営業部に関する監査結果資料を確認。
明日午前九時、役員会議を招集する。
全員出席のこと。』



それを書き終えると、ふと呟いた。

「……沈黙のざまぁ、か」

神宮寺が一瞬、目を細めた。
「え?」
「いや、独り言だ」

社長は立ち上がり、窓の外を見た。
夜の街灯が、ビルの外壁を照らしている。
その灯りはまるで、
“正義の証拠”を静かに照らす光のようだった。

「明日で決着をつける」
「了解しました」

神宮寺は一礼し、扉へ向かう。
その背中を見送りながら、社長は再び資料を開いた。

> “嘘は、数字の中で必ず崩壊します。”



その一文を、もう一度ゆっくりと読み返す。
まるで詩のように美しく、冷たい真実だった。


---

夜。
オフィスを出た真子は、
自販機の灯に照らされながら、缶コーヒーを手に歩いていた。

「数字は、嘘をつかない」

呟いた声は、夜風に溶けた。
誰に聞かれることもない、静かな反撃の言葉。

彼女の“ざまぁ”は、
声を荒げることなく――
ただ、完璧な報告書という形で放たれたのだった。


---
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