11 / 106
11 交渉(決闘)
しおりを挟む
「ルールはシンプルだ。決闘形式の一対一で、俺が百発殴る。オッサンは回避のみ可能だ。耐えられたらEランク昇格の推薦状を書いてやるよ」
と冒険者の男は言った。
「それでいい」
「もし耐えられなかったら、そうだな、一生Fランクで俺らの召使いにでもなってもらうぜ」
「かまわん。この時代の人間の戦闘能力も確認しておきたいしな。ちょうどよかろう」
「何言ってやがる?」
「気にするな。条件を飲むということだ」
俺が頷くと、仲間の男たちが酒を飲みながら盛り上がった。
「いいぞ!」
「やっちまえ、ランド!」
魔王は、すまし顔で俺を見ている。
「じゃあ始めだあっ!」
ランドという名の男が、言いながら早速一発目を繰り出す。
俺はその場に動かず上体だけそらして避けた。
「!」
「一つ」
ランドは目を見張った。思いのほか俺の動きが俊敏だったので驚いたらしい。
が、その場に張り付いてさらに拳の連撃。
俺はさらにそれを避けていく。もちろん口に出して数えることも忘れていない。
連撃を避ける。
掴みかかろうとするのを距離を置いてかわす。
ランドが詰めてきて、さらに連撃。
避ける。避ける。避ける。避ける。
「これで五十発だ。あと半分、打ち込んでこい」
「なんだこいつ、全然当たらねえ!?」
ランドの額に汗が浮かんでいた。
さすがCランク、冒険者の中でも中堅といったところか。拳は鋭く、重みがあった。しかし当たらなければ意味はない。
空振りを連発したことで、ランドの体力もかなり減っているようだった。
「……やるじゃねえかオッサン。じゃあ、これなら」
ランドは、身をかがめて、
「どうだよ!」
胸に隠していた何かをこちらに投じる。
ナイフだ。
たまりかねて、ナイフを投擲したらしい。
足を狙っている。動きを奪うつもりか。
「…………」
俺はそれを最小限の動きでかわす。
「何っ!? これも避けただと!?」
「五十一……と言いたいところだがナイフはルール違反だろう」
俺が注意すると、男は殺気のこもった目で笑った。
「へっ、ルール変更だ。先に殺した方が勝ちにしよう」
「死んだらお互いの約束は果たせないだろう」
「うるせえ!」
聞く耳持たないか。
「誰か、俺の剣を持ってこい!」
「いいルールだな。貴様の剣とは、ここに置いてあるこれか?」
言って、満面の笑みでロングソードを両手に抱えて持ってきたのは、魔王だった。
「存分にやるがいいぞ」
「え? あ、ああ、そのつもりだが」
ランドがキョトンとして剣を受け取った。
俺は呆れながら魔王を見た。
「おい。なぜお前もそっちの味方をしている」
「トントンよ、我は貴様の敵だ。ここで負けてもらわねば困る」
魔王は意地の悪い顔で笑った。俺はため息をついた。
「……ああ、そうだったな」
剣を抜いて、ジリジリと間合いを詰めてくる男。
「娘にも見捨てられたか! よほどお前と離れたいらしいぜ!」
「だろうな。気持ちはよくわかる」
「悔しかったら精霊剣で反撃してきなよオッサン! できるんならな!」
「先に殺した方が勝ちと言ったな。それは俺も攻撃していいということでいいんだな?」
「やれるもんならやってみな! 丸腰で何するか知らねえがな!」
ランドが剣を振りかぶる。
俺は剣を振り下ろすタイミングで懐に入り、剣を持つ方の手首をつかんでひねり上げる。
「ぐあっ!?」
関節を極めながら剣を奪い、首にロングソードの刃を突きつける。
「続けるか?」
あえて殺気を浴びせながら問う。これ以上続けると首を飛ばす、という意思表示だ。
「ま、参った!」
ランドが負けを認めると、魔王は残念そうにため息を吐いた。
「まったく役に立たんな、このドチンピラ」
聞こえてるぞ。
「くっ」
悔しそうにランドは歯噛みする。
「酒を飲んで気持ちよくなっているところに突然俺が頼みにきたものだから面食らっただろう。すまなかったな」
俺は諭すように言った。
「魔獣と戦うということはこの上なく危険なことだ。オッサンになってからやるものじゃない。きみは身の程知らずな俺のために、強い言葉で牽制してでもEランクへ無理に上がるのを止めようとしてくれた」
俺は剣をランドに返しながら続ける。
「忠告してくれてありがとう。でもこの通り、俺は大丈夫だ。よければ推薦状を書いてもらえないだろうか?」
たぶん酒に酔って凶暴になってただけだろうが、こう言ったほうが推薦状書いてくれそうだからな。
剣を受け取りながら、ランドは舌打ちする。
「くそっ、わかったよ。書きゃいいんだろ、書きゃ!」
不良がナイフ片手に「殺す」と脅しているようなものだ。本当に人を殺す覚悟を持っているとも思えなかった。
俺のいた時代はもっとひどかった。本物のならず者なら、最初から殺してすべて奪う気で来ている。
この程度で冒険者としてやっていけるのか……と思わないでもないが、まあ推薦状書いてくれるならよしとしよう。
と冒険者の男は言った。
「それでいい」
「もし耐えられなかったら、そうだな、一生Fランクで俺らの召使いにでもなってもらうぜ」
「かまわん。この時代の人間の戦闘能力も確認しておきたいしな。ちょうどよかろう」
「何言ってやがる?」
「気にするな。条件を飲むということだ」
俺が頷くと、仲間の男たちが酒を飲みながら盛り上がった。
「いいぞ!」
「やっちまえ、ランド!」
魔王は、すまし顔で俺を見ている。
「じゃあ始めだあっ!」
ランドという名の男が、言いながら早速一発目を繰り出す。
俺はその場に動かず上体だけそらして避けた。
「!」
「一つ」
ランドは目を見張った。思いのほか俺の動きが俊敏だったので驚いたらしい。
が、その場に張り付いてさらに拳の連撃。
俺はさらにそれを避けていく。もちろん口に出して数えることも忘れていない。
連撃を避ける。
掴みかかろうとするのを距離を置いてかわす。
ランドが詰めてきて、さらに連撃。
避ける。避ける。避ける。避ける。
「これで五十発だ。あと半分、打ち込んでこい」
「なんだこいつ、全然当たらねえ!?」
ランドの額に汗が浮かんでいた。
さすがCランク、冒険者の中でも中堅といったところか。拳は鋭く、重みがあった。しかし当たらなければ意味はない。
空振りを連発したことで、ランドの体力もかなり減っているようだった。
「……やるじゃねえかオッサン。じゃあ、これなら」
ランドは、身をかがめて、
「どうだよ!」
胸に隠していた何かをこちらに投じる。
ナイフだ。
たまりかねて、ナイフを投擲したらしい。
足を狙っている。動きを奪うつもりか。
「…………」
俺はそれを最小限の動きでかわす。
「何っ!? これも避けただと!?」
「五十一……と言いたいところだがナイフはルール違反だろう」
俺が注意すると、男は殺気のこもった目で笑った。
「へっ、ルール変更だ。先に殺した方が勝ちにしよう」
「死んだらお互いの約束は果たせないだろう」
「うるせえ!」
聞く耳持たないか。
「誰か、俺の剣を持ってこい!」
「いいルールだな。貴様の剣とは、ここに置いてあるこれか?」
言って、満面の笑みでロングソードを両手に抱えて持ってきたのは、魔王だった。
「存分にやるがいいぞ」
「え? あ、ああ、そのつもりだが」
ランドがキョトンとして剣を受け取った。
俺は呆れながら魔王を見た。
「おい。なぜお前もそっちの味方をしている」
「トントンよ、我は貴様の敵だ。ここで負けてもらわねば困る」
魔王は意地の悪い顔で笑った。俺はため息をついた。
「……ああ、そうだったな」
剣を抜いて、ジリジリと間合いを詰めてくる男。
「娘にも見捨てられたか! よほどお前と離れたいらしいぜ!」
「だろうな。気持ちはよくわかる」
「悔しかったら精霊剣で反撃してきなよオッサン! できるんならな!」
「先に殺した方が勝ちと言ったな。それは俺も攻撃していいということでいいんだな?」
「やれるもんならやってみな! 丸腰で何するか知らねえがな!」
ランドが剣を振りかぶる。
俺は剣を振り下ろすタイミングで懐に入り、剣を持つ方の手首をつかんでひねり上げる。
「ぐあっ!?」
関節を極めながら剣を奪い、首にロングソードの刃を突きつける。
「続けるか?」
あえて殺気を浴びせながら問う。これ以上続けると首を飛ばす、という意思表示だ。
「ま、参った!」
ランドが負けを認めると、魔王は残念そうにため息を吐いた。
「まったく役に立たんな、このドチンピラ」
聞こえてるぞ。
「くっ」
悔しそうにランドは歯噛みする。
「酒を飲んで気持ちよくなっているところに突然俺が頼みにきたものだから面食らっただろう。すまなかったな」
俺は諭すように言った。
「魔獣と戦うということはこの上なく危険なことだ。オッサンになってからやるものじゃない。きみは身の程知らずな俺のために、強い言葉で牽制してでもEランクへ無理に上がるのを止めようとしてくれた」
俺は剣をランドに返しながら続ける。
「忠告してくれてありがとう。でもこの通り、俺は大丈夫だ。よければ推薦状を書いてもらえないだろうか?」
たぶん酒に酔って凶暴になってただけだろうが、こう言ったほうが推薦状書いてくれそうだからな。
剣を受け取りながら、ランドは舌打ちする。
「くそっ、わかったよ。書きゃいいんだろ、書きゃ!」
不良がナイフ片手に「殺す」と脅しているようなものだ。本当に人を殺す覚悟を持っているとも思えなかった。
俺のいた時代はもっとひどかった。本物のならず者なら、最初から殺してすべて奪う気で来ている。
この程度で冒険者としてやっていけるのか……と思わないでもないが、まあ推薦状書いてくれるならよしとしよう。
42
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる