51 / 106
51 チンピラに絡まれる
しおりを挟む
店内を出て、店の前で、チンピラたちに囲まれる。
どうやらこいつらは全員、ジョー・グレモン盗賊団とかいうところのメンバーらしい。
野次馬も集まってくる。
「そういうことか。考えたな」
俺はチンピラたちにわざとらしく頷きながら言った。
「つまりこういうことだろう? 大勢の組織で参加すれば、予選のバトルロイヤルは勝ち抜きやすくなる。同グループになったときに、組織同士で協調できるからだ」
俺がいうと、チンピラたちは口元を釣り上げる。
「しかしそれが通じるのも予選のみ。その後はどうするんだ? それでどうやって《剣帝》を倒す? 本選や決勝じゃ、力を合わせて強者を倒すことはできんぞ。やはり意味のない結束なのではないか? 貴様らがやっているのは、ただ協力してみんなで一定水準になりましょうとやっているだけで、一定以上の水準になろうとはしていない。一切の研鑽を諦めた弱者の、仲良しこよしの自己満足にすぎん」
「てめえ、やっぱり今ここでぶっ殺す!」
チンピラの一人が殴りかかって来るのを避け、避けざま、あごに拳をぶつける。
一人倒れたのを皮切りに、チンピラたちは一斉にかかってくる。
俺はそれをかわしながら、足を引っ掛け、殴り飛ばし、投げ飛ばす。
――と、すぐ横で、チンピラが誰かに殴られて吹っ飛ばされてきた。
「おっさん、多勢に無勢じゃ分が悪いだろ?」
そこには、金髪で、耳にピアスを開けた若者がいた。
「ここは助けさせてくれねえか!?」
言いながらチンピラをさらに殴り飛ばす。
「助太刀は無用だ」
背中合わせに、俺は答える。
「そうかよ? じゃあ準備運動代わりに勝手に参加させてもらうぜ」
「それはいささか気の毒だ。これでは準備運動にもならん。ただの時間の浪費だぞ」
「へっ、言うねえ! なら二人で片付ければ時短にならあ!」
金髪の若者と俺は、かかってくるチンピラを次々に殴り飛ばす。
相手が剣を抜いてもおかまいなしだ。
やがて相手の戦意が喪失して来ると、
「て、てめえは、まさか!?」
何かに気づいたらしいチンピラの一人が、若者を指差して震えた。
「俺様の名を知っているか。どうやらそれほどまでに名を馳せてきているようだなあ」
金髪の若者は笑う。
「せ、せ、《精霊剣使い》フューエル・ノックス!」
「ご名答。まったく、強くなりすぎると目立っちまって困るぜ。まあ、満更でもねえんだけど」
相当な手だれだと思ったが、精霊剣使いだったのか。
「で、俺様の名を知ってまだかかって来るやつはいるかよ? だったら――」
金髪の若者――フューエルは、魔法陣を展開し、そこから一振りの剣を召喚する。
「この精霊剣で相手になるぜ」
黒い剣だった。柄も刃も、すべて漆黒。それを手にした途端、フューエルの髪と瞳が、同じような黒に染まっていく。
「逃げろ! 一旦引くぞ!」「ひ、ひえええ!」
精霊剣を見た途端、チンピラたちは逃げ出していく。
「ふん、他愛ねえ。……ん?」
フューエルが呟く。
チンピラが逃げた先に、茶色い短髪の大男がいた。左の瞳に大きい傷跡がついている。
大男は、長く細い剣の鞘で、チンピラたちを一瞬で叩き伏せる。
「甘いぞ。こういった輩はちゃんと憲兵に突き出さんと」
言いながら、短髪の大男は俺たちに近づいてきた。
「知らねえのか、でけえにいちゃんよ。トーナメント期間中は町でケンカがあっても憲兵は見て見ぬ振りしてんだよ。多すぎて対処しきれなくてな」
「何? それは知らなんだ。なにせ初参加なものでな」
短髪の大男は腰にもう一振り、ナイフのような短い短剣を差していた。短剣と長剣の二刀流だろうか。
「あれ、まさかSランク冒険者のゼビカ・フラムバーナ!? あの伝説の冒険者ゼビカもトーナメントに参加するのか!?」
野次馬の一人が叫んだ。
「……へえ、あんたがあのゼビカか。噂は聞いてるぜ。なんでも、ドラゴンの軍勢を押し返した《竜殺し》の一人だとか。マジな話?」
「……有名になりすぎると、目立って困るな」
こいつらも、トーナメント参加者か。
俺は一歩進み出て、二人に頭を下げた。
「このたびは助かった。ありがとう」
「いや、余計な茶々入れちまった。俺様が暴れたかっただけなんだ。へへっ、邪魔したな、おっさん」
フューエルは悪気もなく笑う。
二人とも強い。一目でわかった。
「同じく、野暮だったようだ。……では本選で」
短髪の大男……ゼビカは短く言って、早々に踵を返した。
「楽しみにしてるぜ。殺しちまっても恨むなよ?」
すでに自分たちが本選へ進むことを確信しているらしい。
俺たちが別れるのを確認してから、倒れていたチンピラたちはコソコソと起き上がり散っていった。
「おい、メシ食い終わったぞ。金払って来い」
出てきた魔王にゲンコツをくれてから、俺は考える。
「さて……まずは予選を突破せねばな」
ランドみたいなのがいっぱいだったら楽だったのだが、思いのほか猛者は多そうだ。
そして俺は、最初から実力をひけらかすつもりはない。相手に情報をほとんど与えず、決勝まで勝ち残る。知られていないのは、強みだ。
「ふふっ、楽しくなってきたなあウルカよ」
「我はつまらんぞトントン。甘いものを奢れ」
「…………」
「無視か? うんとかすんとか言ったらどうだ」
であれば、おじさんらしく、いろいろと小賢しい手を練っておこうか。
どうやらこいつらは全員、ジョー・グレモン盗賊団とかいうところのメンバーらしい。
野次馬も集まってくる。
「そういうことか。考えたな」
俺はチンピラたちにわざとらしく頷きながら言った。
「つまりこういうことだろう? 大勢の組織で参加すれば、予選のバトルロイヤルは勝ち抜きやすくなる。同グループになったときに、組織同士で協調できるからだ」
俺がいうと、チンピラたちは口元を釣り上げる。
「しかしそれが通じるのも予選のみ。その後はどうするんだ? それでどうやって《剣帝》を倒す? 本選や決勝じゃ、力を合わせて強者を倒すことはできんぞ。やはり意味のない結束なのではないか? 貴様らがやっているのは、ただ協力してみんなで一定水準になりましょうとやっているだけで、一定以上の水準になろうとはしていない。一切の研鑽を諦めた弱者の、仲良しこよしの自己満足にすぎん」
「てめえ、やっぱり今ここでぶっ殺す!」
チンピラの一人が殴りかかって来るのを避け、避けざま、あごに拳をぶつける。
一人倒れたのを皮切りに、チンピラたちは一斉にかかってくる。
俺はそれをかわしながら、足を引っ掛け、殴り飛ばし、投げ飛ばす。
――と、すぐ横で、チンピラが誰かに殴られて吹っ飛ばされてきた。
「おっさん、多勢に無勢じゃ分が悪いだろ?」
そこには、金髪で、耳にピアスを開けた若者がいた。
「ここは助けさせてくれねえか!?」
言いながらチンピラをさらに殴り飛ばす。
「助太刀は無用だ」
背中合わせに、俺は答える。
「そうかよ? じゃあ準備運動代わりに勝手に参加させてもらうぜ」
「それはいささか気の毒だ。これでは準備運動にもならん。ただの時間の浪費だぞ」
「へっ、言うねえ! なら二人で片付ければ時短にならあ!」
金髪の若者と俺は、かかってくるチンピラを次々に殴り飛ばす。
相手が剣を抜いてもおかまいなしだ。
やがて相手の戦意が喪失して来ると、
「て、てめえは、まさか!?」
何かに気づいたらしいチンピラの一人が、若者を指差して震えた。
「俺様の名を知っているか。どうやらそれほどまでに名を馳せてきているようだなあ」
金髪の若者は笑う。
「せ、せ、《精霊剣使い》フューエル・ノックス!」
「ご名答。まったく、強くなりすぎると目立っちまって困るぜ。まあ、満更でもねえんだけど」
相当な手だれだと思ったが、精霊剣使いだったのか。
「で、俺様の名を知ってまだかかって来るやつはいるかよ? だったら――」
金髪の若者――フューエルは、魔法陣を展開し、そこから一振りの剣を召喚する。
「この精霊剣で相手になるぜ」
黒い剣だった。柄も刃も、すべて漆黒。それを手にした途端、フューエルの髪と瞳が、同じような黒に染まっていく。
「逃げろ! 一旦引くぞ!」「ひ、ひえええ!」
精霊剣を見た途端、チンピラたちは逃げ出していく。
「ふん、他愛ねえ。……ん?」
フューエルが呟く。
チンピラが逃げた先に、茶色い短髪の大男がいた。左の瞳に大きい傷跡がついている。
大男は、長く細い剣の鞘で、チンピラたちを一瞬で叩き伏せる。
「甘いぞ。こういった輩はちゃんと憲兵に突き出さんと」
言いながら、短髪の大男は俺たちに近づいてきた。
「知らねえのか、でけえにいちゃんよ。トーナメント期間中は町でケンカがあっても憲兵は見て見ぬ振りしてんだよ。多すぎて対処しきれなくてな」
「何? それは知らなんだ。なにせ初参加なものでな」
短髪の大男は腰にもう一振り、ナイフのような短い短剣を差していた。短剣と長剣の二刀流だろうか。
「あれ、まさかSランク冒険者のゼビカ・フラムバーナ!? あの伝説の冒険者ゼビカもトーナメントに参加するのか!?」
野次馬の一人が叫んだ。
「……へえ、あんたがあのゼビカか。噂は聞いてるぜ。なんでも、ドラゴンの軍勢を押し返した《竜殺し》の一人だとか。マジな話?」
「……有名になりすぎると、目立って困るな」
こいつらも、トーナメント参加者か。
俺は一歩進み出て、二人に頭を下げた。
「このたびは助かった。ありがとう」
「いや、余計な茶々入れちまった。俺様が暴れたかっただけなんだ。へへっ、邪魔したな、おっさん」
フューエルは悪気もなく笑う。
二人とも強い。一目でわかった。
「同じく、野暮だったようだ。……では本選で」
短髪の大男……ゼビカは短く言って、早々に踵を返した。
「楽しみにしてるぜ。殺しちまっても恨むなよ?」
すでに自分たちが本選へ進むことを確信しているらしい。
俺たちが別れるのを確認してから、倒れていたチンピラたちはコソコソと起き上がり散っていった。
「おい、メシ食い終わったぞ。金払って来い」
出てきた魔王にゲンコツをくれてから、俺は考える。
「さて……まずは予選を突破せねばな」
ランドみたいなのがいっぱいだったら楽だったのだが、思いのほか猛者は多そうだ。
そして俺は、最初から実力をひけらかすつもりはない。相手に情報をほとんど与えず、決勝まで勝ち残る。知られていないのは、強みだ。
「ふふっ、楽しくなってきたなあウルカよ」
「我はつまらんぞトントン。甘いものを奢れ」
「…………」
「無視か? うんとかすんとか言ったらどうだ」
であれば、おじさんらしく、いろいろと小賢しい手を練っておこうか。
36
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる