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35 魔王、犯罪組織を制圧する
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その日、西部貧民街の片隅にあったファンコイル商会の本部から火の手が上がった。
恐喝や法外の金貸しをおもな稼ぎとする犯罪組織・ファンコイル商会――その現場にいた構成員三十名あまりを相手に立ち向かおうとしていたのは、年端もいかない少女と、細身の剣を二振り構えた二十代の女、そして後ろに控えた二人の女。
魔王と、その部下である奴隷の女達。たった四人による強襲であった。
「ウルカ様、後ろの二人は戦闘が苦手です。ですので、私が二人の分まで戦わせていただきます」
双剣を構えた女奴隷フェネンが魔王に言った。
魔王はうなずいた。
「うむ。戦闘経験者がいて心強い」
「おたわむれを。ウルカ様一人でも十分とお見受けしますが――お背中くらいはお守りさせてください」
「頼りにしているぞ」
「はっ!」
ウルカの後ろからかかろうとしていた構成員の男二人をフェネンが切り伏せる。
「後ろはいいから、行く手を切り開け。目指すは親玉だ」
広い玄関で、三十人あまりの構成員を見据えて、魔王はフェネンに告げる。
「――おおせのままに」
うなずいたフェネンは、瞬く間に魔王の進路を切り開いてゆく。
「そういえば冒険者登録をしたのだろうフェネンよ。初期ランクはいくつだった?」
「Aです」
「すごいな。初期の登録でAランク判定が出るとは」
「昔、王国騎士団の副団長をしておりました」
さらに二人の男を切り捨てるフェネン。
「そんなに重要なポストなら、なぜあの時、自由にした時に我のもとを去らなかった?」
「私の祖国は、もうありません。海を隔てた先にありましたが、戦で全て灰になりました。私には、帰るべき場所もなく、待っていてくれる人もおりません」
「それはつらいな」
「ですが、一生をかけて仕えるべき主君に巡り会うことができました。ウルカ様、あなたに」
フェネンが一人でやっているので、魔王はやることがない。たまに《障壁》を作って、後ろの二人を守るくらいである。
堂々と、手間なく、彼女が切り開いてくれた進路をたどる。
「ですから、剣士トントンを殺せとお命じになるなら、そのようにします」
「奴相手ではさすがに分が悪かろう。それに、奴との決着は、我が自らつけねばならん。理屈ではなく、そうしなければいけないのだと我の心が言っている。まあ、もし助けてほしいときがあれば、都度言おう」
「かしこまりました。では、今はただ、あなたのお役に立たせていただきます!」
フェネンは二階の最後の部屋を力尽くで蹴り破る。
「うーむ、これはいい拾いものをした」
魔王はしみじみつぶやいて、尻もちをつく目の前の男を見やった。
「ひっ!」
昼間見た眼鏡の男である。この男がファンコイル商会を仕切っているらしい。
「これはこれは。小物っぽいと思ったら組織のトップだったか」
「て、てめえ、昼間の、あの孤児院にいたガキか……? ど、どうして」
フェネンが剣の切っ先を突きつけている。震える声で、眼鏡の男は尋ねた。
「難癖つけて弱者から端金をむしり取るのが貴様らのしのぎだそうだな。……奇遇だが、我もそうなのだ。貴様らのような弱い者たちをむごたらしくひねり潰すのが大好きでな」
「皮肉のつもりか。どこの組織のものだ?」
問われて、魔王はふと笑った。
そうか。そうだな、もう組織だった。
「魔王軍」
魔王は、すぐに答えた。
そして魔法陣から漆黒の炎を顕現させ、
「貴様に問おう。消えぬ炎に巻かれて苦しみの果てに焼け死ぬか? それとも我の手足となって我に尽くすか?」
「…………!」
眼鏡の男に選択を迫った。
恐喝や法外の金貸しをおもな稼ぎとする犯罪組織・ファンコイル商会――その現場にいた構成員三十名あまりを相手に立ち向かおうとしていたのは、年端もいかない少女と、細身の剣を二振り構えた二十代の女、そして後ろに控えた二人の女。
魔王と、その部下である奴隷の女達。たった四人による強襲であった。
「ウルカ様、後ろの二人は戦闘が苦手です。ですので、私が二人の分まで戦わせていただきます」
双剣を構えた女奴隷フェネンが魔王に言った。
魔王はうなずいた。
「うむ。戦闘経験者がいて心強い」
「おたわむれを。ウルカ様一人でも十分とお見受けしますが――お背中くらいはお守りさせてください」
「頼りにしているぞ」
「はっ!」
ウルカの後ろからかかろうとしていた構成員の男二人をフェネンが切り伏せる。
「後ろはいいから、行く手を切り開け。目指すは親玉だ」
広い玄関で、三十人あまりの構成員を見据えて、魔王はフェネンに告げる。
「――おおせのままに」
うなずいたフェネンは、瞬く間に魔王の進路を切り開いてゆく。
「そういえば冒険者登録をしたのだろうフェネンよ。初期ランクはいくつだった?」
「Aです」
「すごいな。初期の登録でAランク判定が出るとは」
「昔、王国騎士団の副団長をしておりました」
さらに二人の男を切り捨てるフェネン。
「そんなに重要なポストなら、なぜあの時、自由にした時に我のもとを去らなかった?」
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「それはつらいな」
「ですが、一生をかけて仕えるべき主君に巡り会うことができました。ウルカ様、あなたに」
フェネンが一人でやっているので、魔王はやることがない。たまに《障壁》を作って、後ろの二人を守るくらいである。
堂々と、手間なく、彼女が切り開いてくれた進路をたどる。
「ですから、剣士トントンを殺せとお命じになるなら、そのようにします」
「奴相手ではさすがに分が悪かろう。それに、奴との決着は、我が自らつけねばならん。理屈ではなく、そうしなければいけないのだと我の心が言っている。まあ、もし助けてほしいときがあれば、都度言おう」
「かしこまりました。では、今はただ、あなたのお役に立たせていただきます!」
フェネンは二階の最後の部屋を力尽くで蹴り破る。
「うーむ、これはいい拾いものをした」
魔王はしみじみつぶやいて、尻もちをつく目の前の男を見やった。
「ひっ!」
昼間見た眼鏡の男である。この男がファンコイル商会を仕切っているらしい。
「これはこれは。小物っぽいと思ったら組織のトップだったか」
「て、てめえ、昼間の、あの孤児院にいたガキか……? ど、どうして」
フェネンが剣の切っ先を突きつけている。震える声で、眼鏡の男は尋ねた。
「難癖つけて弱者から端金をむしり取るのが貴様らのしのぎだそうだな。……奇遇だが、我もそうなのだ。貴様らのような弱い者たちをむごたらしくひねり潰すのが大好きでな」
「皮肉のつもりか。どこの組織のものだ?」
問われて、魔王はふと笑った。
そうか。そうだな、もう組織だった。
「魔王軍」
魔王は、すぐに答えた。
そして魔法陣から漆黒の炎を顕現させ、
「貴様に問おう。消えぬ炎に巻かれて苦しみの果てに焼け死ぬか? それとも我の手足となって我に尽くすか?」
「…………!」
眼鏡の男に選択を迫った。
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