63 / 106
63 ライジングを探す
しおりを挟む
ライジングを探しながら、
「――この精霊、本物のようで安心した」
俺は主催者のバームに言った。
「そりゃあそうだろう。こんななりだが、霊域持ちの精霊だぞ。力が開放されれば暴風を吹かせる巨大な狼に変化するのだ」
バームは偉そうに解説してくれる。
こいつは、おそらくエアリアルが無理やりここに連れてこられたのを知っているのだろう。
その上で賞品としている。
「よくわかった」
俺は言うと、その場から離れた。
会場を見ると、警備につまみ出されている魔王の姿を見た。
こっそり少しずつおかずを盗んでいけばいいものを堂々と大量に盗むからそうなるのである。放置。
改めて会場を見渡す。
正装しているすらっとした髪の長い青年が、グラスを片手に老人と談笑していた。
《暁の魔法使い》ライジング。
それに、話している老人は《剣客》レインシードだ。
二人とも決勝トーナメント進出者である。
ちょうどタイミングがいい。グラスをもらうと、俺も二人の中に入っていく。
「談笑のところ水を差してすまんが、俺も加わってもいいだろうか?」
「ええ、どうぞ。トントンさん……ですね?」
ライジングは爽やかな笑顔でうなずく。
「ああ。そちらは、ライジング殿とレインシード殿でよろしいか?」
二人はうなずいた。
「いや、このたびは稼がせてもらった。ありがとさん」
老剣士レインシードは気分良さそうに俺の背中を叩いた。
「俺に賭けたのか」
「無論。あんたの実力を見抜いたごく少数の者は皆大儲けしたことだろうよ」
「そういえばフューエルにも同じようなことを言われた」
「目標額にまた一歩近づいたよ」
レインシードは上機嫌である。
「レインシードさんはお孫さんがご病気で、治療のためのお金を稼ぐためにこの大会に出たそうですよ」
ライジングは言った。
「ほう、それは立派だな」
「もう隠居の身だったんだが、一肌脱がざるを得なくなった。一億あればなんとかなるからよ、ちょうどよかったのさ。ついでに《剣帝》の称号もいただいていくがな」
レインシードは笑いながら、強そうな酒をあおる。
「俺は精霊が目的なのだ。今回、精霊目当ての者は存外多いらしいな」
レインシードに言ってから、ライジングを見た。
「そうみたいですね」
ライジングはにこやかに答える。
好青年、といった風である。
「しかしあの精霊、本物だと思うか? なにやら可愛らしい子犬のようだが」
俺は試しに質問してみる。ライジングは少し考えた風で答えた。
「本物のような気がしますね」
「どうしてそう思う?」
「そうでないと賞品にはしないでしょう? 優勝した者が確認をするわけですし、偽物ならこの大会の名誉に傷がついてしまう」
「しかし本物なら捕まえられるかな? かの伝説にあるゼノンが契約した霊域持ちの精霊なのだろう?」
「相当骨が折れそうですよね」
「集団でどうにかしたと思うが、どういった作戦で捕まえたのだろう?」
「僕に聞かれても困りますが、何かしらの魔法でないと無理でしょうね」
「そうか? 知っていると思ったんだが」
「……どういう意味です?」
やや攻めてみたが、飄々としている。動揺している様子はなく、表情も変わらない。
……こんな場では何も引き出せはしないか。
「いや、すまん、最近の魔法に疎くてな。そういう魔法があるのかと思っていたが」
「さあ? 僕は知りませんが。実力でねじ伏せたのでは?」
そうこうしているうちに、
「では、これより決勝トーナメントの選出をさせていただきます!」
主催者のバームがパーティーにいる者に伝えた。
今決めるらしい。
決勝トーナメントの対戦表は主催者がくじ引きをして選出し、この場で明日戦う者が決まる。
「では、第一試合の組み合わせは――」
バームがくじ引きを行い、対戦表に記入していく。俺も含め、会場にいるものは全員その選出に注目した。
「――この精霊、本物のようで安心した」
俺は主催者のバームに言った。
「そりゃあそうだろう。こんななりだが、霊域持ちの精霊だぞ。力が開放されれば暴風を吹かせる巨大な狼に変化するのだ」
バームは偉そうに解説してくれる。
こいつは、おそらくエアリアルが無理やりここに連れてこられたのを知っているのだろう。
その上で賞品としている。
「よくわかった」
俺は言うと、その場から離れた。
会場を見ると、警備につまみ出されている魔王の姿を見た。
こっそり少しずつおかずを盗んでいけばいいものを堂々と大量に盗むからそうなるのである。放置。
改めて会場を見渡す。
正装しているすらっとした髪の長い青年が、グラスを片手に老人と談笑していた。
《暁の魔法使い》ライジング。
それに、話している老人は《剣客》レインシードだ。
二人とも決勝トーナメント進出者である。
ちょうどタイミングがいい。グラスをもらうと、俺も二人の中に入っていく。
「談笑のところ水を差してすまんが、俺も加わってもいいだろうか?」
「ええ、どうぞ。トントンさん……ですね?」
ライジングは爽やかな笑顔でうなずく。
「ああ。そちらは、ライジング殿とレインシード殿でよろしいか?」
二人はうなずいた。
「いや、このたびは稼がせてもらった。ありがとさん」
老剣士レインシードは気分良さそうに俺の背中を叩いた。
「俺に賭けたのか」
「無論。あんたの実力を見抜いたごく少数の者は皆大儲けしたことだろうよ」
「そういえばフューエルにも同じようなことを言われた」
「目標額にまた一歩近づいたよ」
レインシードは上機嫌である。
「レインシードさんはお孫さんがご病気で、治療のためのお金を稼ぐためにこの大会に出たそうですよ」
ライジングは言った。
「ほう、それは立派だな」
「もう隠居の身だったんだが、一肌脱がざるを得なくなった。一億あればなんとかなるからよ、ちょうどよかったのさ。ついでに《剣帝》の称号もいただいていくがな」
レインシードは笑いながら、強そうな酒をあおる。
「俺は精霊が目的なのだ。今回、精霊目当ての者は存外多いらしいな」
レインシードに言ってから、ライジングを見た。
「そうみたいですね」
ライジングはにこやかに答える。
好青年、といった風である。
「しかしあの精霊、本物だと思うか? なにやら可愛らしい子犬のようだが」
俺は試しに質問してみる。ライジングは少し考えた風で答えた。
「本物のような気がしますね」
「どうしてそう思う?」
「そうでないと賞品にはしないでしょう? 優勝した者が確認をするわけですし、偽物ならこの大会の名誉に傷がついてしまう」
「しかし本物なら捕まえられるかな? かの伝説にあるゼノンが契約した霊域持ちの精霊なのだろう?」
「相当骨が折れそうですよね」
「集団でどうにかしたと思うが、どういった作戦で捕まえたのだろう?」
「僕に聞かれても困りますが、何かしらの魔法でないと無理でしょうね」
「そうか? 知っていると思ったんだが」
「……どういう意味です?」
やや攻めてみたが、飄々としている。動揺している様子はなく、表情も変わらない。
……こんな場では何も引き出せはしないか。
「いや、すまん、最近の魔法に疎くてな。そういう魔法があるのかと思っていたが」
「さあ? 僕は知りませんが。実力でねじ伏せたのでは?」
そうこうしているうちに、
「では、これより決勝トーナメントの選出をさせていただきます!」
主催者のバームがパーティーにいる者に伝えた。
今決めるらしい。
決勝トーナメントの対戦表は主催者がくじ引きをして選出し、この場で明日戦う者が決まる。
「では、第一試合の組み合わせは――」
バームがくじ引きを行い、対戦表に記入していく。俺も含め、会場にいるものは全員その選出に注目した。
46
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる