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18 魔王、魔力が少し回復する
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魔王はぷんすかしながら町を歩いている。
また今日も二束三文にしかならない薬草の採集か……と、魔王は不満げであった。
「ぐぬぬ……なぜあやつがEランクで我はFランクなのだ。我だって大人ぞ」
しかも宿敵に草刈り鎌さえ買ってもらってしまった。おそらくプライドを傷つけるための攻撃である。精神的にはけっこう効いた。
「ま、我は我なりに動くしかあるまいな。やつも魔力を取り返すため動いているのに相違ない。精霊剣を使えぬ様子なのは、ひとまず僥倖だ」
魔王は、しかしすぐに森へは行かず、町の様子を見ていた。
薬草を採りに行く前に、人間たちの様子を観察しようという考えだ。
人間たちの会話している様子を見ていくうち、最初はわけがわからなかった言語も理解できてきた。
「まだわからない単語はあるにせよ、言語はほぼ学習できた。さすが我である」
魔王は万能だった。冒険者トントンこと剣士ディールが思うよりずっと、魔王は優秀であった。
「ふん、まあ、今日の学習はこれくらいにしておいてやる。あまり時間をかけると薬草を取る時間がなくなってしまう」
草刈り鎌を手に、魔王は森へと向かう。
……と、町を出たところで、
「お嬢ちゃん、一人?」
声をかけられる。
「?」
四十代くらいの知らない男だった。
意味はわかる。自身の言語学習の成果に、魔王は手応えを感じる。
「うむ、そうだが? 今から薬草取りに出かけるところだ」
魔王は答えた。しっかり意味は通じているはずだ。
「メシをわけてくれるならまだしも、そうでなければ邪魔をしないでもらおうか」
「あるある、あるよお」
男は魔王の行手を阻むようにしながら答えた。
「あるって、メシがか?」
「もちろん。お腹いっぱい食べさせてあげるよ」
「それはまことか!?」
なんと、気前のいい人間もいたものである。
「ただし、僕についてきてくれたらだけど」
「ついていかない理由などあるまい。案内せよ」
「ものわかりがいいよい子だねえ」
男は悪意ある笑みをたたえ、魔王を案内した。
町外れの森の中に、見たことのない料理が並んでいた。
横には幌のある馬車が停留している。
いや、雑草などを被せて、隠してあるといった方が正確か。
「うま! うまいな!」
テーブルに並んだ料理を魔王はうまそうに食している。
「いやあ、いい食いっぷりだね!」
「全部食べていいんだよ」
仲間と思われる男たちは、魔王を取り囲むように立っていた。
男たちは三人。彼らは人売り――いわゆる奴隷商人であった。
奴隷の売買は本来なら禁止されているが、闇市では密かに取引されている。そのため、仕入れでは、通常の人身売買の闇ルートのほかに、一人にしている子どもを狙って攫ってくるという方法をとる闇商人もいた。
男たちは料理に痺れ薬を盛っていた。大事な商品である。抵抗して怪我をされては困る。
そろそろ効いてくる頃だろうか。男たちは目配せをして、頷き合った。
魔王は料理を全て平らげた。満足である。
男たちは背後からジリジリと魔王に近づいてくる。
――が、しかし。
「薬物など効くと思ったか?」
振り向いた魔王は平気な顔で、男たちに告げた。
体の不調などどこにもなさそうだ。
「なっ!?」
「こっ、こいつ、薬が効いてないのか!?」
男たちは狼狽した。
「おおかた、動けなくなった我をそこの馬車に運び込んでどこぞに売り渡す腹だったのだろう?」
椅子に座る魔王は足を組み、テーブルにほおづえをついて、口元を吊り上げた。
「我は最強ゆえ、毒の類は効かんのだ」
男たちはもう一度目配せをして、頷き合った。
「ふざけやがって……」
「こうなったら、無理矢理にでも攫われてもらうぜ」
「おとなしくした方が身のためだぞ」
大人の男三人に、子ども一人が力で勝てるわけがない。彼らは、そう確信している。
「おとなしくしなかったらどうなる?」
まともな食事にありつけたことで、魔王の体にわずかながら魔力が戻ってきているのを感じた。
「少し痛い目を見ることになるぜ」
まだ、あの宿敵を倒すのには物足りなさすぎる。
だが。
「なるほど、ちょうど我も貴様らに痛い目を見てもらおうと思っていたところだ」
ただの人間をいたぶるには、十分すぎる魔力だ。
ならば、弱い者いじめでもしてやろうか。
魔王は内心ほくそ笑んで、立ち上がった。
また今日も二束三文にしかならない薬草の採集か……と、魔王は不満げであった。
「ぐぬぬ……なぜあやつがEランクで我はFランクなのだ。我だって大人ぞ」
しかも宿敵に草刈り鎌さえ買ってもらってしまった。おそらくプライドを傷つけるための攻撃である。精神的にはけっこう効いた。
「ま、我は我なりに動くしかあるまいな。やつも魔力を取り返すため動いているのに相違ない。精霊剣を使えぬ様子なのは、ひとまず僥倖だ」
魔王は、しかしすぐに森へは行かず、町の様子を見ていた。
薬草を採りに行く前に、人間たちの様子を観察しようという考えだ。
人間たちの会話している様子を見ていくうち、最初はわけがわからなかった言語も理解できてきた。
「まだわからない単語はあるにせよ、言語はほぼ学習できた。さすが我である」
魔王は万能だった。冒険者トントンこと剣士ディールが思うよりずっと、魔王は優秀であった。
「ふん、まあ、今日の学習はこれくらいにしておいてやる。あまり時間をかけると薬草を取る時間がなくなってしまう」
草刈り鎌を手に、魔王は森へと向かう。
……と、町を出たところで、
「お嬢ちゃん、一人?」
声をかけられる。
「?」
四十代くらいの知らない男だった。
意味はわかる。自身の言語学習の成果に、魔王は手応えを感じる。
「うむ、そうだが? 今から薬草取りに出かけるところだ」
魔王は答えた。しっかり意味は通じているはずだ。
「メシをわけてくれるならまだしも、そうでなければ邪魔をしないでもらおうか」
「あるある、あるよお」
男は魔王の行手を阻むようにしながら答えた。
「あるって、メシがか?」
「もちろん。お腹いっぱい食べさせてあげるよ」
「それはまことか!?」
なんと、気前のいい人間もいたものである。
「ただし、僕についてきてくれたらだけど」
「ついていかない理由などあるまい。案内せよ」
「ものわかりがいいよい子だねえ」
男は悪意ある笑みをたたえ、魔王を案内した。
町外れの森の中に、見たことのない料理が並んでいた。
横には幌のある馬車が停留している。
いや、雑草などを被せて、隠してあるといった方が正確か。
「うま! うまいな!」
テーブルに並んだ料理を魔王はうまそうに食している。
「いやあ、いい食いっぷりだね!」
「全部食べていいんだよ」
仲間と思われる男たちは、魔王を取り囲むように立っていた。
男たちは三人。彼らは人売り――いわゆる奴隷商人であった。
奴隷の売買は本来なら禁止されているが、闇市では密かに取引されている。そのため、仕入れでは、通常の人身売買の闇ルートのほかに、一人にしている子どもを狙って攫ってくるという方法をとる闇商人もいた。
男たちは料理に痺れ薬を盛っていた。大事な商品である。抵抗して怪我をされては困る。
そろそろ効いてくる頃だろうか。男たちは目配せをして、頷き合った。
魔王は料理を全て平らげた。満足である。
男たちは背後からジリジリと魔王に近づいてくる。
――が、しかし。
「薬物など効くと思ったか?」
振り向いた魔王は平気な顔で、男たちに告げた。
体の不調などどこにもなさそうだ。
「なっ!?」
「こっ、こいつ、薬が効いてないのか!?」
男たちは狼狽した。
「おおかた、動けなくなった我をそこの馬車に運び込んでどこぞに売り渡す腹だったのだろう?」
椅子に座る魔王は足を組み、テーブルにほおづえをついて、口元を吊り上げた。
「我は最強ゆえ、毒の類は効かんのだ」
男たちはもう一度目配せをして、頷き合った。
「ふざけやがって……」
「こうなったら、無理矢理にでも攫われてもらうぜ」
「おとなしくした方が身のためだぞ」
大人の男三人に、子ども一人が力で勝てるわけがない。彼らは、そう確信している。
「おとなしくしなかったらどうなる?」
まともな食事にありつけたことで、魔王の体にわずかながら魔力が戻ってきているのを感じた。
「少し痛い目を見ることになるぜ」
まだ、あの宿敵を倒すのには物足りなさすぎる。
だが。
「なるほど、ちょうど我も貴様らに痛い目を見てもらおうと思っていたところだ」
ただの人間をいたぶるには、十分すぎる魔力だ。
ならば、弱い者いじめでもしてやろうか。
魔王は内心ほくそ笑んで、立ち上がった。
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